行政法2(行政救済論)

最終更新日:2017年8月21日

授業科目名
行政法2(行政救済論)
標準年次
3・4
講義題目
行政救済法
開講学期
前 期
担当教員
田中(孝 男)
単位数
4単位
教  室
中講
科目区分
展開科目
履修条件
特にありません。ただし、授業は、行政法1(行政過程論)について受講者が知っていることを前提に展開します。また、行政事件訴訟の的確な理解のためには、民事訴訟制度の知識が必要です。この講義では、2005年度前期「民事紛争処理入門」で使用した佐藤鉄男ほか『民事手続法入門〔第2版〕』(有斐閣、2005年3月)の知識があることを前提にし、講義をします。
授業の目的
この科目は、違法又は不当な行政活動によって(法的な)不利益を被った私人を法的に救済し、あるいは適法な行政活動により受けた不利益ではあるけれどそれを私人に一方的に負担させることが社会的な公平や公正の観点から見て著しく妥当性を欠くような場合にその私人の法的な不利益を救済することなどを内容とした行政法上の諸議論(行政救済法)の主な内容を学ぶものです(教員が採用する、より詳しい行政救済法論の意義や内容については、第1回講義でお示しします。)。
授業の概要・計画
第1回【オリエンテーション、行政救済法論の意義と体系】
第2回【立法手続・行政手続(事前手続)における行政救済@】
第3回【行政手続(事前手続)における行政救済A】
第4回【行政上の苦情処理・オンブズマン制度】
第5回【行政不服申立て@(行政不服審査法・前)】
第6回【行政不服申立てA(行政不服審査法・後)】
第7回【行政審判、行政とADR】
第8回【行政事件訴訟制度の歴史、行政事件訴訟の体系、抗告訴訟の本質、取消訴訟の本質・体系】
第9回【訴訟要件論@(被告適格、出訴期間、不服申立前置、訴えの利益の体系)】
第10回【訴訟要件論A(処分性)】
第11回【訴訟要件論B(原告適格)】
第12回【訴訟要件論C(訴えの利益〜狭義〜ほか)
第13回【本案審理@(体系・仮の救済−執行停止)】
第14回【本案審理A(審理の対象−違法性)】
第15回【本案審理B(審理手続@−訴えの併合と変更、訴訟参加)】
第16回【本案審理C(審理手続A−釈明処分の特則、文書提出命令、証明責任)】
第17回【訴えの終了等(取下げ、和解?、判決、上訴、訴訟費用の負担)】
第18回【無効等確認訴訟、不作為の違法確認訴訟】
第19回【義務付け訴訟、差止訴訟、無名抗告訴訟】
第20回【当事者訴訟、客観訴訟(機関訴訟、民衆訴訟特に住民訴訟論)】
第21回【裁判権の限界、民事訴訟手続による行政救済、行政事件訴訟法に載らない行政上の紛争の行政救済】
第22回【国家補償法総説・国家賠償法の歴史】
第23回【国家賠償法1条@】
第24回【国家賠償法1条A】
第25回【国家賠償法2条】
第26回【国家賠償法3条〜6条】
第27回【損失補償法@】
第28回【損失補償法Aその他の国家責任法】
上記の計画は、変更することがあります(上記は2006.4.14補正版)。なお、総回数28回でプログラムを組みますので、休み等で講義が行えないときもあることから、補講を組みます(第1回講義のときに配布する授業計画に補講日時を明記)。さらに、第1回のパワーポイント原稿が70枚程度となったことから、第1回講義の時間が大幅に足りないものと予想されます。そこで、4/14にさらに補講を組む予定です(第1回を4/11・13、第2回を4/14に講義)。
授業の進め方
講義形式です。パワーポイントを使用する予定ですが、記載する情報量との関係で、表示する文字が細かくなるため、後ろではなく、前の方に座席を確保することを推奨します。
 なお、個別の行政法令の解釈論(処分性の有無)などを展開するためには、該当条文だけではなく、その法令や関連法令の構造・規定内容を理解することが重要になります。講義は、下記教科書の理解を目標にして組み立てますが、このような点に配慮し、授業で特に重要な事件等に関する法令については、1講義回につき法令1件を目途に、「頭から読む」ことを、この講義の白眉にします(蛇足ですが法令は一本、二本と数えるのではなく、一件、二件と数えます)。つまり、個別法令の読み込みに授業の時間を一部割くため、公務員試験向け講座などでしばしば見られる判例・通達クイズ対策のような内容は時間的に展開が困難です。講義にそのような内容を期待されている方がいる場合、そのニーズには応えられない授業内容となります。
教科書・参考書等
<教科書> 宇賀克也『行政法概説U 行政救済法』有斐閣(2006年3月発行)。私も同時期に教科書を入手して読み込むため、言及にムラが生じるかもしれません。しかしながら、これからの行政法テキストということで、法科大学院等を念頭に置き、宇賀先生の本を指定しておきます。ただし、受講者の経済的な負担を考慮し、新三年生が、行政法1で使用したテキスト(原田尚彦『行政法要論(全訂第六版)』学陽書房、2005年)、平成17年度の行政法2で使用する予定だったテキスト(塩野宏『行政法U(第四版)』有斐閣、2005年)を利用したい方については、そちらを基本書とされても構いません。また、藤田宙靖『行政法T(行政法総論)(第四版)』青林書院、2005年を基本書として用いる方もいることを想定します(予習指定時に参照ページを案内)。さらに、授業計画から分かるように、私の考える行政救済法は行政法総論(特に行政手続)とシームレスな(継ぎ目がない)ものになっています。よって、行政法総論の教科書(大橋・原田・塩野T・宇賀概説Tなど)もしばらく必要になります。