法政基礎演習 II

最終更新日:2017年8月21日

授業科目名
法政基礎演習 II
標準年次
2
講義題目
「喧嘩両成敗」を考える
開講学期
前 期
担当教員
河野(恵) 恵一
単位数
2単位
教  室
304
科目区分
入門科目
履修条件
特にありません。
授業の目的
◆前近代社会における法や裁判について学ぶことを通じて、現在の社会的諸制度を相対化して捉える見方を身につけ、人間社会における法の役割について考えるためのきっかけを提供すること。
◆本格的な学術論文を丁寧に読み込んで報告を行い、その内容について討論する、という作業を通じて、学術的にものごとを分析し、考えること、また、その結果自分がわかったこと(あるいはわからないこと)を他人に伝える能力を身につけること。
授業の概要・計画
◆授業の概要について

現在の法や政治のしくみ、あるいはその問題点について考えていく上で、それらをやや「引いた」視点から眺め、その歴史的・社会的な位置づけを行うことは大変重要です。我が国の法制度について言えば、明治以降、それまでと全く異なった法体系(西洋法体系とその考え方)を全面的に継受したという事情から、前近代社会からの伝統的法観念と現在の法体系との間でのズレが重要な論点のひとつとなってきました。

この問題について論じられる際にしばしば引き合いに出されるのが「喧嘩両成敗」という考え方です。前近代社会において成立したこの考え方は、現在に至るまで人々の心に深く根ざしているという事実がある一方で、しばしば不条理なものとして批判の対象にされてきました。しかし、現代から見て不可解・不条理であっても、当時そのような考え方が成立し定着した背景には、なんらかの理由なり根拠なりがあったはずです。一見不条理な「喧嘩両成敗」の考え方がどのような歴史的背景のもとで成立し、どのようにして現在に至るまで生き続けているのか。先学の成果に学びつつこの問題を考えていくことを通じて、今現在われわれが生きている世の中のしくみを「あたりまえ」のものとみなさない視点を養い、そもそも人間社会において法や裁判が担う役割について理解を深めていただきたいと考えています。

◆授業計画について

第1回目は参加者の自己紹介と本演習についての説明、および報告分担の決定等を行います。第2回目は、本演習で読んでいく文献の研究史上の位置づけや文献の調べ方、報告のしかたなどについて私のほうから簡単な講義を行います。第3回目以降は、担当者による報告とそれに基づく討論によってテーマに対する理解を深めていただきます。そして、最終回には、演習全体の総括をします。また、「夏休みの宿題」として、5,000字程度のレポートを提出していただくことを考えています。
授業の進め方
基本的には、指定したテキスト(論文)について担当者に報告していただき、それをもとに全員で討論していく、というかたちをとります。

論文1本につき2〜3回にわけてじっくりと読み込んでいきます。各報告者は担当部分を熟読して論理の流れを丁寧に追い、わからない点については可能な限り調べた上で、1回あたり30分程度の報告をしてもらいます。それをもとに、報告で理解できなかった点、疑問を持った点、考えたことなどを全員で討論していきます。討論を有意義なものにするために、報告者以外の方も事前にある程度予習をしてくることが前提になります。

教科書・参考書等
実際に読む文献としては、さしあたり以下のようなものを考えています。

・三浦周行「喧嘩両成敗法」(同著『法制史之研究』岩波書店、1919所収)

・石井紫郎「中世の法と国制に関する覚書─喧嘩両成敗法を手がかりとして─」(同著『日本国制史研究? 日本人の国家生活』東京大学出版会、1986所収)

・新田一郎「コラム『喧嘩両成敗法』」(水林彪・大津透・新田一郎・大藤修編『新体系日本史2 法社会史』山川出版社、2001所収)



必要な文献はコピーしてその都度配布しますので、購入の必要はありません。また、参考文献については適宜提示します。
成績評価の方法・基準
出席状況・報告の内容・討論への参加の程度・レポートの内容等をもとに総合的に判断します。
その他(質問・相談方法等)
質問等があれば、092-642-3230(法学部第13研究室)まで電話していただくか、e-mail(keiichi@law.kyushu-u.ac.jp)にてお願いします。もちろん研究室へ直接お越しいただいてもかまいません。
過去の授業評価アンケート