履修条件 |
行政法T(行政過程論)を受講していること(単位取得の有無は問いません)。
この演習と並行して,前期に開講される行政法U(行政救済論)(原田大樹・担当)を履修することが望ましい。 |
授業の目的 |
法学部卒業生が社会から求められている資質・能力には様々なものがあります。法律についての専門的知識は当然必要ですが,問題を発見する能力,解答のない問題に対して解決の筋道を立てる能力,あるいは,様々な立場が社会には存在することを踏まえ,コンセンサス形成に向けた調整と説得を行う能力なども重要です。さらに,こうした過程の中で必須と言えるのが,自分の考えていることを論理的に,口頭または文章で,わかりやすく相手に伝える能力です。これらは,法律専門職・民間企業・公務員・研究職など将来どのような進路を選択するにしても不可欠な資質・能力です。 こうした諸能力を高めていくためには,演習(ゼミ学習)という勉強方法が最適です。講義形式の授業とは異なり,ゼミ学習では主人公はひとりひとりのゼミ生です。テーマを決め,情報を収集し,分析し,理解し,聞き手に親切な形でプレゼンテーションするというプロセスは,知識の創造にとって欠かすことのできないものです。つまり,ゼミ学習は単に知識を増やすことを目的とするのではなく,新しい問題に対して自分なりの解答を出すための「技術」を身につけることを重視しています。情報社会といわれる現代にあって,大量の情報に流されず物事の本質を見抜く力,情報を自分の頭の中で加工して自分の見解を自分の言葉で表現できる能力を高め,真の「大学生」となることが,この授業の目的です。 |
授業の概要・計画 |
<前期> 行政法を真に身につける上では,個別法分野(参照領域)の法的なしくみを学ぶことが最も有効な方法であり,とりわけ社会保障法には行政法の理論的課題を具体的に考えるための議論素材が豊富です。また逆に,社会保障法を学習し,あるべき社会保障制度を検討する上で行政法の知識は必要不可欠です。 そこで前期は,社会保障法をめぐる現代的なテーマを選択し,ゼミ生による研究報告と質疑・討論を通して,社会保障法・行政法の理解を深め,問題の所在と今後の制度設計のあり方を検討します。ガイダンス・行政過程論の復習の後,社会保障法・行政救済論の基本的な構造について簡単なガイダンスをします。またグループごとの報告では可能な限り4年生を各グループに配置することとします。 グループ報告のテーマ候補は以下の通りです。
(各論的なテーマ) ・医療保障の給付範囲とその決定方法 ・高齢者医療制度改革 ・年金水準の決定 ・社会保険庁改革 ・福祉サービス契約 ・保育所入所をめぐる法的問題 ・生活保護改革 (総論的なテーマ) ・社会保険の保険者・被保険者 ・社会保障の財源 ・国際化と社会保障
<後期> 後期は,例年通りゼミ論文を執筆します(過去にどんなテーマが取り上げられているかは,大橋・原田ゼミのホームページで確認できます)。自分の興味・関心に応じてさまざまな情報ソースの中から調査をし,自分なりの解決策をまとめていく過程で,この授業の目的である諸能力の涵養を図っていきたいと思います。 |
授業の進め方 |
参加者がゼミ報告を分担して行い,それを素材にゼミ生全員で議論します。前期はグループごとの報告,後期は個人での報告を予定しています。 |
教科書・参考書等 |
前期のテーマに関連する基本書として,例えば,
西村健一郎『社会保障法』(有斐閣・2003年) 加藤智章他『社会保障法[第3版]』(有斐閣・2007年)
などがあります。この他の文献については,初回ゼミで詳しく説明します。 |
成績評価の方法・基準 |
ゼミ報告と,年度末に作成するゼミ論集に寄稿する論文により評価します。無断欠席した場合には,以降のゼミ出席は認めず,単位認定しません。 |
その他(質問・相談方法等) |
このゼミは3名の教員による共同開講で,前期は笠木准教授と原田が,後期は村上裕章教授(2008年4月1日着任予定)が担当します。各教員の異なった視点からの見解に触れることにより,多面的なものの見方・考え方を体感することができると思います。なお,ゼミ参加者の決定やゼミの運営は主として原田が行います。
大学時代の4年間は人生の中で最も能力が伸びていく時期の一つです。本演習の要求水準は高いかも知れませんが,意欲溢れる方々の参加をお待ちしています。(文責:原田大樹) |
過去の授業評価アンケート |
|