●コアセミナー(法政基礎演習1)

最終更新日:2017年8月21日

授業科目名
●コアセミナー(法政基礎演習1)
標準年次
1
講義題目
“The Economist”を読む
開講学期
前 期
担当教員
小島 立
単位数
2単位
教  室
106
科目区分
基幹教育科目
履修条件
 積極性溢れる受講者の参加を希望します。
授業の目的
 (コアセミナー(法政基礎演習1)の共通目標)
 大学時代の4年間は人生の中で最も能力が伸びていく時期の1つです。そのために是非とも必要なのが,入学直後の現段階で法学・政治学の勉強の仕方を身につけておくことです。このコアセミナー(法政基礎演習1)は,少人数でのゼミ形式を通じて,具体的には以下の4点に渡る勉強の「フォーム」を体得することを目的としています。
 (1)情報の集め方について学ぶこと(リサーチ能力)
 法学・政治学に関する先端的な問題には唯一の正解はありません。その中でバランスの取れた解答を作り出すためには,幅広く情報を集めておく必要があります。図書館の使い方,文献の集め方,パソコンの使い方など,情報収集の方法を早く身につけておくことが,学習の第一歩です。
 (2)情報の分析の仕方について学ぶこと(分析能力)
 法学・政治学に関する著書・論文は,これまでに経験した活字と比べても難解に思われるかもしれません。これらを読み解くには基礎的な知識に加え,回数を重ねることで得られる「慣れ」もある程度必要です。こうした作業について,皆さんよりも長く経験している教員からのアドバイスを得ることで,早い段階で情報の分析に慣れることを目指します。
 (3)議論の方法について学ぶこと(ディスカッション・プレゼンテーション能力)
 大学における法学・政治学の学習は,既にできあがっている知識を単に覚えるだけでは不十分です。新しい問題に対応する「新しい知識」を自らの手で生み出す必要があります。そのために最適なのが,少人数で集まって議論をすることです。報告者によるプレゼンテーションの方法,司会者による議論の誘導の方法を体得することを目指します。
 (4)自分の意見を説得的に文章にまとめる技術について学ぶこと(レポート・論文作成能力)
 法学・政治学の学習では,最終的に自分の意見を説得的にまとめ,ある程度のまとまった長さの文章にして示すことが求められます。論理的な文章を書く力は,大学における定期試験やレポート・論文を乗り切るためだけではなく,社会に出てから活躍する上での基礎力ともなります。この技術の涵養を図ります。
 
 (本演習の目標)
 学生時代に取り組むべき重要な課題の1つとして,英語を含めた外国語の学習が挙げられます。しかし,そもそも論として,なぜ外国語の学習が重要なのでしょうか?
 本演習では,上質な英語素材である“The Economist”の講読を通じ,ただ単に英語能力を高めるのみならず,参加者の皆さんと一緒に,以下の点について,意識的に考える機会を持てればと考えています。第1に,英語に限らず,私たちが外国語を学ぶ意義はどこにあるのか,ということ,第2に,私たちが外国語を学習する際の「心構え」はいかにあるべきなのか,ということです。以上の問題意識については,“The Economist”の講読に先立ち,最初の数回の授業を通じて参加者で議論を深めたいと考えています。
 また,本演習は,法学・政治学への入り口としての位置付けにあることから,ただ漫然と英語雑誌を読むのではなく,受講者の皆さんが今後,法学部において法学・政治学を学ぶ上での「心構え」を養うことができるよう,意を払いたいと思います(ちなみに,授業担当者は,外国語を学ぶという作業と,法学・政治学を学ぶという作業には,通底するものがあると考えています)。
授業の概要・計画
 “The Economist”の中から,社会科学(法学,政治学,経済学など)や,外から見た日本の姿に関する内容を中心に講読を行ない,講読の内容を踏まえ,予め指定された担当者に,講読内容に関連する報告をしていただきます。それに引き続き,全員でディスカッションを進めたいと考えています。
授業の進め方
 (授業のスケジュール):
 初回の授業において,本演習の狙いや演習の進め方について説明し,以後数回を使って,外国語を学ぶ意義やその際の「心構え」について,参加者で一緒に議論したいと思います。また,報告の仕方(資料調査,報告原稿の書き方,プレゼンテーションのやり方など)についても触れる予定です。
 その後,“The Economist”の講読に入り,それに引き続いて,翌週に報告(プレゼンテーション)と議論(ディスカッション)を行なうという手順で臨みたいと思っています。報告と議論の回には,持ち回りで司会者を決め,報告や議論の誘導を行なっていただきます。
 講読と報告・議論のスケジュールに関しては,参加者の人数により,変更もあり得ます(例えば,参加者が多い場合には,講読と報告・議論を同一の週に行なう可能性もあります)。
 
