●法政基礎演習2

最終更新日:2017年8月21日

授業科目名
●法政基礎演習2
標準年次
2
講義題目
雇用法制の規制緩和の議論を検討する−法学と経済学の視点
開講学期
前 期
担当教員
畑井(清隆)  
単位数
2単位
教  室
3会
科目区分
入門科目
履修条件
 履修条件は特にありません。多くのみなさんが、近い将来、会社員・公務員等として働き始めることと思います。労働法に関心のある方を歓迎します。
授業の目的
 パート労働者と正社員との処遇格差の是正、募集採用における年齢差別の禁止、最低賃金の引上げなどが議論される一方で、ホワイトカラー・エグゼンプション(管理的労働者および裁量的労働者等についての労働時間規制の一部適用除外)の実施が要求され、また、企業の競争力や経済効率を向上させるために解雇規制の緩和が議論されています。規制緩和が望ましいとする経済学研究者からは、解雇規制のために、新規採用が抑制されて、若年層や失業者の雇用機会が減少している、と主張されています。いま、再チャレンジ可能な公正な社会を構築していくために必要な労働法のあり方に注目が集まっています。本演習では、解雇規制を中心に雇用法制の規制緩和をめぐる議論について検討を行います。
 本演習の目的は、@解雇権濫用法理、労働条件変更法理、および両者の関係について理解すること、A解雇規制が雇用量を減少させるメカニズム等の労働市場について理解すること、B解雇規制を緩和あるいは撤廃すべきであるとの法学研究者・経済学研究者の主張、および解雇規制は合理的な面あるいは効率的な面があるとの法学研究者・経済学研究者の主張について理解すること、ならびにCレジュメ・レポートの作成・報告・議論の方法といったプレゼンテーションの技術を習得すること、です。
授業の概要・計画
第1回:教員と参加者の自己紹介の後、ゼミの進め方、レジュメの作成方法、文献検索の方法、議論の方法などについて説明します。そして、参加者の希望等に基づいて、担当する章を調整し、決定します。各回、教科書の1つの章について検討していく計画です。
第2回−第3回:解雇規制、解雇権濫用法理
 @山川隆一「日本の解雇法制−歴史・比較法・現代的課題」
 A藤原稔弘「整理解雇法理の再検討−整理解雇の「4要件」の見直しを通じて」
第4回−第5回:法学と経済学の視点
 B八田達夫「効率化原則と既得権保護原則」
 C安藤至大「労働市場における不確実性と情報の非対称性」
第6回−第7回:規制緩和
 D福井秀夫「解雇規制が助長する格差社会」
 E和田一郎「解雇判例・就業規則不利益変更判例の実態等と労働契約法制のあり方」
第8回−第9回:規制維持
 F中馬宏之「『解雇権濫用法理』の経済分析−雇用契約理論の視点から」
 G土田道夫「解雇権濫用法理の正当性−「解雇には合理的理由が必要」に合理的理由はあるか?」
第10回−第12回:規制改革の方向性
 H内田貴「解雇をめぐる法と政策−解雇法制の正当性」
 I大内伸哉「解雇法制の“pro veritate”(2004)」
 J八代尚宏「「労働契約法」と労働時間法制の規制改革」
第13回:ゼミの総括およびレポート作成のための方向付けとして、各参加者は、報告した分野について整理した論点・問題点・疑問点、それらに対する各自の意見およびレポートの構想を発表します。それに対して、参加者および教員が、質問をし、意見を述べます。これらの意見等を参考にして、各参加者は、レポートを作成し、提出します。
授業の進め方
@報告担当者が、担当部分について、レジュメを作成し、報告します。担当者は、担当部分の概要・論点・疑問点・各自の意見を報告します。
A予め指名された2名のコメンテーターは、報告者の報告について、コメントを述べます。
B参加者全員で、提示された論点・疑問点等について議論し、理解を深めます。参加者は、その回に読む部分について十分に予習しておく必要があります。
C報告者は、他の参加者や教員からの質問や意見等を参考にして、レポートを作成し、提出することになります。
 なお、希望により、報告担当者とゼミ担当教員が事前の打合せを行います。論文等についてなにか分からない点があれば質問を受け付けます。
教科書・参考書等
教科書
・三輪芳朗・神田秀樹・柳川範之編著『会社法の経済学』(東京大学出版会、1998年11月)
・大竹文雄・大内伸哉・山川隆一編著『解雇法制を考える−法学と経済学の視点(増補版)』(勁草書房、2004年5月)
・福井秀夫・大竹文雄編著『脱格差社会と雇用法制 法と経済学で考える』(日本評論社、2006年12月)

参考書
・中野麻美『労働ダンピング−雇用の多様化の果てに』(岩波新書、2006年10月)
・菅野和夫・西谷敏・荒木尚志編『労働判例百選(第7版)』(有斐閣、2002年11月)
・角田邦重・毛塚勝利・浅倉むつ子編『労働法の争点(第3版)』(有斐閣、2004年12月)
・東京大学労働法研究会編『注釈労働基準法・上下巻』(有斐閣、2003年3月・9月)
・菅野和夫『労働法(第7版)』(弘文堂、2005年4月)
・中窪裕也・野田進・和田肇『労働法の世界(第7版)』(有斐閣、2007年4月)
・大竹文雄『労働経済学入門』(日経文庫、1998年4月)
成績評価の方法・基準
試験は行わず、出席・予習状況、報告、議論への参加状況、およびレポート等により総合的に評価します。
その他(質問・相談方法等)
質問は、随時受け付けます。まず、e−mailで連絡してください。
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