法政基礎演習2

最終更新日:2017年8月21日

授業科目名
法政基礎演習2
標準年次
2
講義題目
「日本的法意識」を考える
開講学期
前 期
担当教員
河野 恵一 恵一
単位数
2単位
教  室
307
科目区分
入門科目
履修条件
特にありません。
授業の目的
◆「日本的法意識」にまつわる諸問題について検討することを通じて、現在の社会的諸制度、およびそれらが抱える問題点を複眼的・現実的に捉える見方を身につけ、人間社会における法や裁判が果たす役割について考えるためのきっかけを提供すること。
◆文献を読み込んで報告を行い、その内容について討論する、という作業を通じて、学術的にものごとを分析し、考えること、また、その結果自分がわかったこと(あるいはわからないこと)を他人に伝える能力を身につけること。
授業の概要・計画
◆授業の概要について
わが国の社会制度、およびそれが抱える諸問題への対処について論じられる際、伝統的・特殊な「日本的なるもの」と先進的・普遍的な「西洋的なるもの」とを対比させてとらえる、という手法は分野を問わずしばしば用いられるところです。このような捉え方には、明治以降、それまでのわが国で培われてきた価値観とは根本的に異なる西洋文明の諸概念を全面的に継受したという歴史的事情が強く影響していると思われますが、法制度の分野についても例外ではありません。とりわけ1970年代を中心に盛んだった「日本的法意識」をめぐる議論において、このような議論の枠組みが象徴的に現れました。ごくおおざっぱにまとめるなら、この議論は、前近代のわが国において形成されてきた法や裁判に対する人々の考え方の特徴(日本人は裁判よりも和解を好む、権利よりも義務を重視する、といったもの)を、西洋社会におけるそれと対比させて両者の相違点をきわだたせ、その成果を日本社会のさらなる近代化に寄与させ
ようとするものでした。
この「日本的法意識」論は、その主張自体の説得力に加え、議論枠組みのわかりやすさも手伝って、現在に至ってもかなりの影響力を持っている反面、問題点も数多く指摘されてきています。その批判の内容は、個々の事実認識のレベルでの見解の相違(たとえば、日本人は本当に裁判嫌いなのかどうか)にとどまらず、そもそも「法意識」とはなにか、そのようなものが存在するとしてそれは学術的な分析に耐えうる概念なのか、といった根元的な部分にも及ぶものでした。さらには法や裁判にかかわる複雑かつ多岐にわたる諸問題を、「日本」対「西洋」という単純な二元論の枠組みに押し込んで議論することの是非についても問われるべきでしょう。
本演習では、これらの議論の主要な流れを追い、議論することで、「日本的法意識」というテーマそのものに対する理解を深めるとともに、現実の社会問題を分析するにあたってしばしばなされる安易な日本文化還元論の危険性について、みなさんといっしょに考えていきたいと思っています。

◆授業計画について
第1回目は参加者の自己紹介と本演習についての説明、および報告分担の決定等を行います。第2・3回目は、本演習で読んでいく文献の研究史上の位置づけや文献の調べ方、報告のしかたなどについて私のほうから簡単な講義を行います。第4回目以降は、担当者による報告とそれに基づく討論によってテーマに対する理解を深めていただきます。そして、最終回には演習全体の総括をします。また、「夏休みの宿題」として、5,000字程度のレポートを提出していただくことを考えています(必須)。
授業の進め方
基本的には、指定したテキスト(論文)について担当者に報告していただき、それをもとに全員で討論していく、というかたちをとります。各報告者は担当部分を熟読して論理の流れを丁寧に追い、わからない点については可能な限り調べた上で、要点をまとめて1回あたり30分程度の報告をしてもらいます。それをもとに、報告で理解できなかった点、疑問を持った点、考えたことなどを全員で討論していきます。討論を有意義なものにするために、報告者以外の方も事前にある程度予習をしてくることが前提になります。
教科書・参考書等
必須文献:川島武宜『日本人の法意識(岩波新書<青版>630)』(岩波書店、1968年。\640)

これ以外の参考文献については適宜提示・配布しますが、文献・資料をコピーにて配布する場合にはある程度実費負担をしていただく場合があることをあらかじめお断りしておきます。
成績評価の方法・基準
出席状況・報告の内容・討論への参加の程度・発言の内容・レポートの内容等をもとに総合的に判断します。
その他(質問・相談方法等)
質問等があれば、092-642-3230(法学部第13研究室)まで電話していただくか、e-mail(keiichi@law.kyushu-u.ac.jp)にてお願いします。もちろん研究室へ直接お越しいただいてもかまいません。
過去の授業評価アンケート