行政法2(行政救済論)

最終更新日:2017年8月21日

授業科目名
行政法2(行政救済論)
標準年次
3・4
講義題目
行政救済法
開講学期
前 期
担当教員
大橋・角松 洋一・生史
単位数
4単位
教  室
月2=大講/金1=中講
科目区分
展開科目
履修条件
行政過程論を既に学習していること(但し、単位取得の有無は問いません)。
授業の目的
 (ア)あなたが経営している弁当屋の弁当が食中毒を引き起こしたとして、保健所長はあなたに1週間の営業停止処分を下しました。弁当の品質に自信を持つ あなたは、この処分に納得がいきません。(イ)あなたの家の隣に高層建築物が建築されることになりました。あなたはこの建物は建築基準法に違反していると考えていますが、建築主事は建築確認を出してしまいました。(ウ)空港周辺に住むあなたは、離着陸騒音の被害に悩まされています。問題の根本は航空行政にある とあなたは考えています。(エ)(ア)や(ウ)の事例で、あなたは営業できなかった財産的損害や、騒音による健康被害を受けてしまいました。あなたはこのような損害の賠償を国や公共団体に求めたいと思っています。(オ)あなたの住んでいる土地が、ダム用地とされて強制的に収用されることになりました。あなたは失った財産に対して補償を受けたいと思っています。
 さまざまな行政の活動(営業停止処分、建築確認、空港の供用、土地収用)に対して、市民(=あなた)が不服を有することによって生じた「紛争」をどう解決したらいいか、その仕組みを定めているいろいろな法律をまとめて、「行政救済法」と呼びます。
 この授業では、行政救済法に関する基本的仕組みを学んだ上で、「行政活動の有効なコントロール」及び「市民の実効的救済」という観点から、現在の裁判例や学説を批判的に検討していきます。
授業の概要・計画
 行政救済法は、大きく分けて、「行政争訟法」と「国家補償法」の2つの分野に分かれます。
「行政争訟法」とは、違法な行政活動が行われた場合に、市民がその是正を求めるための手続を扱う分野です。是正を求める方法としては、第一に、行政機関に対して再考を求める「行政不服審査」があります。主に、行政不服審査法が学習対象になります。裁判ほど厳格でない手続であるため、理念通りの運用がなされれば、簡易迅速にしてコストのかからない救済が可能となります。第二の方法は、裁判所に行政活動の是正を求める「行政訴訟」です。行政事件訴訟法が主要学習対象になります。司法制度改革の流れの中で、2004年に行政事件訴訟法が改正されました。この講義では、実効的な権利救済をテーマに、改正点を中心に、説明します。また、近時活用されている住民訴訟、情報公開訴訟にも重点を置くことにしたいと思います。
 「国家補償法」は、違法な行政活動による損害の賠償を求める「国家賠償」と、適法な行政活動による損失の補填を求める「損失補償」に分かれます。前者では国家賠償法が主要な学習対象になります。後者には一般的な法律はなく、たとえば土地収用法などの個別の法律が補償を定めています。講義ではそれらの一般的原則(「特別の犠牲」概念)・憲法29条3項との関係などについて取り上げます。
授業の進め方
 大橋洋一(月曜2限)・角松生史(金曜1限)の二名が担当します。大橋が主に「行政訴訟」を、角松が主に「行政不服審査」「国家賠償」「国家補償」を担当する予定ですが、より詳細な分担は授業開始後アナウンスします。
講義形式で進めますが、参加者に質問したり意見を求めることがあります。
教科書・参考書等
<教科書>
(1)塩野宏『行政法II』第4版(有斐閣、2005年5月刊行予定)
(2)行政判例百選II第4版(有斐閣)

(1)の発行前に予習課題等が必要となった場合は適宜対処します。
成績評価の方法・基準
試験を実施する予定ですが、詳細については授業開始後アナウンスします。
その他(質問・相談方法等)
過去の授業評価アンケート