●コアセミナー【法政基礎演習 I 】

最終更新日:2017年8月21日

授業科目名
●コアセミナー【法政基礎演習 I 】
標準年次
1
講義題目
日本の刑事裁判を考える
開講学期
前 期
担当教員
豊崎 七絵
単位数
2単位
教  室
209
科目区分
基幹教育科目
履修条件
 このシラバスをよく読んだ上で、主体的にゼミ活動に取り組む意欲のある人。
 ゼミは少人数の講義なので、学生同士、あるいは学生と教員とのコミュニケーションを十分にはかることができます。このような恵まれた環境のなかで、刑事裁判というテーマを通して「法とは何か」という問題を一緒に考えてゆきましょう。
授業の目的
 コアセミナーの共通目標は、次の4つです。
(1)情報の集め方について学ぶこと
(2)情報の分析の仕方について学ぶこと
(3)議論の方法について学ぶこと
(4)自分の意見を説得的に文章にまとめる技術について学ぶこと

 このゼミ固有の目標は、次の3つです。
(1)近代刑事法原則の意義を理解すること
 日本国憲法第31条〜第40条は、日本の刑事裁判を律する重要な原則を定めています。講義の前にぜひ読んでみてください。読んでいるうちに、「なぜ、このような原則があるの?」、「なぜ、憲法は約100箇条のうち10箇条も刑事裁判に関する条文にあてているの?」など、いろんな疑問がわいてくると思います。その疑問を、一緒に考えてゆきましょう。
 つまり第1の目標は、刑事裁判に関する重要な原則、すなわち「法」の意義を理解することです。
(2)日本の刑事裁判の現状を批判的に分析すること
 もしも刑事裁判が「法」の通りに実行されているならば、「法」さえ理解すれば刑事裁判についても理解したことになるのかもしれません。ところが実際の刑事裁判は、「法」の通りに運用されていないこともあります。したがって日本の刑事裁判を理解するには、その現状を知った上で、「なぜ、『法』のいう通りに運用されていないの?」、「現実が『法』と違うのは、問題じゃないの?」といった疑問を考え続ける必要があります。
 つまり第2の目標は、「法」と現実とのギャップを知り、批判的に分析することです。
(3)先端的テーマがもつ問題の奥深さを実感すること
 みなさんは、新聞報道やニュース、あるいは書籍などを通じて、刑事裁判に関する先端的テーマを知っているかもしれません。例えば、「裁判員制度」、「刑事裁判への被害者参加」、「取調べの可視化」、「代用監獄存廃」といった立法問題を思い浮かべる人もいれば、具体的な刑事事件を思い浮かべる人もいるかもしれません。
 法学部生になったからには、このようなテーマをききかじってその場限りの感想をいだいて終わるのではなく、その問題の奥深さを実感したいと思いませんか。本格的な勉強は3年生以降の演習や「刑事訴訟法」という講義でやるとしても、時間が許す限り、一緒に議論してゆきましょう。
授業の概要・計画
第1回    自己紹介/授業概要の確認/報告順番の決定など
第2回    文献収集の仕方、六法・判例・基本書の使い方などの説明
第3・4回  「刑事裁判・総説」
        刑事裁判の基本的問題に関する担当教員によるレクチャー
第5〜11回 「刑事裁判の諸問題」
        数人から成るグループもしくは個人による報告とディスカッション
第12・13回 「それでもボクはやってない」
       映画鑑賞とディスカッション
※詳細は、次の「授業の進め方」をご覧下さい。
授業の進め方
 (1)この講義では、第1・2回でゼミに関する基本事項を確認した後、第3・4回のレクチャーは担当教員が行います。第3・4回の講義のねらいは、@刑事裁判の基本的問題の所在をおさえること、Aレジュメの形式を学ぶことです。
 第5〜11回(全7回)は、参加者のみなさんによる報告と議論で構成されます。具体的には、数人から成るグループもしくは個人による報告(30〜40分程度)の後、その報告内容について全員による議論を行います。報告担当者は、事前に報告テーマについて調べて、レジュメの作成および印刷を行い、報告1週間前のゼミでレジュメを配布してもらいます。報告担当者以外の者は、配布されたレジュメを手がかりに、また関連文献を調べるなどして、報告テーマについて検討し、当日発言できるよう準備をしてきて下さい。当日の司会は、次に報告をするグループもしくは個人が担当します。
 第12・13回は、周防正行監督が日本の刑事裁判を描いた映画「それでもボクはやってない」を鑑賞します。これは、このゼミの目標である「日本の刑事裁判の現状を批判的に分析すること」、「先端的テーマがもつ問題の奥深さを実感すること」に大いに資する素材です。
 (2)第5〜11回の報告テーマの選択は基本的に自由ですが、この講義の目標との関係で、少なくとも@憲法31条〜40条所定の刑事裁判に関する諸原則に関連し(第1の目標)、Aそのテーマに関する現実の動きを調査して、刑事裁判に関する諸原則=「法」の観点からその現実に対する分析・評価を行う(第2の目標)ことが可能なテーマを選んで下さい。テーマの選択にあたり、担当教員に相談してもらっても構いません。また要望があれば、テーマの具体例も提示します。
 (3)報告担当者は、報告から2週間以内に、報告テーマについてのレポート(3000字程度。超過しても構わない)を担当教員に提出して下さい。レポートは、@報告当日の議論を踏まえ発展させた内容で、A少なくとも2〜3の文献(インターネット上の情報を除いた活字のもの)を引用したものとします。
 (4)報告テーマについてのレポートの他に、以下の3つのレポートを提出してもらいます。第1に、自分が報告担当したテーマ以外に刑事裁判に関連するテーマについてのレポート(3000字程度。超過しても構わない)を、最後の講義までに担当教員に提出して下さい。レポートは、少なくとも2〜3の文献(インターネット上の情報を除いた活字のもの)を引用したものとします。第2に、各自法廷傍聴に行ってもらい、その成果としてのレポート(形式等については講義で指示します)を、6月最後の講義までに担当教員に提出して下さい。第3に、刑事裁判に関する書籍(新書、もしくはそれ以上に問題を詳細に検討しているもの)を読んで、その成果としてのレポート(3000字程度。超過しても構わない)を、最後の講義までに担当教員に提出して下さい。
教科書・参考書等
 六法は、必ず持ってきて下さい(小型のもので構いません)。
 教科書は、村井敏邦『新版 刑法』(岩波書店、2005年)を挙げておきます。これは刑事法全体に関する教科書で、講義では直接取り上げませんが必ず読んでおいて下さい。また三島聡『刑事法への招待』(現代人文社、2004年)も、無罪推定や黙秘権といった刑事裁判に関する重要な原則に多くのページ数をさいている、ユニークで読みごたえのある教科書です。
 参考文献については、講義中に紹介します。
成績評価の方法・基準
 無断欠席のないことが単位認定の前提条件になります。その上で、@ゼミ報告・発言等の平常点とA4点のレポートとの総合評価とします。
その他(質問・相談方法等)
過去の授業評価アンケート