法政基礎演習2

最終更新日:2017年8月21日

授業科目名
法政基礎演習2
標準年次
2
講義題目
刑事裁判における諸問題 〜 刑事裁判を通じて人権を考える 〜
開講学期
前 期
担当教員
石田 倫識  
単位数
2単位
教  室
307
科目区分
入門科目
履修条件
履修条件といったものは特にありません。刑事裁判に関する現段階での専門的知識の有無も問いません。
ゼミ活動に真摯かつ主体的に参加する意欲のある学生を期待します。
授業の目的
■法律学の基本的素養の1つである人権の感覚を磨くこと
 本演習では、刑事裁判における諸問題を題材に、演習での議論を通して、法律学の基本的素養の1つである人権の感覚を磨くことを第1の目的としています。本演習で学んだことは、これから法律学を勉強していくにあたっての重要な基本的視点を提供してくれることと思います。
■必要な情報を収集し、分析・考察を加え、自己の見解を表明する能力を鍛えること
 「演習での議論を通して」と書きましたが、その場で思いついたことを適当に話しあうだけでは、議論は深まりません。演習での議論をより実りあるものとするためには、各人が、議論する上で必要となる情報を十分に収集・整理し、それに分析・考察を加えた上で、論理的・説得的な意見表明を行えるようにならなければなりません。本演習では、このような意見表明の力を着実に身に付けてもらうことを第2の目的としています。そのためには、相応の下準備と訓練が要求されることにはなりますが、本演習への主体的な参加を通じて得られるであろう意見表明力は、大学においてのみならず、広くこれからの人生において必ず役に立つはずです。
授業の概要・計画
■授業の概要 ―― 刑事裁判におけるJusticeとは何だろうか?
 本演習のテーマである「刑事裁判」や「刑事司法」のことを、英米では、Criminal Justiceと表現することがあります。刑事裁判とは、文字通り、Justice=「正義」を実現する場と考えられているのです。「刑事裁判の目的は正義の実現にある」、このこと自体は皆さんも納得されるかもしれません。しかし、何をもってJustice(正義)と考えるのかは、実は必ずしも容易ではないのです。
例えば、警察の拷問によって自白が獲得されたとします。そして、その自白に基づいて捜査をした結果、その自白の内容どおりに、被害者の血液と被告人の指紋の付着した凶器が発見されたとしましょう。つまり、拷問の末とはいえ、被告人は客観的真実を述べていたわけです。
 さて、このような場合に、被告人を有罪とすることは許されるでしょうか? 被告人が犯人であることは真実である以上、被告人を有罪とすることがJustice(正義)なのでしょうか。しかし、この見解に従えば、真実でありさえすれば警察による違法行為が結果として正当化される、ということになってしまいます。これでは正義の名に値しないでしょう。それでは逆に、違法行為に由来する証拠によって被告人の有罪を認定することはできない(他に証拠がなければ無罪)とすることがJustice(正義)なのでしょうか。この見解に従えば、捜査機関の違法行為を理由に犯人を逃すことになりますが、これが正義の実現なのでしょうか。
 このように、何をもって刑事裁判における「正義の実現」とするのかは、実は簡単ではないのです。そして、刑事裁判上の諸問題の多くが、「真実」を重視すべきか、「適正手続」を重視すべきか、というジレンマを抱えているのです。本演習では、これら刑事裁判の諸問題を題材に、そこでのJusticeとは何かということを、ゼミ生同士の主体的な議論を通じて、考えてもらいたいと思います。
■ 授業の計画
 第1・2回目の授業では、本演習が取り上げるテーマの意義や目的など、本演習の趣旨について、担当教員が詳しく説明したいと思います。また、第3回目以降の授業における報告の担当・順番を決めた上で、報告にあたってどのような準備が必要なのか(必要な資料の探し方、収集の方法等)について説明します。
第3回目〜第7回目の授業では、演習で使用するテキストを分担し、実際に第1回目のゼミ報告を行っていただきます。テキストを題材にしたゼミでの報告・議論の過程を通じて、次は、自分自身で課題(テーマ)を設定し、そのテーマに関する資料を収集、分析・考察を加えた上で、第2回目のゼミ報告を行ってもらいます。報告者は、報告後の議論を踏まえ、さらに検討を深め、最終的にゼミ論文の形にして提出してもらいます。
授業の進め方
 本演習は、共通のテキストを題材にした第1ラウンドと、各人の問題意識に基づくテーマを題材とした第2ラウンドで構成されます。いずれのラウンドにおいても、基本的には、最初に報告担当者からプレゼンテーションを行ってもらい、それを素材にゼミ生全員で議論するという形で進めていきたいと思います。なお、報告担当者は、ゼミ報告の1週間前までにレジュメを作成し、事前にゼミ生全員に配ることをルールとします。
 第1ラウンドにおいては、ゼミ生全員が題材となるテキストと報告者のレジュメを読み、議論の準備(疑問点の抽出や報告者に対する反対意見の形成など)をしてきてください。第2ラウンドにおいては、報告者が、自分の扱う課題(テーマ)に関する文献一覧表を必ずレジュメに挙げるようにし、報告者以外のゼミ生は、その文献一覧表を参考にして、議論の準備をしてきてください。
教科書・参考書等
■演習で使用するテキスト
@ 村井敏邦(編)『現代刑事訴訟法(第2版)』(三省堂、1998)(¥3,105)
■自学用のテキスト
A 小田中聰樹『冤罪はこうして作られる』(講談社、1993)、B 三島聡『刑事法への招待』(現代人文社、2004)、C 赤池一将=中川孝博『刑事法入門』(法律文化社、2006)など
■参考図書として、刑事訴訟法に関する基本書
D 福井厚『刑事訴訟法講義(第2版)』(法律文化社、2003)、E 白取祐司『刑事訴訟法(第3版)』(日本評論社、2004)、F 田口守一『刑事訴訟法(第4版)』(弘文堂、2005)など。
成績評価の方法・基準
@ ゼミへの出席状況・議論への参加状況(20%)、A 第一回目のゼミ報告(20%)、B 第二回目のゼミ報告+ゼミ論文(60%)、を総合評価の上で成績評価を行います。
その他(質問・相談方法等)
 本演習での活動(資料収集や報告準備、ゼミ論の執筆など)は、とてもハードなものと思いますが、主体的に取り組めば、必ずその成果は現れます。この演習を通じて、大学で学問することの面白さを是非とも体感してもらいたいと思います。なお、ゼミに関するご質問、ご相談に関しては、e-mailで随時受け付けています。また直接研究室にお越しいただいて構いません。私が常に在席しているとは限りませんので、事前にご連絡いただければ幸いです。メールアドレスは、@law.kyushu-u.ac.jp の前に t-ishida を付加したものです。研究室は法学府第9研究室です(電話番号;092-642-3226)。


(学務委員会より)
この授業の受講には別途登録(登録期間は4月5日〜4月11日)が必要です。法学部HPの「お知らせ欄」を参照してください。なお、この授業の初回は4月18日となります。
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