履修条件 |
現時点における刑事法(学)や刑事政策(学)に関する知識の多寡は全く問いません。しかし、自分なりの問題意識はもってきてください(主観的要件)。毎回演習に参加できることも必須の要件です(客観的要件)。 |
授業の目的 |
(1)このゼミで参加者の皆さんに是非とも身につけてもらいたいと考えているのは、自分の問題意識にこだわって、自分で問題を発見し、自分なりに問題解決の道筋をつける能力です。これらの能力は、将来、社会生活を送るのに不可欠だからです。
(2)そのためにこのゼミで目標とするのは、「調査能力の向上」です。せっかく問題意識をもっていても、「調査」をしてみないことには、それは発展しません。またせっかく自分で問題を発見しても、「調査」なしには解決の道筋をつけることは難しくなります。 みなさんは、「文献調査」については、低年次ゼミを通してある程度体得されてきていることでしょう。高年次生向のこのゼミでは、論文や立法資料・判例に関係する「文献調査」能力のさらなる向上を図るとともに、「社会調査」にも挑戦してもらいます。紙に書かれていることと現実の世界は常に一致するわけではなく、むしろ違っているのが普通です。また、「事実」にアプローチできる能力を身につけておくことは、社会生活を送るのにも不可欠です(社会科学に関係する何らかの専門職に将来就くのであれば、なおさらです)。小さいことでもよいので、自分の問題意識から新しい「発見」をしたり、それをもとに理屈を再構築する楽しみが社会科学にもあることを大学のゼミ活動で体験してもらいたいと考えています。そのため、このゼミでは、できるだけ学外に(も)出て「自分で確かめる」ことを重視します。
(3)さらに、このゼミでは、「論文作成能力の向上」を目指します。社会生活では、自分の考えを文章で表現することが多く求められます。このゼミで目標にするのは、レポートからもう一歩進んだ「論文」の作成能力の向上です。論文執筆に際しては、可能な限り個別に(も)指導時間を割きます。
(4)最後に、「刑事政策」演習であることから、「犯罪」・「非行」の原因やそれへの対応・制度のあり方に関する基本的な知識を身につけてもらい、犯罪・非行現象に関する自分なりの視座を獲得してもらうことを目的とします。 想像や直感に頼るのではなく、できるかぎり「事実」に基づいて犯罪・非行現象にアプローチできる能力を身につけてもらいたいと考えています。 |
授業の概要・計画 |
(1)授業のテーマ このゼミでは、刑事政策(学)(犯罪学、少年法、刑事制裁法、刑事拘禁法、刑事矯正法、更生保護法、被害者学及び刑法学・刑事訴訟法学、児童福祉法学・精神福祉保健法学など近接の諸科学)上の重要テーマの「理論と実際」を検討していきます。 今年度取り上げたいと考えているテーマは、「少年非行からみた福祉と司法」です (ちなみに、2006年度のテーマは、「心神喪失者等医療観察法をめぐる諸問題」、2007年度のテーマは、「犯罪現象への対応と刑事司法・行刑制度のあり方」でした)。 「少年非行」と呼ばれる社会現象に対応する方法は、社会の中にいくつも存在します。そのうち、少年司法制度、刑事司法制度、児童福祉制度ではどのような対応が可能で、そこには現在どのような課題があるのでしょうか。児童福祉法をはじめとする福祉法制上の対応可能性も視野に入れて、できるだけ自分たちの日常生活に引きつけながら問題を考えていくことにします。 取り上げる具体的な問題は、第1回目の授業の際に受講者の方と相談して決定します。
(2)検討の方法 正規の講義時間外であっても、フィールド・ワークに出かけてもらうことがあります。 また、年度末には各自の問題関心に基づいた「論文」を執筆してもらいます。論文の提出は、単位認定の要件にします。
(3)年間計画 詳細については、第1回目の講義の際に受講者の方と相談して決定します。 できるだけ現実を知るための機会を多くもった計画にしたいと考えています。 |
