●コアセミナー【法政基礎演習 I 】

最終更新日:2017年8月21日

授業科目名
●コアセミナー【法政基礎演習 I 】
標準年次
1
講義題目
打たれ強くなるための法学入門――刑事法を素材として――
開講学期
前 期
担当教員
武内 謙治
単位数
2単位
教  室
304
科目区分
基幹教育科目
履修条件
 特にありませんが、このシラバスを最低でも2回は熟読し、授業の内容や進め方を理解した上で、参加希望書を書いてください。
 この講義は、大学生として生活を送るために最低限必要だと考えられる技術や基本的な(生活)習慣をつけてもらうことを最大の目的とします。技術や基本的な(生活)習慣を身につけるには、それ相応の時間と労力が掛かります。希望者の方は、そのことを念頭に置いて、演習に参加して下さい。
授業の目的
(コア・セミナーの共通目標)
(1)情報の収集・分析方法を身につけ、発表の仕方を身につけること
 情報の集め方や分析の仕方、いわゆる「プレゼンテーション」と呼ばれる大学での発表のやり方を学びます。
(2)議論のやり方について学ぶこと
 いわゆる「ディスカッション」と呼ばれる、大学での議論のやり方を学びます。的確に質問し、質問に応答できるようになること、さらに議論を手際よく進めるための司会のやり方も含みます。
(3)自分の意見を説得的に文章にまとめる技術(レポートのつくり方)について学ぶこと
 大学では、高校までに経験しなかった量の、しかも多くのレポートを課題として書かせられます。その準備として文章で自分の主張を表現するための技術を学びます。

(この授業の目標)
 ある人によれば、最近の大学生は「知的に打たれ弱くなっている」そうです(東郷雄二『打たれ強くなるための読書術』(筑摩書房・2008年)10頁)。本当に「最近の」「大学生」だけが「知的に打たれ弱くなっている」のか疑問も浮かぶところですが、ともあれ、この論者の指摘によれば、この「知的に打たれ弱い症候群」の具体的症例は、「すぐに解答を欲しがる」、「どこかに正解がひとつあると信じている」、「解答に至る道をひとつ見つけられたらそれで満足してしまう」、「問題を解くのは得意でも、問題を発見するのが不得手である」、「自分の考えを人に論理的に述べる言語能力が不足している」、というものなのだそうです。
 九州大学の法学部に新しく入学されたみなさんはいかがでしょうか。ドキッとしましたか。自分にも思い当たるふしがある方は、今のうちに「知的に打たれ強く」なるための体質改善をしておいた方が、今後の学生生活のことを考えても得策です。
 この講義の目標は、新聞や本を読み、自分の意見を文章にまとめる習慣を夏休みが終わるまでに身につけてもらうことにあります。その際、良い意味でも悪い意味でも素直な新入生のみなさんには、人がいっていることを何でも鵜呑みにして無批判に受け入れるという高校生の頃までの習慣は捨ててもらい、ナナメから批判的に物事を見るクセをつけてもらうことにします。
 この授業は、「刑事法」に関する新聞記事を素材とします。その理由はふたつあります。第一に、「刑事法」に関係する報道は日々溢れかえっているわけですが、幸か不幸かそれらはナナメから検討したり、色々な角度から物事を見る訓練をするための格好の素材になっているということです。第二に、幸か不幸か授業担当者がたまたま「刑事法」を専攻しているということです(こちらはかなり消極的な理由です)。この授業において「刑事法」(に関する新聞記事)はあくまで「素材」であり「覗き窓」にすぎません。「刑事法」に関する知識をつけること自体を目的とはしませんので、ご注意ください。
授業の概要・計画
(授業の概要)
(1)この授業を構成するのは、(a)調査、(b)報告、(c)議論、(d)レポート、(e)「添削レポート」、(f)特別レポートとゼミ論文執筆、です。基本的な教材となるのは、犯罪や刑罰をめぐるニュース報道です。
(2)参加者の皆さんには、まず、新聞報道などのニュースを素材として調査・報告を行ってもらいます。その際、自分で問題を発見し、私見を交えながら、ニュースで扱われている問題を深めたり、背後にある問題に踏み込んだり、不正確な記述に的確に「ツッコミ」を入れる、というのが、報告者の役割です。それに基づき、参加者全員で議論を行い、疑問や議論を深めます。
(3)その上で、2種類のレポートを2〜3回提出してもらいます(レポートの回数は、受講者の皆さんとの話し合いにより、最終的に決定します)。
 第1のレポートは、授業の場で取り上げられた問題に関係するテーマを扱ったレポートです。このレポートでは、「最低でも」新書レベルの文献2つを必ず引用してもらいます(残念ながら、複数の引用文献のない文字の羅列を、大学では「レポート」とは呼びません。なお、レポートの字数は自由です)。このレポートは、同内容のものを2部作成してもらいます(もちろん1部はコピーで十分です)。1部は授業担当者(武内)にそのまま提出してもらい、もう1部は自分以外の参加者の手許に渡ります。
 第2のレポートは、「添削レポート」です。これは、自分の手許に渡ってきた他の参加者のレポートを添削する、というものです。それを通して、「人のふり見て我ふり」を直してもらう機会をたくさん持ってもらおう、というわけです(他人が持っている問題は、大抵、自分も抱えているものです)。この添削レポートも同内容のものを2部作成してもらいます。1部はレポートの「原著者」の手許に戻ります。もう1部は授業担当者(武内)に提出してもらいます。
 以上をまとめると、参加者の皆さんには、自分が書いたレポートと他の参加者が作成したレポートを添削するレポートという2種類のレポートを提出してもらうことになります。
(4)さらに、上のレポートとは別に、刑事司法について自分が関心を持ったテーマについて自分の「体験」を踏まえて書いてもらう「特別レポート(字数は自由)」を提出してもらいます。また、最後に、「論文(できれば、10000字程度)」を執筆してもらいます。
 講義期間中2〜3回提出してもらうレポート、添削レポート、特別レポート、論文の提出は、いずれも単位を認定するための要件とします(要するに、ひとつでも欠ければ単位認定しない、ということです)。

