経済のボーダーレス化に従い私人の国際的活動は増加の一途を辿り、それに伴い私人間の(或いは私人と国家間の)国際的法律関係に関する問題も多様化且つ複雑化しつつある。海外での交通事故、国際的な自動車の盗難、独占禁止法や通信法の域外適用また各国法規の抵触、国有化・収用措置や資産凍結措置の国際取引への介入、多国籍企業の複数国での大型倒産、アメリカ懲罰的損害賠償判決の我が国での執行の可否等、そういった問題の例としては枚挙に暇がない。また、このような財産関係事件に限らず、身分関係事件においても、離婚の国際裁判管轄、子供の引渡を命じた外国判決の我が国での執行の可否、国を跨った子供の奪い合い等、国際的紛争事例は夥しい。 このような複雑な国際的法律関係を規律する法律が抵触法(広義の国際私法)である。本講義では、実際に現在どのような国際的法律問題が生じているのかに随時触れながら、それらの解決の糸口となる抵触法の全体的構造につき、その基本的知識を提供する。抵触法の基本的構造を理解すると共に、国際民事紛争に関する具体的イメージを持てるようになることが本講義の目的である。受講者には、教科書・参考書により各テーマについて予習を行うこと、及び、レジュメに挙げられた裁判例や参考文献を出来る限り読むことが期待される。
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