法的紛争処理過程は法廷でのみ行われるものではない。事務所での面談から、裁判外での交渉に至るまで、併行して、あるいは継時的に、訴訟過程に連動していくことになる。また、法的紛争処理過程を構成するスキルは、単に法的技能に限られるわけではない。その基礎として、適切なクライアントとのコミュニケーションの技法が活かされ、効果的な関係構築と情報収集がなされていなければならない。本授業は、アメリカのロースクールで行われている「ロイヤリング」「交渉論」「紛争処理論」などを参考に、学際的な視点から法的紛争処理過程への理論的、技法的理解を深めていこうとするものである。講義とディスカッション、および、スキル練習、ロール・プレイなどを交えて実習・参加型の授業とする。
1.紛争の構造と展開 クライアントが抱える紛争は、言うまでもなく法的側面のみでなく、社会的、関係的、情緒的次元をも含む複合的なものである。実務の現場で弁護士に要請されるのは、こうした紛争の構造を把握しながら、法的対応を創案していくことにある。その準備作業として、ここでは紛争の構造と展開について学際的な視点から理論的理解を深めていく。ビデオ教材を素材に検討する 2.弁護士関与のモデル クライアントのもつ複合的な紛争像に向き合いながら弁護士は、コミュニケーションを通じて情報を収集し信頼関係を構築していく。この際、弁護がクライアントと関わる仕方、ないし弁護士の役割について、異なるモデルを比較しつつ検討する。 3.弁護士面談のコミュニケーション理論 弁護士にとってとりわけ重要なクライアントとのコミュニケーションについて、心理学やカウンセリングの理論を参考にしながら理解を深める。またクライアントとの面談の構造についても検討する。(購入ペット相談ロール・プレイ) 4.弁護士面談のコミュニケーション技法 マイクロ・カウンセリングの技法を応用しつつ、弁護士コミュニケーションの基本的な技法について、事務所でのクライアントへの対応事例を素材にしつつ検討する。いくつかの技法についてスキルプレイを実施する。 5.弁護士面談のコミュニケーション技法:積極関与 信頼を構築し、情報を収集した後、弁護士はクライアントに積極的に助言し、指示しなければならない。この際、クライアントとの間で緊張関係が生じることもある。こうした積極的な助言・指示の技法について、具体的な事例を素材に検討する。いくつかのスキルプレイを実施する。 6.ロール・プレイ 相続事案ロール・プレイ 建物賃貸借ロール・プレイ 7.法交渉の基礎理論 相手方との交渉場面を念頭において、交渉についての理論的理解を深める。交渉理論の展開をフォローした上で、交渉の構造、その戦略的オプションなどについて、学際的な視点から理解を深める。紛争スタイル判定キット。 8.交渉の技法 前回の理解を前提に、具体的事例を素材として、交渉シミュレーションを行い、その構造と問題を体感的に検討する。Naranja・Tigreロールプレイ 9.Naranja・Tigre ロール・プレイ(交渉の基礎概念の把握) 10.取引き紛争ロール・プレイ(Winwin 交渉) 11.合意形成の技法 裁判外紛争処理の中でもメディエーション(含む調停・和解)に焦点を合わせ、様々なメディエーションモデルを比較検討する。また弁護士がADRにおいてメディエーターとしての役割を果たす可能性も考え、メディエーション固有の技法についてシミュレーションを行う。 12.ADR・ロール・プレイ1(瑕疵担保責任事件を予定) 13.ADR・ロール・プレイ2(離婚事件を予定) 14.総括とディスカッション ここまでの様々な場面でのリーガル・スキルについて総括し、その効用や問題点について、様々な角度からディスカッションを通じて検証を行う。
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