(授業計画)
第1回目 自己紹介/報告順番の決定/グルーピング/基本的な運営方針の決定
第2回目 文献収集の仕方・図書館の使い方などの説明/次回報告者による「ネタ・ニュース」の配付
第3回目 報告/議論/次回報告者による「ネタ・ニュース」の配付
第4回目 報告/議論//次回報告者による「ネタ・ニュース」の配付
第5回目 報告//議論//次回報告者による「ネタ・ニュース」の配付/第1回レポートの提出
第6回目 報告//議論/第1回添削レポートの提出
…あとは、この繰り返し、というのが1つのモデルです。最終的には、受講者の皆さんとの話し合いで、決定しましょう。
授業の進め方
 上記の通り、<報告→議論→レポート+添削レポート>を1サイクルとして、授業を進めていきます。
 報告者には、日々流されているニュースから自分のアタマで問題点を発見し、調査を進めながらそれを掘り下げた上で、レジュメを作成し、報告してもらいます。参加希望者は、今のうちから新聞などにしっかり目を通すようにしておいてください。報告のネタになるニュースは、報告の一週間前に参加者全員に配布してもらいます。報告者以外の参加者も、議論に向けた準備を各自行ってきてください。
教科書・参考書等
 次のA〜Cグループに掲げた書籍を必ず読んでおいてください。いずれも、学部の4年間を通して繰り返し読むのに耐えうる書籍です。第1回目の講義に六法とともに必ず持参してください(六法は、自分のお気に入りを探してみてください)。

-----Aグループ-----
(1) 野矢茂樹『新版 論理トレーニング』産業図書(2006年)

-----Bグループ-----
(1) 戸田山和久『論文の教室』NHKブックス(2002年)
(2) 木下是雄『レポートの組み立て方』ちくま学芸文庫(1994年)

-----Cグループ-----
(1) 赤池一将=中川孝博『刑事法学入門』法律文化社(2005年)
(2) 福井厚『刑事法学入門 第2版』法律文化社(2004年)
成績評価の方法・基準
 試験は行いません。
 成績評価は、この授業の目標に即して、次のように行います。
 ・授業への出席(25%):出席は少人数授業の基本です。
 ・報告(25%):自分なりに調査を行った上で、自分の言葉で自分の意見を発表できるかどうかを基準に評価します。たとえば、インターネット上の情報の丸写しなどは評価の対象にすらなりません。
 ・議論での発言(25%):他の参加者の意見を聴き、自分の言葉で議論できるかどうかを基準に評価します。
 ・レポートの内容(25%):自分の意見を自分の言葉で論理的に文章表現できるかどうかを基準に評価します。

 いずれについても、誰でも最初から完璧にできるわけではありません。これらができるようになるためのゼミですから、自分なりに努力していることが示されればそれで十分です。何もやらないことよりもやって失敗することの方が実りが多いわけですから、このゼミでたくさんの失敗をしてください。
その他(質問・相談方法等)
(1) 無断又は正当な理由のない欠席は一切認めません(約束が守れないときには、事前に連絡をとり、それが無理なら事後に事情を説明する、というのが一応の社会規範です)。
(2) このシラバスを読むこと自体を、物事を批判的に捉えるため練習にしてください。このゼミで自分のニーズに適う内容が提供されるのか、ここで記されている方法で自分が求める能力を身につけることができるか、自分でしっかり(批判的に)考えてみてください。
過去の授業評価アンケート  2007年度前期