●法政基礎演習 II

最終更新日:2017年8月21日

授業科目名
●法政基礎演習 II
標準年次
2
講義題目
日本近代における身体・医療・国家
開講学期
前 期
担当教員
柴尾 健一  
単位数
2単位
教  室
2研
科目区分
入門科目
履修条件
戦前期の国家が国民一人ひとりの身体をどのようにみていたのか、このことに関心がある方。
授業の目的
授業の目的は、下記の3点にあります。
(1)学術論文で使用する引用(参考)文献の効果的な使い方を学びます。
(2)学術論文における論証のあり方を学びます。
(3)身体の検証作業を通し、医学的身体とは異なる「社会的身体」に対する理解を深めます。
授業の概要・計画
 明治国家における近代医療の導入は、人びとが暮らす日常生活のあらゆる場面に大きな影響を与えていました。この代表格として遺伝という思考、いわゆる病気を発症しやすい体質を受け継ぐという話は、お年寄りの戦争体験に耳を傾けるとよく聞くことができます。このような近代医療によって培われた思考は、具体的にどのように醸成され人びとの暮らしの中に影響を与えていたのでしょうか。この問題を考えるためには、まず国家権力による身体の強制介入がどのように展開されていたのかを明らかにする必要があります。本演習では、テキストの精読を通して、国家による強制された身体をつぶさに観察していきます。この際、テキストの精読は、次の2点に注意を払い進めていきます。
 まず1つは、本文のなかで使用される引用史料と本文の文脈との論理整合性(史料批判)に注意を払います。ここでの注意点は、本文にみる引用史料が、説得力のある論証過程としての役割を果たしているか否かをみていきます。また参加者全員には、実践として論証する場合を想定し、効果的な史・資料の使用方法をつねに考えテキストの検討にあたることを希望します。
 2つは、上記した遺伝の思考をもつ一人ひとりが集団を形成した場合の人と人とのつながり、「社会的結合関係」に着目することに注意を払います。ここでの注意点は、人間相互のつながりに着目することで、その社会集団の内に暮らす人びとが個人ではどうすることもできない集団心理をみていきます。集団心理を読み解く学問的作業を通すことは、必然として現代のわれわれが必ず持つ差別的意識を再び考える機会を提供してくれます。
 本演習では、以上の2点に注意を払いテキストを精読し、医学的な身体とは別次元の「社会的身体」の理解を深めていきたいと考えています。
授業の進め方
 本演習では、基本的に毎回ふたりの担当者が報告を行ってもらいます。ひとりは、テキストの内容に関する疑問点・論点を含んだレジュメを作成し、これをもとに報告してもらいます。またもうひとりは、テキストで引用された史料の検討についてはレジュメを作成し、同じくこれをもとに報告してもらいます。この報告ののち、参加者全員で担当者によって挙げられた疑問点・論点ならびに引用史料の検討内容を中心に議論していきたいと考えています。このことから本演習では、参加者全員がテキストおよび引用史料を事前に精読し参加する必要あります。
教科書・参考書等
藤野豊『強制された健康ー日本ファシズム下の生命と身体ー』吉川弘文館、2000年。
成績評価の方法・基準
評価は、出席状況、報告の内容および議論への参加状況、そして提出されたレポート内容などから総合的に行います。
その他(質問・相談方法等)
上記テキストとは別に随時、史・資料を配布する予定です。また演習内容の委細については、参加者との話し合いのなかで決めたいと考えています。
過去の授業評価アンケート