法政基礎演習 II

最終更新日:2017年8月21日

授業科目名
法政基礎演習 II
標準年次
2
講義題目
あなたの氏名や肖像を守る法の役割――人格と法
開講学期
前 期
担当教員
安東 奈穂子
単位数
2単位
教  室
305
科目区分
入門科目
履修条件
履修条件は特にありません。
日頃から、自分の名前(氏名)、顔(肖像)、名誉、プライバシーといったいわゆる自らの人格が、他人の冒用や侵害の危険から「きちんと守られているのだろうか?」と不安な人、「どうやって守っていけば良いのだろうか?」と関心のある人、大歓迎です。
授業の目的
氏名や肖像といった人格の抱える法的な問題は、情報化やグローバル化が急速なテンポで進展している現代社会において、決して避けて通ることのできない重要なものとなっています。さらに、皆さんが将来どのような道に進もうとも、常に身近な問題であり続けるでしょう。この授業は、その重要かつ身近な問題に以下の3点を目的としながら取り組んでいきます。日々の勉強や生活を、知的好奇心に満ちた豊かなものにするために大切な、視点、発想及び考え方を学ぶ場となるでしょう。
@「人格(私)、社会、法」これら三つの関係の、今(まで)とこれからを考えます。法の役割を、人格や社会との関わりあいのなかで考えることで、相対的なものの見方を学びます。
A人格には様々な法的な側面(例:人格価値と経済価値、生者と死者、有名人と一般人)があることを学びます。ある客体の法的保護を論ずる場合、その客体には多様な側面があることを知り、国際的視点も含め、多角的な視点及び発想を持つ力をつけます。
B発言に際して、「……だと考えます。なぜなら、……だからです。」というように、理由づけまで述べることができるようにします。他人の意見に対し、賛成または反対、疑問点や矛盾点を述べる場合も同様です。そして、活発な議論をつうじて、自らの発言に責任と自信を持つとともに、相手の意見を尊重できるようにします。
授業の概要・計画
授業は、おおよそ次の三つのステージから構成されます。
第一ステージ――「人格と社会との関わりあい」の現状
このステージでは、現代社会における人格に関わる問題を身近なものとして捉え、(権利)意識を持つことや法の関与の必要性を実感することを目指します。
1.現在、「人格と社会との関わりあい」のなかでどのような問題が起こっているのかを考えます。具体的には、新聞、雑誌、インターネット等から得られる情報(裁判例でも勿論結構です)やご自身の体験のなかで、疑問に感じたり関心を持ったりした事柄(例:個人情報の流用、容疑者の実名報道、Web上で見かけるアイコラ、「勝手に写真を撮られた!」)を発表してもらいます。そして参加者全員でその疑問や関心を共有したいと思います。現在までの法学の勉強をつうじて養った法感覚をフル稼働させてみましょう。
2.参加者が持ち寄った疑問や関心(以下、関心事項という)を整理し、次のステージで検討する人格の内容を絞り込みます。なお、予定では主に氏名または肖像を取り上げたいと思っています。
第二ステージ――人格(氏名または肖像)に対する法的な保護
このステージでは、「人格(権)に対する法的な保護がどのようになされているのか」という基礎的な知識を得るとともに、人格の有する様々な法的な側面及びそれが抵触する問題(例:表現の自由)などを理解することを目指します。
1.人格(氏名または肖像)に対して、どのような価値(利益)や権利が法的に認められ保護されているのかを、教科書や参考図書をもとに学びます。
2.裁判例の検討をつうじて、教科書や参考図書で学んだ事柄への理解を深めます。また、どのような法的保護が「なされているか」にとどまらず、「なされるべきか」まで考えてみましょう。なお、裁判例はこちらで準備する予定ですが、参加者が教科書等に触れて関心を持たれたものでも結構です。
第三ステージ――人格を守る法の役割、夏休みレポート
このステージでは、第一及び第二ステージをふまえて、「人格を守る法の役割」がどのようなものでなくてはならないかを、探求することを目指します。
1.第一及び第二ステージをつうじて、「人格、社会、法」のつながりを確認する作業を行ってきました。では、このような人格や社会との関わりあいのなかで法はどのような役割を担っていけば良いのでしょうか。抵触する権利の問題や社会の移り変わり(例:インターネットは今後も普及し続けることでしょう、またモラルハザードも加速しています)も視野に入れて考えてみます。
2.平成16年8月17日までに、夏休みレポート(4000字程度)を提出して下さい。
第一ステージにおける関心事項を、第二ステージで習得したことなどを生かして、もう一度考えてみましょう。「答え」は一つとは限りません。また、さらなる疑問が湧き上がってくるかもしれません。この授業に限らず、これからの勉強(生活、人生)にも生かされていくようなレポートを期待します。レポートはコメントをつけて返却する予定です。
授業の進め方
第一ステージ(第1〜3回)
第1回目:自己紹介(連絡先)、関心事項の提示
開講日までに、関心事項を述べるのに必要なトピック(新聞の切抜き、Web上なら印刷して)を用意しておいて下さい。当日配布する用紙に、関心事項とその理由を書き込むとともに、それらを添付して提出してもらいます(次回返却します)。
第2〜3回目:グルーピング、関心事項の共有、レジュメ作成方法等の説明
参加人数や提出してもらった関心事項に応じて、グルーピングを行います。そして、グループごとに関心事項について発表してもらい、第二ステージで採りあげる題材(氏名なのか肖像なのか等)を決めます。また、基本的なレジュメの作成方法及び議論の進め方について説明します。
第二ステージ(第4〜9回)
各回、前半で担当グループは作成したレジュメに沿って報告を行い、後半でそれに基づいて議論を行います。各グループがどのような順番で報告していくかは、あらかじめ決めておきます。
第三ステージ(第10〜最終回)
第10回目:グループごとに見解をまとめたものを、発表してもらいます。見解をまとめる作業は、この回までに行っておいて下さい。
最終回:総括を行うとともに、参加者が本演習を終えて「発見!!」できたことを、一人ずつ述べてもらいます。
教科書・参考書等
教科書の候補として、
・村上孝止『勝手に撮るな!肖像権がある!』(青弓社、2002年)
・竹田稔『〔増補改訂版〕プライバシー侵害と民事責任』(判例時報社、1998年)
などを考えています。参加者の関心に応じ決めたいと思います。
参考図書等
・五十嵐清『人格権論』(一粒社、1989年)
・五十嵐清『人格権法概説』(有斐閣、2003年)
・竹田稔ほか編『〔新・裁判実務大系〕第9巻 名誉・プライバシー保護関係訴訟法』(青林書院、2001年)
成績評価の方法・基準
試験は行いません。
成績は、以下の4点を総合的に評価します。
@演習に取り組む熱心さ(無断欠席はないか、議論に積極的に参加しているか)
A演習における報告や発言
B自主性(自分から学ぼう、探求しようとする姿勢が見られるか)
C夏休みレポート(課題に対し何らかの方向性が示されているか、今後の勉強に生かしていこうとする意欲が見られるか)
その他(質問・相談方法等)
質問は、e-mail(kmn-ando@mtd.biglobe.ne.jp)にて随時受け付けます。
とくに、レジュメの作成方法、資料の収集方法などについて不明な点があれば、ぜひご質問下さい。
過去の授業評価アンケート