授業の進め方 |
報告担当者には、文献・社会調査に基づいて(グルーピングを行った場合には、さらにサブ・ゼミを行った上で)、予め簡潔なハンドアウトを作成して頂き、プレゼンテーションを行ってもらいます。それを機軸に、参加者全員で議論を行います。議論の中で新しく出てきた疑問や関連する問題については、さらに調査を進めてもらい、再度報告してもらいます。 要するに、<調査→報告→議論>を繰り返しながら問題の発見と調査をどんどん発展させていくゼミだとご理解ください。 詳細については、第1回目の授業の際に、受講者の方と相談して決定します。 |
教科書・参考書等 |
(1)開講日までに必ず読んで(自分なりになにか考えて)くるもの(時間の問題などで全部読むことができないという場合には、どれか1冊でもよいので読んでおいてください) 佐藤幹夫=山本譲司(2007)少年犯罪厳罰化 私はこう考える、洋泉社 藤原正範(2006)少年事件に取り組む、岩波書店 佐藤幹夫(2007)裁かれた罪 裁けなかった「こころ」、岩波書店 朝日新聞支部本社(2005)11歳の衝動、雲母書房
(2)開講日に持参してくるもの(各自で購入しておいてください) 法務総合研究所(2007)平成19年度犯罪白書、独立行政法人国立印刷局
(3)開講日までにできれば読んでおいてもらいたいもの 谷岡一郎(2007)データはウソをつく、筑摩書房 浜井浩一編(2006)犯罪統計入門、日本評論社 佐藤郁哉(2002)フィールドワークの技法、新曜社 |
成績評価の方法・基準 |
成績評価は、次の基準により行います。 (1)授業への出席(25%) 授業への出席は、ゼミ活動の基本です。無断・正当な理由のない欠席は認めません。
(2)報告(調査活動も含む)(25%) ゼミの場での報告とそのための文献・社会調査活動の内容を総合して判断します。 なお、文献・社会調査の方法、資料作成・統計分析の方法、プレゼンテーション資料の作成方法など、技術的な事柄に関する質問は、いつでも受けつけます。
(3)議論の場での発言(25%) ゼミの場での質問・議論の展開内容を総合して判断します。
(4)学年度末に予定している論文の内容(25%) (感想文やレポートではなく)「論文」を書いてもらい、その内容を見て判断します。 なお、論文の執筆にあたっては、(希望があれば)構想・アウトライン・下書きも含めて、可能な限り個別に(も)指導時間を割きます。 |
その他(質問・相談方法等) |
(1)ゼミに関する質疑については、素朴な疑問や資料作成に関係する技術的な問題に関しても、オフィス・アワーなどの枠組みにかかわりなく、常に受けつけます。
(2)ゼミ運営では参加者のみなさんの自発性・自主性を最重視します。できるだけ「少人数」教育の長所を生かすことができるゼミにします。
(3)講義担当者がもちあわせている(と推測される)能力やこれまでの活動などについては、http://hyoka.ofc.kyushu-u.ac.jp/search/details/K000143/index.html や http://www.law.kyushu-u.ac.jp/~takeuchi/をご覧になり、批判的にご検討ください。不明な点があれば、お気軽に武内にコンタクトをとってお尋ねください。
(4)1月のオープンゼミ期間は、このゼミでは論文構想報告会の時期です(ので、見ていてもゼミ選択の参考にならないと思います)。オープンゼミ期間中は、おわりの10分程度を来年度のゼミに関する質問の時間にあてたいと思いますので、興味をおもちの方は、18時頃にゼミ教室に来て頂いた方がよろしいかと思います(もちろん、それ以外の時間帯に来て頂いても構いませんし、ゼミの時間以外に武内までメールなどにより質問を頂いても構いません)。 |
過去の授業評価アンケート |
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