労働法演習

最終更新日:2017年8月21日

授業科目名
労働法演習
標準年次
3・4
講義題目
労働紛争事例研究
開講学期
通 年
担当教員
山下 昇
単位数
4単位
教  室
304
科目区分
展開科目
履修条件
 絶対条件ではありませんが、前期に開講される労働法の講義を履修することが望ましいのはいうまでもありません。本演習は理論的というよりも、実務的・具体的内容の勉強が中心になりますので、労働法の基礎知識を身につけておくことにより、深い理解や活発な議論ができると思います。
授業の目的
 例えば、「就職活動して採用内定をもらったが、3月になって採用内定取り消しの通知が届いた」、「上司からの食事の誘いを断ったら翌日から会社でいじめを受けた」、「残業命令を拒否したら、懲戒処分を受けた」、「共働きで子育てが大変なのに、単身赴任の配転命令が出た」など、今後、学生の皆さんが直面する労働法上の問題は数多くあります。就職活動を控えた学生の皆さんにとって、上手に社会人としての就労生活を送るための知恵を身につけることは大変有意義です(不可欠です)。知らなきゃ損をするのは労働者(あなた)です。
 そこで、本演習は、教材『職場のトラブル解決の手引き』とそこで紹介されているたくさんの裁判例の検討を通じて、正確な法技術を理解すると同時に、判例に対する批判的な視点や異なる理論展開を探求する姿勢を養うことを目的とします。労働紛争解決のプロを目指そう。
授業の概要・計画
 取り扱う労働紛争の類型は様々ですが、テーマと具体的内容の例をいくつか挙げておきます。

(1)労働者とは誰か?
・NHKの料金徴集員は労働者か(NHK西東京営業センター事件・東京高判平15・8・27)
・クラブのホステスは労働者か(クラブ「イシカワ」事件・大阪地判平17・8・26)
・大学病院の研修医は労働者か(関西医科大学事件・最2小判平17・6・3)
・プロ野球選手は労働者か(日本プロ野球組織事件・東京高決平16・9・8)

(2)労働時間とは何か?
・制服への着替え、朝礼への参加は労働時間か(ビル代行事件・東京高判平17・7・20)
・飲食店での客待ちの時間は労働時間か(すし処「杉」事件・大阪地判昭56・3・24)
・ビル管理の深夜の仮眠時間は労働時間か(大星ビル管理事件・最1小判平14・2・28)
・年収5000万円の労働者に時間外手当は必要か(モルガン・スタンレー事件・東京地平判17・10・19)

(3)使用者の業務命令は絶対か
・時間外労働を拒否できるか(日立製作所武蔵事件・最1小判平3・11・28)
・病気の子供がいるのに単身赴任しなければならないか(日本レストランシステム事件・大阪高判平17・1・25、明治図書出版事件・東京地判平14・12・27)
・草むしりの業務命令は適法か(神奈川中央交通バス事件・横浜地判平11・9・21)
・過労死や過労自殺につながる業務命令の責任は(電通事件・最2小判平12・3・24)

(4)セクハラとは何か
・宴会での飲酒や二次会への参加の強要はセクハラか(東京セクハラ(A協同組合)事件・東京地判平10・10・26)
・社長との混浴の強制はセクハラか(バイオテック事件・東京地判平11・4・2)
・密室のセクハラはどのようにして証明するか(横浜セクハラ事件・東京高判平9・11・20)
・女性上司から男性部下へのセクハラは違法か(日本郵政公社事件・大阪地判平16・9・3)
・職場外・勤務時間外のセクハラ行為について会社は責任を負うか(東京セクハラ(航空派遣社員)事件・東京地判平15・8・26)
・セクハラ社員を普通解雇できるか(ファイザー製薬事件・東京地判平12・8・29)
・セクハラ社員を懲戒解雇できるか(日本HPセクハラ解雇事件・東京地判平17・1・31)

(5)こんな解雇理由は認められるか
・痴漢で逮捕されたことを理由に解雇できるか(小田急電鉄事件・東京高判平15・12・11)
・職場のパソコンから出会い系サイトに頻繁にアクセスしたことを理由に解雇できるか(K工業技術専門学校事件・福岡高判平17・9・14)
・婚外子の出産を理由に解雇できるか(大阪女学院事件・大阪地決昭56・2・13)
・茶髪を理由に解雇できるか(株式会社東谷山家事件・福岡地小倉支決平9・12・25)
授業の進め方
 本演習では、みっちりと、個別労働紛争に関する裁判例の動向と現状についての知識を習得してもらうために、テキストに沿って採用内定、賃金、労働時間、人事異動、就業規則の変更、解雇、セクハラ・男女差別などのテーマをゼミの参加者がそれぞれ分担し、関連する裁判例(事実の概要と判旨)を3つ程度まとめ、判例の傾向や学説の動向などについて検討したものを報告し、議論をします。
 報告が当たっていない方についても、毎回、教材に目を通し、各個人の意見を持って出席していただきたいと思います(報告に対して必ず質問してください)。
 事実の整理→争点の把握→紛争の解決(法的判断)という理論的構成を理解することが基本であり、その上で、議論を行います。
教科書・参考書等
 テキスト:野川忍監修『職場のトラブル解決の手引き』(労働政策研究・研修機構)
参考書:菅野和夫ほか編『労働判例百選(第7版)』(有斐閣)
成績評価の方法・基準
 出席状況、報告(レポート)内容、討論参加状況等によって、総合的に評価します。演習での学習は毎回出席することが前提となりますので、出席状況は特に重視します。毎回、報告担当者がゼミ参加者に担当テーマを講義するつもりで、しっかり準備してください。
その他(質問・相談方法等)
 
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