●法政基礎演習2

最終更新日:2017年8月21日

授業科目名
●法政基礎演習2
標準年次
2
講義題目
日本国憲法の統治構造−現代議会政の諸問題―
開講学期
前 期
担当教員
村西(良太)  
単位数
2単位
教  室
大会
科目区分
入門科目
履修条件
・独学ではやや難解と思われる書物(論文や教科書)であっても、まずは自分の力で読んでみようという意欲のある方。
・現時点での能力如何ではなく、ゼミに主体的に参加しようという熱意を求めます。憲法(とりわけ統治機構論)に関心はあるのに、勉強方法が分からないと悩んでいる方の参加を歓迎します。
授業の目的
 本演習を通じて体得してほしい技術・能力は、おおむね次の三つです。一つ目は、論文を精読する力です。書かれている内容を大づかみに把握するのではなく、一つひとつの表現にも細心の注意を払って、批判的に読む訓練を積んでもらいたい。二つ目は、自己の見解を説得的に論じる力です。ありうる批判を想定しつつ、自分の考えを文章化する知的営みを体験してもらいたい。三つ目は、議論する力です。ゼミでの討論に積極的に参加することで、質問する力、これに応答する力を涵養してもらいたい。いずれも言うは易く行うは難いものばかりですが、三年次以降のゼミできっと要求されるこれらの能力を、今のうちに少しでも身につけていただければと願っています。
授業の概要・計画
 世紀の変わり目にいちおうの実現をみた統治構造の改革は、それまでの国会と内閣との関係に大きな変化をもたらしました。たとえば「小泉政治」を彩った首相の強力なリーダーシップは、小泉氏その人の個性に負う面が小さくなかったとはいえ、上記改革の成果というべき側面を有していました。
 この改革は、有力な憲法学者がその牽引役となったことからも分かるように、憲法学、なかでも「統治機構論」と呼ばれる分野と深く関わっています。それだけに、国会や内閣をめぐる憲法学の議論は従来に増して活発となり、そうした傾向は現在なお継続しているということができます。
 また、2005年8月におこなわれたいわゆる「郵政解散」、2002年にまとめられた「首相公選制を考える懇談会」報告書など、「小泉政治」は「議院内閣制」のあり方について実に多くの論点をわれわれに提示してくれました。
 本演習では、以上のような現実政治の動向を素材としながら、国会と内閣のあるべき権限関係を憲法学の視角から問い直します。具体的には、次のようなテーマを取り上げたいと考えています。
・ 議院内閣制と呼ばれる統治構造の歴史・特質・運用
・ 法律案提出権と憲法41条
・ 内閣の衆議院解散権
・ 首相公選制導入の是非
・ 選挙制度と政党のあり方
・「全国民の代表」たる議員の地位
・「立法」「行政」の観念の再検討
 これ以外にも参加者の希望があれば、柔軟に対処するつもりです。初回の演習において具体的な日程を相談しますので、そのときまでに勉強してみたいテーマを各自考えておいてください。
授業の進め方
・初回は担当教員も含めて自己紹介をした後、演習で取り上げるテーマや各回の報告担当者を決めます。
・第二回は、本演習での報告や討論にぜひとも必要と思われる統治機構論の知識を確認します。そのための資料については、担当教員が準備します。
・第三回以降は、報告(30分)と質疑・討論を軸に進めます。報告担当者はレジュメを作成し、これに基づいて報告します。報告者はレジュメ作成にあたって、教科書類だけでなく、当該テーマに関する論文の渉猟に努めてください。
・各テーマにつき一つ、有益と思われる論文を担当教員が紹介します。報告者以外の参加者も、基本書の該当部分とこの論文をかならず読んで出席してください。もちろんすべてを理解する必要はありません。むしろ理解できない部分をチェックして、積極的に質問してください。
教科書・参考書等
 基本書として、芦部信喜・高橋和之補訂『憲法〔第四版〕』(岩波書店・2007年3月刊行予定)。
 首相の指導力強化を支える制度的要因を概観するには、竹中治堅『首相支配−日本政治の変貌』(中公新書・2006年)〔¥882〕が有益。
 その他に、ゼミでいくつかの論文を取り上げる予定ですが、これについては追って紹介します。

 基本書はかならず購入してください。
成績評価の方法・基準
 試験はありません。平素のゼミに対する姿勢により評価します。加えて、本演習の最後にレポートを書いていただくことを検討しています。無断欠席は認められません。
その他(質問・相談方法等)
 質問は随時受け付けます。内容に関する疑問はもちろん、レジュメ作成の方法、文献探索の仕方など、分からないことがあれば遠慮なく尋ねてください。メールでの質問は、m-ryota【アットマーク】law.kyushu-u.ac.jp へどうぞ。
 上述のように、本演習は「楽なゼミ」ではありませんが、かといって過度に緊張する必要のない、明るい雰囲気づくりに努めたいと思います。
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