法政基礎演習1(コアセミナー)

最終更新日:2017年8月21日

授業科目名
法政基礎演習1(コアセミナー)
標準年次
1
講義題目
ニュースで刑事法入門
開講学期
前 期
担当教員
武内 謙治
単位数
2単位
教  室
304
科目区分
基幹教育科目
履修条件
 特にありません。
 この講義は、大学生として生活を送るために最低限必要な技術やお作法、(生活)習慣をつけてもらうことを最大の目的とします。技術やお作法、(生活)習慣を身につけるには、(結構)時間と労力が掛かります。希望者の方は、そのことを念頭に置いて、演習に参加して下さい。
授業の目的
 この講義では、刑事法をめぐる問題を扱いながら、視る・調べる・聴く・話す・書く、という諸能力を高めてもらいます。
 しかし、重要なのは、「見させられた」り「聞かされた」りすることではありません。自分の頭と身体を使い、一旦ナナメから物事を見るプロセスを経て、批判的に物事を考えることが、大学生として生活していくためには不可欠です。この講義は、素直な新入生の皆さんに、人がいっていることを何でも鵜呑みにするのではなく、(良い意味で)「へそまがり」になってもらうことを目的とします。
 もっとも、一端の「へそまがり」になるには、身につけておかなければならないことが結構たくさんあります。新聞に目を通して世の中の動きを知り、読書をし、自分の考えを言葉や文字で表現する習慣を身につけておく、というのは、その中でも基本的で、なおかつ重要な技術・習慣です。
 そこで、この講義では、大学入学というおめでたい出来事を境にして、参加者の皆さんに、ナナメから物事を見て、新聞を読む・読書をする・レポートを書く、という技術と習慣をつけてもらいます。

 この講義で参加者のみなさんに身につけてもらうべき技術を具体的にいうと、次の3つになります。

(1)発表のやり方について学ぶこと
 「プレゼンテーション」と呼ばれる大学での発表のやり方を学びます。発表の際に利用する資料の作り方も含みます。

(2)議論のやり方について学ぶこと
 「ディスカッション」と呼ばれる、大学での議論のやり方を学びます。的確に質問し、質問に応答できるようになること、さらに議論を手際よく進めるための司会のやり方も含みます。

(3)レポートのつくり方について学ぶこと
 大学では、高校までに経験しなかった量の、しかも多くのレポートを課題として書かせられます。その準備として文章で自分の主張を表現するための技術を学びます。
授業の概要・計画
(1)この授業を構成するのは、(a)調査、(b)報告、(c)議論、(d)レポート、(e)「添削レポート」、(f)特別レポート(裁判傍聴レポート)とゼミ論文執筆、です。基本的な教材となるのは、犯罪や刑罰をめぐるニュース報道です。

(2)参加者の皆さんには、まず、新聞報道などのニュースを素材として調査・報告を行ってもらいます。その際、自分で問題を発見し、私見を交えながら、ニュースで扱われている問題を深めたり、背後にある問題に踏み込んだり、不正確な記述に的確に「ツッコミ」を入れる、というのが、報告者の役割です。それに基づき、参加者全員で議論を行い、疑問や議論を深めます。

(3)その上で、2種類のレポートを2〜3回提出してもらいます(レポートの回数は、受講者の皆さんとの話し合いにより、最終的に決定します)。
 第1のレポートは、授業の場で取り上げられた問題に関係するテーマを扱ったレポートです。このレポートでは、「最低でも」新書レベルの文献2つを必ず引用してもらいます(残念ながら、複数の引用文献のない文字の羅列を、大学では「レポート」とは呼びません。なお、レポートの字数は自由です)。このレポートは、同内容のものを2部作成してもらいます(もちろん1部はコピーで十分です)。1部は授業担当者(武内)にそのまま提出してもらい、もう1部は自分以外の参加者の手許に渡ります。
 第2のレポートは、「添削レポート」です。これは、自分の手許に渡ってきた他の参加者のレポートを添削する、というものです。それを通して、「人のふり見て我ふり」を直してもらう機会をたくさん持ってもらおう、というわけです(他人が持っている問題は、大抵、自分も抱えているものです)。この添削レポートも同内容のものを2部作成してもらいます。1部はレポートの「原著者」の手許に戻ります。もう1部は授業担当者(武内)に提出してもらいます。
 以上をまとめると、参加者の皆さんには、自分が書いたレポートと他の参加者が作成したレポートを添削するレポートという2種類のレポートを提出してもらうことになります。

