法政基礎演習 II

最終更新日:2017年8月21日

授業科目名
法政基礎演習 II
標準年次
2
講義題目
歴史のなかの法と裁判
開講学期
前 期
担当教員
山本 弘
単位数
2単位
教  室
206
科目区分
入門科目
履修条件
特にありません。
授業の目的
この演習では、テキストを読み解くに際しての目標(T)と、ゼミ参加についての技術的な目標(U)の2点を「授業の目的」として設定します。T 現代の法制度を理解するためには、過去の法制度についての歴史的認識を深めることが不可欠です。また、ある時代の法制度を理解するためには、その時代の社会状況を把握することが必要となります。そのため、本演習では、前近代(とくに中世)の法制度と社会について理解を深めていきます。そして、現代の法と過去の法とを相対的なものとして捉える視点、および、法制度を動的なものとして捉える視点を育むことを目的とします。U また、「知的好奇心の喚起→情報収集→考察→他者への伝達→さらなる知的好奇心の喚起」というプロセスを意識的に繰り返すことで、自分の力で調査し、考える力を身につけることを目的とします。(とりわけ、今回のゼミでは「情報収集」についての詳細なレクチャーを行いたいと考えています。) さまざまな「なんでだろう?」に対して、「納得」できるまで貪欲に考える姿勢を身につけてください。
授業の概要・計画
(授業の概要)
T 現代社会の様々な問題はそれぞれの問題に対応した法制度をつくりだし、既存の法制度は現代社会を構成する一つの要因となっています。社会が法制度を作り、法制度もまた社会を作り上げているのです。このことは歴史の諸段階においても同様であると考えられます。私たちの生活する現在の社会や法制度もまた、後世においては、歴史のなかの一段階として位置づけられるのです。
本演習では、社会の転換に伴って、法制度がどのように変転していったのかを読み解き、当時の法制度と社会について認識を深めます。その際、「その時代に生きた人々の目線」および「現代人の視点」の二つの側面から考えていきます。法制度や社会について、過去と現在では、どこがどのように違い、どのようなところが同じなのか?現在を生きる我々が、法制度や社会の歴史をみていく上での違和感や共感できる点について議論し、法と裁判を歴史のなかに位置づけ、相対的なものとして考えていきます。
「歴史のなかの法と裁判」を理解する作業の手始めに、蒙古襲来前後の中世前期を取り上げ、中世の「法制度」と、法制度を取りまく「社会」について議論していきます。
さらに、時間に余裕があれば、大正・昭和前期における第一級の法学者のエッセイを取り上げ、同様に議論していきたいと考えています。
U なお、テキストを読む前に、ゼミ参加において不可欠である技術的な事柄についてのレクチャーを行います。自己の知的好奇心に基づく疑問を解きほぐしていくためには、様々な情報に基づいた分析・考察が必要です。そこで、本演習では、情報収集手段としてのインターネットや大学図書館等をフル活用するための実践的な文献調査方法、収集した情報を分析・考察するにあたっての思考法、などについて事前に手ほどきを行います。

(授業計画)
第1回:演習の趣旨説明、報告の分担決め等を行います。
第2回〜第4回:「文献の調査方法」、「レジュメの作成方法」、および、「報告と議論の方法」について、実践的な作業を交えながら身につけてもらいます。
第5回以降:各自、担当箇所の報告を行ってもらい、その報告についての議論を行います。第1回から第4回までのレクチャーを踏まえて報告してもらうわけですが、報告内容および技術的な方法についても、参加者各位とともに話し合っていきたいと思います。
学期終了間際:学期末レポートの概要について参加者各自に報告してもらいます。
最終回:本演習で取りくんだ諸種のテーマについての総合的な議論を行った後、教員と学生ひとりひとりがゼミについての評価を行います。

授業の進め方
▽ 参加者には、必ず報告を行ってもらいます。
▽ 報告者はレジュメを作成し、このレジュメに基づいて報告を行ってもらいます。その際、以下の作業を盛り込んだ報告を行ってください。
・ 内容の要約。
・ 自分が興味・関心を持って抽出した論点の考察。
・ 担当箇所の不明な点についての調査。
▽ 演習当日は、担当者の報告をもとに、参加者全員で議論を展開していきたいと思います。当時の法制度と社会を理解することを一義的に考えますが、現代の諸問題をも視野に入れて議論を行います。
教科書・参考書等
教科書:網野善彦『蒙古襲来 転換する社会』小学館(小学館文庫)、2001年。(¥1000+税)
    
参考図書T:牧英正・藤原明久編『日本法制史』青林書院、1993年。(¥4500)
  末広厳太郎著・川島武宜編『嘘の効用 上』冨山房(冨山房百科文庫40)、1988年。(¥1400)
  末広厳太郎著・川島武宜編『嘘の効用 下』冨山房(冨山房百科文庫45)、1994年。(¥1600)
参考図書U:西野喜一『法律文献学入門─法令・判例・文献の調べ方─』成文堂、2002年。(¥1800+税)
      苅谷剛彦『知的複眼思考法』講談社(講談社+α文庫)、2002年。(¥880+税)
成績評価の方法・基準
平素の演習での態度(出席回数、報告や討論)、および、学期末レポート(5000字程度)に基づいて、総合的に評価します。
その他(質問・相談方法等)
参加者は、必ず事前にテキストを通読し、報告に対して議論ができるように準備しておいて下さい。
討論には積極的に参加して、どんな意見でもいいので、必ずコメントしてください。

※ゼミの番外編として博多周辺の元寇遺跡見学会を企画しています。
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