法政基礎演習 II

最終更新日:2017年8月21日

授業科目名
法政基礎演習 II
標準年次
2
講義題目
社会科学入門
開講学期
前 期
担当教員
朝倉 拓郎
単位数
2単位
教  室
403
科目区分
入門科目
履修条件
特にありません。
授業の目的
福沢諭吉は『福翁自伝』の中で、欧米を旅行したときのことを回顧して、政治や社会に関することを現地の人に聞いてもさっぱり要領を得なかったと嘆いています。このことは、政治や社会に関することは、その社会に生きる人間にとっても、実はよく知られていないということを意味しています。なぜなら、我々は、自分たちが生きる社会に関することを、つい自明のものと見なしてしまい、あえて深く問う必要を感じないからです。しかし、社会科学は、「福沢の視点」を作り出すことによって、それまで自明のものと考えられていた現象の中に潜んでいたものを明らかにし、我々に新しい考え方、生き方を提示します。本演習の目的は、テキストの理解を通じて、社会科学が持つこのような力を体験し、「福沢の視点」を自らの中に養うことです。この視点は、皆さんが将来どの分野を専攻することになっても役立つものと確信します。
授業の概要・計画
【授業の概要】現代の日本社会では、様々な犯罪が多発し、治安の悪化が懸念されています。この原因として、かつての親密な共同社会が失われたため、他者との信頼関係が崩壊したからだという説明が常識的に流布しています。しかし、他者を信頼するとは実際にはどういうことなのでしょうか。昔の日本人は本当に他者を信頼していたのでしょうか。本演習で取り上げるテキストの著者は、「信頼する」という行為の意味を捉え直し、さらに心理学的な実験の成果を取り入れながら、我々が信頼関係の崩壊として苦々しく考えている現象に対して別の理解を提示します。つまり、著者は、社会科学という方法を通じて、我々が自明視している現象を相対化して、自分たちの社会が直面している事態をより深く問い直そうとしています。本演習では、まず、テキストの輪読を通じて、著者の主張を正確に理解することを目指します。次に、参加者同士による討論を通じて、著者の主張を基に自らの見解を展開することを試みます。最後に、テキストの輪読と参加者同士の議論を通じて得られた成果を、参加者自身によって整理し、評価します。

【授業計画】(第1回)イントロダクション、次回担当者の決定
(第2回以降)授業は、原則として、一章につき二回のユニットで進みます。各章ごとに担当者二人を決定し、一人にはその章の内容の要約、もう一人はその章に関して行われた議論の総括を担当します。各ユニットは、要約担当者の報告によって始められ、参加者全員による議論を経て、総括担当者による総括によって終わります。参加者は、要約と総括について、少なくともそれぞれ一度は担当してもらいます。各ユニットにおける具体的な手順と、参加者の役割については「授業の進め方」の項を参照して下さい。
授業の進め方
授業の手順と、それぞれの手順における作業および獲得目標を説明します。
@要約担当者によるテキストの内容説明。
著者の論理展開、主張を正確に把握し、それをレジュメにまとめることによって、参加者全員にその後の議論の共通の土台を提供する。
A参加者による質問と要約担当者による応答
質疑応答によって、テキストの理解を深める。当然、要約担当者以外の参加者も、テキストを熟読していることが前提となる。
B参加者全員による討論
テキストの議論を前提に参加者が著者の見解を評価し、あるいは自らの見解を提示する。ここでの評価や見解は、根拠を伴った説得的なものでなければならない。さらに、参加者は討論によって、互いの評価や見解の妥当性を検証し合う。活発な議論が望まれるが、そのためには他者の意見に対する理解力も要求される。
C議論の総括
授業終了後、総括担当者は、著者の主張、質疑応答、討論を整理し、レポートにまとめる。このレポートは次回の授業の冒頭において報告される。これによって、授業によって得られた成果、あるいは問題点を参加者全員で確認し、共有する。
以上が授業の大まかな手順ですが、この他に学期末にレポートを課します。このレポートでは、テキスト全体に対する評価、およびそれに基づいて自らの見解を提示してもらいます。授業を通じて養われた理解力、批判力を文章によって説得的に表現することがこのレポートの目的です。レポートは添削して返却します。
教科書・参考書等
【教科書】山岸俊男『安心社会から信頼社会へ―日本型社会の行方―』(中公新書、1999年)
【参考図書】授業の中で適宜紹介します。
成績評価の方法・基準
試験は行いません。出席、報告および質疑応答の内容、レポートなどを基に総合的に評価します。特に、議論への積極的参加を重視します。
その他(質問・相談方法等)
質問はe-mailで随時受け付けます。直接質問する場合は、電話、e-mail等で連絡を取った上で研究室に来て下さい。連絡先は下記の通りです。
e-mail: asakura@law.kyushu-u.ac.jp
研究室:法学部第10研究室 電話:092-642-3227(内線:3227)
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