(4)さらに、上のレポートとは別に、刑事裁判を傍聴した上で、自分が関心を持ったテーマについて論じた「特別レポート(字数は自由)」を提出してもらいます。また、最後に、「論文(できれば、10000字程度)」を執筆してもらいます。
 講義期間中2〜3回提出してもらうレポート、添削レポート、特別レポート、論文の提出は、いずれも単位を認定するための要件とします。

(5)授業計画は、次の通りです。
第1回目 自己紹介/報告順番の決定/グルーピング/基本的な運営方針の決定
第2回目 文献収集の仕方・図書館の使い方などの説明/次回報告者による「ネタ・ニュース」の配付
第3回目 報告/議論/次回報告者による「ネタ・ニュース」の配付
第4回目 報告/議論//次回報告者による「ネタ・ニュース」の配付
第5回目 報告//議論//次回報告者による「ネタ・ニュース」の配付/第1回レポートの提出
第6回目 報告//議論/第1回添削レポートの提出
…あとは、この繰り返し、というのが1つのモデルです。最終的には、受講者の皆さんとの話し合いで、決定しましょう。
授業の進め方
 上記の通り、<報告→議論→レポート+添削レポート>を1サイクルとして、授業を進めていきます。
 報告者には、日々流されているニュースから自分のアタマで問題点を発見し、調査を進めながらそれを掘り下げた上で、レジュメを作成し、報告してもらいます。参加希望者は、今のうちから新聞などにしっかり目を通すようにしておいてください。報告のネタになるニュースは、報告の一週間前に参加者全員に配布してもらいます。報告者以外の参加者も、議論に向けた準備を各自行ってきてください。
 レポートを書く際の(最低限の)資料となる一応の「新書文献リスト」は、第1回目の授業の際に配付します(いわずもがな、ですが、その文献リストに読書が拘束されるということでは、決してありません。なお、「新書文献リスト」は、http://www.law.kyushu-u.ac.jp/~takeuchi/uuv/wz/tb/ltb.html からもダウンロードできます)。
教科書・参考書等
 次のA〜Cグループに掲げた文献の中から、それぞれ「最低」1冊ずつに目を通しておいてください。いずれも、学部の4年間を通して繰り返し読むのに耐えうる書籍です。

-----Aグループ-----
(1) 苅谷剛彦『知的複眼思考法』講談社+α文庫(2002年)又は
(2) 野矢茂樹『論理トレーニング』産業図書(1997年)
(3) 伊勢田哲治『哲学思考トレーニング』ちくま新書(2005年)

-----Bグループ-----
(1) 戸田山和久『論文の教室』NHKブックス(2002年)
(2) 木下是雄『レポートの組み立て方』ちくま学芸文庫(1994年)
(2) 荒木晶子=向後千春=筒井洋一『自己表現力の教室』情報センター出版局(2000年)

-----Cグループ-----
(1) 赤池一将=中川孝博『刑事法学入門』法律文化社(2005年)
(2) 福井厚『刑事法学入門 第2版』法律文化社(2004年)
成績評価の方法・基準
 試験は行いません。授業への出席(25%)、報告(25%)、議論での発言(25%)、レポートの内容(25%)を総合的に考慮して、成績評価を行います。
その他(質問・相談方法等)
(1) 無断又は正当な理由のない欠席は一切認めません(約束が守れないときには、事前に連絡をとる、というのが一応の社会規範ですので)。

(2) このシラバスを読むこと自体を、物事を批判的に捉えるため練習にしてください。このゼミで自分のニーズに適う内容が提供されそうなのか、ここで記されている方法で自分が求める能力を身につけることができるか、自分でしっかり(批判的に)考えてみてください。

(3) 講義を担当する武内が「どのようなことをやっているのか」とか「どんなことができそうなのか」は、http://www.law.kyushu-u.ac.jp/~takeuchi/やhttp://hyoka.ofc.kyushu-u.ac.jp/search-cgi/faculty2_j.cgi?ID=K000143で公開されている情報を踏まえて、各自で(やはり批判的に)ご判断下さい。

(4) 何か不明な点、(授業方法・授業内容を含めて)批判すべき点があれば、何なりと、武内(takeuchi@law.kyushu-u.ac.jp)までどうぞ。
過去の授業評価アンケート