AがBに対して1000万円の支払請求権を有しているが、Bが弁済に応じない、という場合、AはBを民事訴訟で訴え、支払を命じる判決を獲得することができる。しかし、Aが勝訴判決を得ただけでは、Bがその判決に任意に従わない限り、権利の実現は叶わない。判決を真に意味のあるものにするためには、Bが判決に任意に従わない場合にも、Aの権利を強制的に実現する仕組が必要である。原則としてそれが、強制執行手続にあたる。 また、強制執行手続により、AがBに対する1000万円の支払請求権を強制的に実現することができるようになったとしても、強制執行手続に着手する段階でBが無資力であれば、Aの権利は、実現のしようがない。特に、Bが、強制執行を免れるために、自己の財産を他人に譲渡したり隠蔽したりする行為に出ることを、未然に防ぐ必要が生じる。こういった手当を施すのが、民事保全手続である。権利の強制的実現がスムーズに行われるよう、事前に地ならしをしておく役割を担っている。 こういった強制執行手続・民事執行手続を理解することにより、民法で規定されている権利義務関係が、実際にはどのように実現されていくのかを学んでいくのが、本講義の目的・概要である。 合わせて、担保権の実行手続についても学ぶ。
概略、以下の順序で、講義を行う。
・強制執行手続 (総論) (金銭執行) (非金銭執行) ・担保権の実行手続 ・民事保全手続
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