履修条件 |
思想・歴史・理論の観点から、じっくりと、人間や政治を理解したい方を歓迎します。 |
授業の目的 |
(1)「政治学史」というディシプリンを通じて、一定水準の学問的な「型」を修得することを目指します。 (2)現代社会の知的基盤となったヨーロッパ文明の「生い立ち」を理解するとともに、政治学の難解な「古典」を読解するための「わざ」や「センス」を磨きます。 (3)歴史や古典の教養に裏付けられた、21世紀に生きる「善き市民」としての「思慮」と「作法」を身に付けます。
※「アカデミーというのは、まさに、学問の型をしつける場所なんです」(丸山眞男『座談』7:122)。
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授業の概要・計画 |
古代ギリシア・ローマから初期近代ヨーロッパまでを中心に、近代西洋文明の思想史的な基礎(foundation)を講義します。そこには、「デモクラシー」や「自由」「平等」など、現代に生きる私達が無条件に前提とする世界観やアイデンティティーの歴史的な「いわれ」や「由来」がひそんでいます。
ところが、政治思想史研究では近年、ケンブリッジ大学を中心に大きな方法論的な転換(「神話」破壊)が生じました。本講義では、このような最新の研究動向を踏まえながら、とくに、政治思想史上の重要な「テクスト」と「コンテクスト」の関連に着目します。このような作業からは、無味乾燥な「学説」史ではなく、歴史に生きる人間の姿や、政治と思想とのダイナミクスが浮かび上がってくるでしょう。
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授業の進め方 |
さしあたっての授業計画は以下のとおり。
第1講 イントロダクション/「政治学史」とは何か 第2講 政治思想史の方法 第3講 デモクラシーの思想史 第4講 政治と哲学−プラトン 第5講 ポリスの政治学−アリストテレス− 第6講 「レス・プブリカ」−共和政ローマとキケロ− 第7講 「帝国」の思想史 第8講 政治と非政治−古代の終焉とキリスト教 第9講 「神の国」・「地の国」−アウグスティヌス 第10講 キリスト教共同体−トマス・アクィナス 第11講 ルネサンスと人文主義 第12講 統治の技術−マキアヴェッリ『君主論』 第13講 ローマの再生?−マキァヴェッリ『リウィウス論』 第14講 「痴愚神」と「ユートピア」−エラスムスとトマス・モア 第15講 「宮廷」の思想史−『宮廷人』とジェントルマン教育 第16講 フランシス・ベイコンと「ヨーロッパ近代」 第17講 政治と法−立憲主義と「古来の国制」 第18講 宗教改革−ルターとカルヴァン 第19講 内乱の政治学−主権・思慮・国家理性 第20講 ホッブズ『リヴァイアサン』 第21講 ジョン・ロック『統治論』 第23講 「文明社会」の政治思想@−モンテスキュー 第24講 「文明社会」の政治思想A−ルソー 第25講 「文明社会」の政治思想B−ヒュームとバーク 第26講 『ザ・フェデラリスト』
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教科書・参考書等 |
※いずれも参考文献です。 ☆福田歓一『政治学史』東京大学出版会、1985年 ☆川出良枝、山岡龍一『改訂版西洋政治思想史−視座と論点』放送大学教育振興会、2005年 ・小笠原弘親、小野紀明、藤原保信『政治思想史』有斐閣、1987年 ・ウォーリン『西欧政治思想史−政治とヴィジョン』福村出版、2007年 ・福田歓一『福田歓一著作集』全10巻、岩波書店、1998年 ・丸山眞男『丸山眞男集』全16巻+別巻、岩波書店、1995-7年 ・藤原保信『藤原保信著作集』全10巻、新評論、2005年− ☆岡崎晴輝・木村俊道編『はじめて学ぶ政治学』ミネルヴァ書房、2008年
その他、たくさんの政治学の古典(授業の際に文献一覧を配布します)。
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成績評価の方法・基準 |
定期試験(70%)と学期末のレポート(30%)による。
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その他(質問・相談方法等) |
講義の役割は、あくまでも、西洋文明や古典の世界に分け入るためのガイド・ブックに過ぎません。少しでも意欲を覚えた方は、講義の進行に関わらず、難易度の高い原典や研究書にどんどんチャレンジして下さい。「わからない」ことも大事です。歴史と格闘した思想家たちや古典との対話は、学問的な能力を磨くだけでなく、人格的に大きく成長するための原動力にもなるでしょう。 なお、さらに理解を深めたい方には、関口・木村ゼミへの参加もおすすめします。
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過去の授業評価アンケート |
2007年度前期 |