行政救済論

最終更新日:2017年8月21日

授業科目名
行政救済論
標準年次
3・4
講義題目
行政救済論
開講学期
前 期
担当教員
木佐 茂男
単位数
4単位
教  室
201
科目区分
展開科目
履修条件
 2年次開講の行政過程論を履修していることが望ましい。行政過程論の知識があることを前提として講義を進める。
授業の目的
 通常、行政救済法として講義対象となる部分の序論的・入門的な知識・考え方の修得を目的とする。
 わが国では、行政法が司法試験(必修)科目でないため、2万人に及ぶ数となった弁護士のうち、わずかに数パーセントしか行政法総論・行政救済法の知識を持たないのが現状である。いわゆる先進国の中では異常とも言える状況に陥っている。加えて、公務員もまた行政法の知識を備えているとは言い難い状況にある。先進国の中で公務員の系統的養成制度がないのは唯一、日本である。こうした状況であるから一般の市民にも行政法や行政救済法の知識はほとんどない。この講義では、学問レベルで説かれるレベルの高い行政救済法の諸理論があることを踏まえつつ、実際に市民や法曹がまず出くわす行政上のトラブルの処理の仕方、処理のあり方について、国際比較や司法改革との関わりなどの大局的な観点とともに、苦情処理などの実用的な知識・ノウハウについても、ともに考えていくことにしたい。
授業の概要・計画
 行政救済法は、通常、「行政争訟法」と「国家補償法」に分けられる。理論的な研究の中心は、これらの部分に集中しているため、講義でもこの領域に8割程度の時間を割く。しかし、市民は、行政との関わりにおいて、一体何が問題なのか、行政法に関連して救済を受けることのできる問題かどうか、そもそも何も分からないのが普通でである。たいていは、いろいろな窓口に行って苦情を言ったり、意見を述べたり、見解を聞いたりする。行政争訟法や国家補償法によって決着を見る事件は、現に市民の中に起きている行政法律問題の1万分の1にもならないだろう。そこで、行政に関わる紛争の現れ方と、実際に市民が事件にぶつかって当惑していく順番に法的問題を取り上げ、講義を進めるようにする。
 ドイツでは、中学生でも社会科で原告の訴状、被告の答弁書、判決文の現物を見て学習しているし、初級職の事務系公務員は誰でも不服審査の申立書や決定書・裁決書を書けるところまで実習してから現場に出る。日本でも法学部を出ている以上、不服申立書が書けたり、行政事件の訴状は書けるようになるのが好ましいと思う。そこで、講義時間数はまったく足らないが、多少なりとも、先進国並のものになるよう実務的な側面にも配慮したい。適宜、外国の裁判風景、訴状、訴訟運営、学生の争訟法の勉強風景などのスライドを映す。以下、講義の概略である。
(1)行政事件とは何か、(2)行政事件の行方、(3)行政上のクレーム処理、(4)行政不服審査、(5)行政事件訴訟、(6)国家賠償、(7)損失補償
 日本の行政救済法の制度と実務は、欧米はおろか、韓国や台湾からも相当遅れたものになってきた。そこで、当然のことながら、現在議論されている行政事件訴訟法改正問題などにも触れる。
授業の進め方
 パワーポイントを用いての講義中心となる。私が考えている行政救済法にふさわしいテキスト・教材は、外国にはあるが日本にはない。そのため、特に講義の前半はオリジナルな解説をする。受講者数次第では、受講者に質問をしたりすることがある。私が担当するすべての講義で行っているように、毎回、出席カードに、その日の感想や意見を書いてもらう。
 講義期間中のレポート提出は予定していない。
教科書・参考書等
 現時点では、実用的要素をもった行政救済法のテキストはないと考える。そのため、開講時までに行政救済法の従来の考え方を知るために適切なテキストを選択する。開講前または開講時には指示する。参考書として、塩野宏・小早川光郎・宇賀克也編 『行政判例百選II〔第四版〕』(有斐閣、1999年)を利用する。
成績評価の方法・基準
 成績評価は、期末試験による。
 出席カードは各人ごとに束ねて、ボーダーライン上の成績の場合に、普段の記載事項を考慮して可否の判断材料とすることがある。
その他(質問・相談方法等)
過去の授業評価アンケート