マスコミの犯罪報道が大きな影響を与え、厳罰主義にもとづく刑事法ラッシュを、そしてまた、判例実務における必罰主義を下支えする大きな要因になっている。しかし、マスコミ犯罪報道とわが国の法制との溝は大きい。加えて、必罰主義、厳罰主義によって、犯罪を阻止できるのか、犯罪被害者等を救済しえるのか、について、疑問とする声は少なくない。刑法をめぐる対立がますます激化している。 本授業では、このような全体的な枠組みの中に個々の論点を位置づけることによって、上記の「市民として必要な判断力」の形成に努めたい。その際、とりわけ次の諸点に留意したい。 1. 我々の犯罪観、刑罰観はマスコミ犯罪報道によって強い影響を受けており、被疑者・被害者の立場を排除していること。 2. また、それは、犯罪被害者の立場に立つものでもなく、しばしば犯罪被害者の立場を排除しがちであること。 3. 犯罪の防止及び犯罪被害者の救済において、刑法はどのような役割を占めるべきか。
|