●法政基礎演習 II

最終更新日:2017年8月21日

授業科目名
●法政基礎演習 II
標準年次
2
講義題目
「私」の政治学
開講学期
前 期
担当教員
出水 薫
単位数
2単位
教  室
4研
科目区分
入門科目
履修条件
「条件」はありません。ただ下記の方々に向いているかもしれません。

(1)「私」について考えてみたい方。

(2)「難しい」本を読み通してみたい方。

(3)考えることを、あきらめない方。

※法学部に入ったのは間違いだったかもしれないと思っている方、・・・歓迎します(笑)。
授業の目的
1.このゼミのテーマは「私」です。

この四半世紀、この社会では「自己責任」が強調されてきました。
自立的・自律的個人を基礎に、あらゆることを組み立てようとする傾向です。

ただ起点とされる「私(自己)」については、自明のものであるかのように扱われがちです。

所有の主体、責任の主体としての「私」とは、果たして自明のものであり、争いなく共通の理解をもてるようなものでしょうか?


2.以上の問題設定を踏まえた上で、さらにこの演習では下記のような「技術」的な目的も設定しています。

(1)やや難解な本を読み通す読解力を鍛えること。

(2)抽象度の高い論理を踏まえて討議する力を鍛えること。

(3)「私」を考える体験を通じて、法学や政治学に局限されない社会科学全体へのまなざしをもってもらうこと。
授業の概要・計画
私が担当する演習の多くは、相対的に多くのテキストを一定の速度で読み進めるやり方をとっています。

ただ、この演習では、表面的にはとっつきにくく見え、それなりに分量のある二冊のテキストを、じっくりと、それぞれ2回通読するというやり方をとります。

具体的には、それぞれのテキストを、まず3回かけて通読し、その後、2回かけて再読します。
授業の進め方
1.以下のような手順で毎回進めます。

(1)報告者がテキストの担当部分について資料(レジュメ)を用意し、内容を要約します。また理解しにくい点や、全員で意味を確認したい点を指摘します。

(2)コメント担当者が報告に関して質問などをおこないます。

(3)全員で議論します。

2.参加者はテキストを1冊読むごとに、テキストの要約と感想を2000〜3000字のレポートとして提出してもらいます。また再読の前に、全員の要約・感想文を材料に、それぞれ一回をかけて討議します。

3.このゼミには、昨年度のこのゼミの参加者(3年生)がティーチング・アシスタントとして加わって助言をしてくれたり、みなさんの相談にのってくれます。
教科書・参考書等
○野矢茂樹『哲学航海日誌』春秋社

著者は東大の哲学の教員で、ウィトゲンシュタイン研究の第一人者です。
きちんと筋道の通った言葉遣いで、理解が難しいはずのことを、分かりやすく語ってくれます。
「私」のみならず「心」「言葉」「他者」「規範」など、法学部で勉強していく上で、一度は真剣に向き合っておくべき概念についても、刺激を与えてくれるでしょう。


○立岩真也『私的所有論』勁草書房

著者は立命館大学の社会学の教員で、生命倫理、生殖医療、障害者運動などを研究しています。
独特の文体でとっつきにくく見えますが、きちんと辿っていけば、とても「遠い」ところまで、私たちを連れて行ってくれます。
「所有」を入口に、「私」観を、かなり変えてくれるはずです。
成績評価の方法・基準
以下の基準で100点満点で採点します。「相対基準」は採用しません。60点以上に単位を認定します。

(1)出席:15%
(2)報告回数と内容:25%
(3)議論での発言回数と内容:25%
(4)レポート:35%
その他(質問・相談方法等)
1.メーリングリストにより、連絡や情報交換をおこないますから、メールアドレスを準備してください。ただし長文や添付ファイルがあるので、携帯電話のメールではダメです。

2.質問はゼミのたびに受けつけます。またメールなどで予約をとった上で個別面談にも応じます。詳しくはガイダンスでお知らせします。

3.私が担当の3・4年生ゼミとも積極的に交流の機会を設けたいと思います。

4.08年度は、毎月1回ゼミの時間とは別に、福岡の若手弁護士と憲法を考えるため、労働事件、少年事件、薬害、残留孤児訴訟など、具体的な裁判を素材に討議する勉強会をおこないます。
希望者はそれにも参加できます。
過去の授業評価アンケート  2007年度前期