 (教科書の使い方)
 教科書指定した3冊を参照しますので,開講前に入手して下さい。事前に読むべき内容を指定しますので,必ず予習を行なうようにして下さい。

 (授業の進め方)
 “The Economist”を講読するに当たっては,全訳を求めることはありませんが,文章のまとまり(意味の固まり)を自分で把握し,その要約を行なって下さい。これまでの経験上,学生の皆さんは,個々の短熟語の意味を辞書で調べることに意を用いすぎ,一定の長さの文章が固まりとして何を言っているのかを把握することが苦手であるような気がします。そのような「木を見て森を見ない」状況に陥らないように気をつけながら予習を行なっていただきたいと思います。加えて,文法や内容に関する説明を求めることもありますので,参加者全員が,事前に十分な準備を行なうことが求められます。
 報告・議論を行なう際には,報告者は,参考文献や新聞・雑誌資料等を調査し,報告資料を作成した上で,定められた時間内で報告を行なうことが求められます。
 報告・議論の司会者は,どのように誘導すればディスカッションが盛り上がるのか(実り多いものとなるのか)ということに常に意を用いる必要があります。全体の内容を適切に把握する必要性があるということから,ある意味では報告よりも難しい作業かもしれませんが,是非とも積極的にチャレンジしていただきたいと思います。
 報告や司会に当たっていない参加者も,授業中に必ず1回は発言し,積極的に議論に参加して欲しいと思います(もっとも,1回発言すれば十分という趣旨ではありませんので,悪しからずご了解下さい)。
教科書・参考書等
教科書(必ず購入して下さい)
斎藤兆史『英語達人列伝――あっぱれ,日本人の英語』(中公新書,2000年)
澤田昭夫『論文の書き方』(講談社学術文庫,1977年)
清水幾太郎『論文の書き方』(岩波新書,1959年)

 『英語達人列伝』のほかに,外国語を学ぶ意義や,その際の「心構え」について考えさせられる書物として,以下のものがあります。
斎藤兆史『英語達人塾――極めるための独習法指南』(中公新書,2003年)
斎藤兆史『日本人に一番合った英語学習法――「先人に学ぶ400年の知恵」』(祥伝社,2003年)
斎藤兆史=野崎歓『英語のたくらみ・フランス語のたわむれ』(東京大学出版会,2004年)
齋藤孝=斎藤兆史『日本語力と英語力』(中公新書ラクレ,2004年)
鈴木孝夫『なぜ日本人は英語ができないか』(岩波新書,1999年)
山田雄一郎『日本の英語教育』(岩波新書,2005年)
山田雄一郎『英語教育はなぜ間違うのか』(ちくま新書,2005年)
太田雄三『英語と日本人』(講談社学術文庫,1995年)
中公新書ラクレ編集部=鈴木義里編『論争・英語が公用語になる日』(中公新書ラクレ,2002年)
茂木弘道『文科省が英語を壊す』(中公新書ラクレ,2004年)
米原万里『不実な美女か貞淑な醜女か』(新潮文庫,1998年)
浦出善文『英語屋さん』(集英社新書,2000年)
キム・ジョンキュー『知的な大人の勉強法――英語を制する「ライティング」』(講談社現代新書,2006年)
市川力『英語を子どもに教えるな』(中公新書ラクレ,2004年)
市川力『「教えない」英語教育』(中公新書ラクレ,2005年)
和田秀樹『「英語脳」の作り方』(中公新書ラクレ,2003年)
薬師院仁志『英語を学べばバカになる――グローバル思考という妄想』(光文社新書,2005年)
柴田元幸『翻訳教室』(新書館,2006年)

 論文(レポート)の書き方,プレゼンテーションの仕方,ディベートや交渉術に関しては,以下の書物も適宜参照して下さい。
澤田昭夫『論文のレトリック――わかりやすいまとめ方――』(講談社学術文庫,1983年)
木下是雄『理科系の作文技術』(中公新書,1981年)
ハワード・S・ベッカー=パメラ・リチャーズ(佐野敏行訳)『論文の技法』(講談社学術文庫,1996年)
本多勝一『日本語の作文技術』(朝日文庫,1982年)
外山滋比古『日本の文章』(講談社学術文庫,1984年)
小野田博一『論理的に話す方法』(日本実業出版社,1996年)
松本茂『頭を鍛えるディベート入門』(講談社ブルーバックス,1996年)
望月和彦『ディベートのすすめ』(有斐閣選書,2003年)
ロジャー・フィッシャー=ウィリアム・ユーリー(金山宣夫=浅井和子訳)『ハーバード流交渉術』(三笠書房,1989年)
高杉尚孝『論理的思考と交渉のスキル』(光文社新書,2003年)
成績評価の方法・基準
 期末試験は行ないません。成績評価は,平常点(出席状況,報告内容,議論への参加態度等),学期末に提出していただく,5,000字以上のレポートによります。
 なお,無断欠席や正当な理由の伴わない欠席は,厳しく減点の対象と致します(止むを得ず欠席する場合には,必ず事前に授業担当者まで連絡して下さい)。
 また,レポートを作成する場合には,「引用」の作法を守った上で,執筆を行なって下さい(具体的な手順に関しては,授業中に説明を致します)。この作法が守られていないレポートも,減点の対象となります。
その他(質問・相談方法等)
 講読の対象とする“The Economist”は,非常に洗練された内容を誇るハイレヴェルの英語雑誌であり,これを辞書なしでスラスラと読めるようであれば,少なくとも英語に関しては,どこに出ても恥ずかしくない「達人」の域に,かなり近いであろうと思われます(付言すれば,英語を高度なレヴェルに引き上げることは,フランス語やドイツ語などの西洋言語を学習する際にも,必ずプラスに作用すると考えます)。
 そのような「本物」の素材に真っ向勝負を挑むという本演習の趣旨を理解した上で,参加者の積極的な学習を望む次第です。参加を希望される方は,必ず事前に図書館等で“The Economist”を手に取り,その内容のレヴェルを確認した上で,参加するか否かを決めて下さい。
 本演習の内容に関して不明な点があれば,小島(電子メールのアドレスは,kojima[アットマーク]law.kyushu-u.ac.jp)までお尋ね下さい。
過去の授業評価アンケート  2006年度前期