法政基礎演習2

最終更新日:2017年8月21日

授業科目名
法政基礎演習2
標準年次
2
講義題目
現代法律学の哲学的基礎  ―『公共性の構造転換』を手掛かりに―
開講学期
前 期
担当教員
塩見 佳也  
単位数
2単位
教  室
205
科目区分
入門科目
履修条件
【積極性・自主性】
 ・遅刻・無断欠席をしない。
 ・外国語を含む、相当量の文献を読みこなすこと。
 ・発表担当者・教員の話を聞くのではなく、文献をよみ、みずからの見解を披瀝し、全体としての「知」が増大するように心がけて欲しい。
【履修(予定)が望ましい科目】
 政治学史・法思想史・憲法・行政法・民法
授業の目的
(1)現代のキーワードとしての「公共性」と法学      
 「公共性」という言葉は、現代のキーワードであるといってよい。実際、憲法学における「公共の福祉」、行政法学における「公権力」概念・「公開性」、民法の「公序」などの議論にみられるように、この概念との関係から、法律学において国家との関係で「自由」をとりあつかうための、ある程度の見取り図を手にすることができる。
(2)ハーバーマスの『公共性の構造転換』を読む
 @抽象的な「公共性」ということばが独り歩きをすると、自由を基底におく社会を窒息させることになる。「エゴイストの自由・VS・公」という単純化からはなれて、「公共」を理論的・哲学的に論じる枠組を用意したのが、この本である。まさに現代における古典の一つといってよい。しかも、この本の著者は、公法学の議論を念頭において書いているために、法律学の問題関心にも親和性を有する。
 A昨今の「教養」の崩壊とともに、古典を読むことが軽視されてきているが、古典を読むことは重要である。なぜなら、第一級の優れた思想家が熟慮を重ねて生み出したテクストは、理論的に思考する「型」を提供するばかりか、著作全体の構成に着目しながら読み解いていくことによって、これから読書をしていくための基礎的なスキルを修得することができるからである。
 Bこの本には、思想史・公法学・社会学などの領域における重要な基礎概念がもりこまれている。それらについて教員が適宜解説をくわえ、文献の調べ方についてアドヴァイスを行いつつ、参加者の皆さんにも自分でそうした作業をおこなえるようになっていただくことを目指す。
(3)レジュメの作成方法等、プレゼンテーションの仕方を身につける。
授業の概要・計画
@文献をただ漫然と読むのでは、かぎられた時間を有効に活用できないおそれがある。そこで、法律学の基礎理論の観点から見て重要ないくつかの主題を抽出して、講読をすすめる。

 T市民的公共性の概念史―生成・没落・変容―:第1章「序論」・第2章「公共性の社会的構造」
 U「社会」と「国家」を区別する分析視点1 社会・市場:第3章「公共性の政治的機能」
 V「社会」と「国家」を区別する分析視点2 国家の社会化:第5章「公共性の社会的構造変化」
 W「社会」と「国家」の融合:第6章「公共性の政治的機能変化」
 X「公開性」と「公共性」:第4章「市民的公共性」

A@の主題にそくしてテクストを検討し主張内容を要約・理解したあと、関連する法領域の議論への接続をはかる。その際、受講者各位に勉強を深めていただきたい、関連する論点については、教員が適宜指示する。
授業の進め方
【0】開講日までにみさなんに用意していただきたいこと
  開講日までに、「公共」「公共性」ということばについて感心を持った事象を、ニュース記事・コラム・小説・評論などから探し、第1回目の授業に主題を準備してきてください。
【1】第1回オリエンテーション
 @・自己紹介と併せて、準備していただいた主題について、紹介していただきます。
  ・ゼミの基本的な運営方針説明、報告の順序決め(人数によってはグループ分け)
  ・レジュメの作成方法、文献収集の方法などについての説明
 A著者の概要と、著者が法律学にあたえた影響について、教員より簡単に説明いたします。
【2】 二回目 :導入 
 @概要に記した5項目と全体構図について説明を行います。
 AT市民的公共性の概念史―生成・没落・変容―(第1章・第2章)について教員より、導入のために、説明します。
 B各章につき、それぞれ報告担当者(人数によってはグループ)を決定します。次回以降、毎回のゼミはこの報告担当者を中心に運営されます。
【3】 第3回以降の予定
 (1)以下について各二週ずつにわけ、第一週目を要約・主張内容の共有に費やし、二週目に関連論点について議論いたします。
  U「社会」と「国家」を区別する分析視点1:第3章
  V「社会」と「国家」を区別する分析視点2:第5章
  W「社会」と「国家」の融合:第6章
  X「公開性」と「公共性」:第4章
 (2)ゼミの具体的進め方
  @第一週目
  担当者は、担当箇所の議論を要約してください。40分程度で、他の参加者に正確に主張内容を説明できるように整理してください。担当者以外は、担当箇所を熟読し、担当箇所に関連しそうな論点を予習してください。ヒントや関連文献については、必要に応じて指示いたします。
  A第二週目
 (a)・前回担当箇所に関連する現代法律学上の論点について整理し、そこでの問題状況について共有し、議論を進めます。
 (b)次回の打ち合わせ。
教科書・参考書等
【テキスト】ハーバーマス『公共性の構造転換』(未来社)〔※要購入〕
【参考文献】授業にて適宜紹介します。とりあえず、みなさんと共有し、それについて議論できたらよいと教員が願っている文献を、到達目標という意味で、挙げておきます。
 ・長谷部恭男・金泰昌編『法律から考える公共性』(東京大学・2004)
 ・大村敦志「大きな公共から小さな公共へ」法律時報76巻2号(2004)71頁-77頁
成績評価の方法・基準
試験は行いません。以下の点を総合的に考慮して評価します(カッコ内は考慮の際のおおよその比率)。
@出席状況(40%):無断欠席厳禁(病欠などの場合でも事前に報告してください)。やむを得ず欠席する場合には連絡すること(レポート提出を課す場合があります)。遅刻はご遠慮ください。
A議論への貢献度(40%):報告担当時に限らず、平素から、主体的・積極的に議論に参加しているか。
その他(質問・相談方法等)
質問は随時受け付けます。
【研究室】法学部第研究室(092-642-4454、shiomi【アットマーク】law.kyushu-u.ac.jp)
*直接研究室にこられる場合には、事前にメールにて連絡してください。


(学務委員会より)
この授業の受講には別途登録(登録期間は4月5日〜4月11日)が必要です。法学部HPの「お知らせ欄」を参照してください。なお、この授業の初回は4月18日となります。
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