加えて、平成18年度春先には、行政救済法に関する魅惑的な基本書がさらに多数出版されるという情報もありますので、適宜、情報提供いたします。なお、本科目においては判例が重要となりますので、現時点では、ジュリスト『行政判例百選T・U(第四版)』有斐閣、2000年と大橋洋一ほか『行政法判例集』有斐閣、2004年をお持ちになっていることとして授業を進めることにします。ただし、判例百選については、改訂情報がありますし、最近、行政判例に変化が加えられつつあるという見方もできますので判例集購入を義務付けはいたしません。<法令> 行政法においては、市販の小六法クラスでは載っていない法令あるいは自治体の条例・規則(例規)が政策の立案実施において問題になります。小六法に載らない法令(政省令、自治立法等を含む)で、授業において必要になるものについては、事前に指定しますので、最新の法令・例規データから、法文をダウンロードしておいてください。
成績評価の方法・基準
定期試験(六法、ノート、資料等の持ち込みは一切「不可」)で評価します。定期試験を100点満点とします。穴埋め10題各2点、語句説明等5題30点−5点×4、10点×1−、事例・論述問題50点(小問2題の予定・・変更の可能性あり)で行う予定です。
定期試験は、本学法科大学院における行政法の既習認定レベルを「可」として、問題を設定します。これは、制度として、当然のことです。よって、定期試験問題の水準については、法科大学院のホームページの既習認定試験問題をみてください。ただ、わたしは条文にこだわる授業をしますので、試験問題の一部(5題)は条文で使用する言葉について穴埋めをします。
もっとも、三年生が本学法科大学院の同既習認定試験を受けるとしたならば、まだ一年以上準備期間があることになりますので、上記試験問題に関して調整することにも理由があると考えます。そこで、試験問題で調整をするのではなく、レポートの提出で加点をする仕組みを採用いたします。授業の中途で、ある専門論文ないし判例解説を指定し、その要約と関連文献の整理、自説の展開をまとめるレポートの作成を慫慂します(全5回。各4000字程度)。各レポートを10点満点とし、定期試験の結果に加点します(作成要領・採点基準・提出方法等は第1回講義のときにお示しします)。つまり最高で定期試験の得点のほかに50点が加算されるわけです(ただし、定期試験との合計の上限は100点)。レポート作成はオプショナルですので、受講者がご自分の他の履修科目への取組とのバランスを考慮しながら、関心のあるテーマについて書いていただければ、教員にも勉強になってありがたいと思います。レポートの作成期限はそのテーマについて授業をしたあとにお題をお示しし、その後、2週間前後にと、予定しています。行政不服審査(苦情処理・オンブズマンを含む)、取消訴訟の訴訟要件、取消訴訟の審理、取消訴訟以外の抗告訴訟・客観訴訟、国家補償制度から各一題ですので、授業計画の各講義回を参考にしながら、レポート提出期限を予測し、心積もりをしておいてください。
その他(質問・相談方法等)
<第1回講義において事前に入手しておくもの>
 第1回講義では、平成17年度に行われた司法試験プレテスト・論述式(公法系科目)の第二問(公立保育所の民営化を題材にしたもの)を用いて行政救済法学について考えますので、法務省のホームページや市販の文献などから、当該問題を印刷して手元におもちください。ただし、これは、本科目で法令を頭から読む時間を設ける意味などについて私が思うところを解説するためのものであり、プレテストの答案をどう書くのかといった解説をするわけではありません。
 また、第1回講義では、原田・要論311頁、塩野U1〜3頁、藤田T353〜358頁について話をします。
<開講前予習>
 行政法1・民事紛争処理入門(2005年度教科書『民事手続法入門〔第2版〕』の少なくとも第1編と第2編)の復習はしておいてください。高橋和之『立憲主義と日本国憲法』373頁以下の学習の手引きでは、教科書を最低3回読むこと、まず最初に分からなくても最後まで1回読みきるべきことを述べています。原田・要論であれば、3月中に1回は読めると思いますので、授業の批判的検証のためにも、全体を読んでおいていてください。また、教員が、ある研究会報告書に提出した行政救済に関する概観と展望をした5万字前後のレポート(A4、1頁2000字、25枚程度)を下記HPに公開します。PW付ですが、PWは、学部の学生係の法学部生向け掲示板に掲示します。第1回講義の際に、本教員のレポートを読まれたかどうか質しますので、多くの方が読むことを期待します(mustではありません)。
<授業時予復習> 授業の範囲をきちんと指定しているので、該当する教科書等のページは、予習してくださることを前提に講義をします。なお、本春には、木佐茂男・田中孝男編『自治体法務入門(第3版)』ぎょうせい、が改訂出版される予定です。新三年生がお持ちのはずの木佐編の同著・第二版とコンセプトはそう変わりませんが、教員がどのような視点、体系をもって授業を展開されているのかの参考にはなると思います。数ある入門書の中で同書「も」参照されることを期待します。
<Targetingの理由>本科目の目標について、直前期に展開された行政法1と乖離があるようにお感じになるかもしれません。なぜ、このような目標設定・授業計画立案をさせていただいたのかの考え方については、第1回講義のときにお示しいたします。
<その他の開講関係情報>わたしのホームページに適宜流しますので、注意してみておいてください。
http://www1.ocn.ne.jp/houmu-tt/tanaka/tanakatop.html
過去の授業評価アンケート