民法演習

最終更新日:2017年8月21日

授業科目名
民法演習
標準年次
3・4
講義題目
民法(財産法)の重要問題
開講学期
通 年
担当教員
赤松 秀岳
単位数
4単位
教  室
106
科目区分
展開科目
履修条件
 民法の科目を受講しており、一定の民法の基本的知識を有することが望ましい(他方で、ゼミに受講開始時に民法全科目を履修している必要はありません)。
とくにゼミやグループ討論で物怖じせず、自分の考えを述べるなど積極的な参加ができる(してみようと努力する)人の受講を希望します。
 このゼミの基本方針は、次の通りです。
 民法の学習では、読んで覚えることは単なる出発点で、討論し考えることが重要です。クラスメートと討論し考える中で見出したことは、他者と対話しつつ自分自身で考えるプロセスを経ているので、自分自身の中にしっかりと根付きます。また、「発見のおもしろさ・楽しさ」を経験することは、もっと勉強してみよう、というモチベーションを高めることにもつながります。こうして、今まで習ったことのない事案に遭遇しても、これまで習得した知識を応用して判断していけるような、創造力のある法曹になるための基礎的素養が身に付くのです。
以上のようなゼミの基本方針を理解し共感できる人に、このゼミを受講して欲しいと思います。
授業の目的
 民法財産法の分野を中心に、(とくに3年次生については)基本的知識を踏み固めると同時に、「法的に考える」力の養成に資するような、重要問題と重要判例を検討します。各回の問題・判例につき、事実との関連で、なぜそのような判断が導かれたのか、そのような問題が生じる背景は何か、判例に対する批判的な学説があれば、考え方が分かれる理由はどこにあるのか、自分自身はどのような立場をとるか、などにつき、グループ討論とゼミ本番での討論を通じて多角的に検討し、「法的に考える」ことを会得します。
授業の概要・計画
 以下の通り、なるべく民法財産法(相続法も含む)の全体を網羅するように問題・判例を取り上げます。
第1回 ガイダンス・クラス作りとディベートの体験
第2回 民法94条2項の類推適用(最判昭和45年11月19日民集24巻12号1916頁)
第3回 民法96条3項の「第三者」(最判昭和49年9月26日民集28巻6号1213頁)
第4回 表見代理(最判昭和44年12月19日民集23巻12号2539頁)
第5回 消滅時効と除斥期間(最判平成6年2月22日民集48巻2号441頁)
第6回 民法177条の「物権変動」1(最判昭和46年1月26日民集25巻1号90頁)
第7回 民法177条の「物権変動」2(最判平成14年6月10日判時1791号59頁、家月55巻1号77頁)
第8回 民法177条の「第三者」(最判昭和49年3月19日民集28巻2号325頁)
第9回 通行の自由権(最判平成9年12月18日民集51巻10号4241頁)
第10回 先取特権(最決平成10年12月18日民集52巻9号2024頁)
第11回 法定地上権(最判平成9年2月14日民集51巻2号375頁)
第12回 債権者代位権(最判昭和38年4月23日民集17巻3号536頁)
第13回 債権者取消権(最判平成4年2月27日民集46巻2号112頁)
第14回 (不真正)連帯債務(最判平成10年9月10日民集52巻6号1494頁)
第15回 債権譲渡(最判昭和49年3月7日民集28巻2号174頁)
第16回 売主の担保責任(最判昭和57年1月21日民集36巻1号71頁)
第17回 賃貸借の解除(最判平成3年9月17日判時1402号47頁、判タ771号66頁)
第18回 賃料の増額請求(最判平成8年7月12日民集50巻7号1876頁)
第19回 委任(最判昭和56年1月19日民集35巻1号1頁)
第20回 請負(最判平成9年7月15日民集51巻6号2581頁)
第21回 不法原因給付(最判昭和45年10月21日民集24巻11号1560頁)
第22回 共同不法行為1(最判平成13年3月13日民集55巻2号328頁)
第23回 共同不法行為2(最判平成15年7月11日民集57巻7号815頁)
第24回 過失相殺(最判昭和51年3月25日民集30巻2号160頁)
第25回 被害者の素因と賠償額の減額調整(最判平成8年10月29日民集50巻9号2474頁)
第26回 遺言による処分(最判平成3年4月19日民集45巻4号477頁)
授業の進め方
 ゼミの受講者の人数にもよりますが、もし相当数の受講者があれば、次のように行ないます。
 (1)グループによる事前討論
まず、ゼミの受講者全員をいくつかの班に分けます。そして、各班ごとに順番に報告を担当します(班の中でさらに報告者は固定せず、ローテーションで行います)。報告が当たっている班は事前に検討会を行い、報告レジュメを作成し、ゼミ当日の数日前(具体的に何日前とするかは、作業の負担との関係もあるので、受講者と話し合って決めます)には、レジュメを担当教員宛提出するとともに、他の受講者全員にも事前配布します(事前配布をペーパーベースでするか、あるいはHPを立ち上げるかなどについても、受講者と話し合って決めます)。報告が当たっていない班も、このように事前配布されたレジュメをもとに、ゼミ当日までに必ず最低1回は事前検討会を行って、ゼミ本番に出席します。わが国の大学でゼミの議論が不活発になる理由の一つは、報告者以外の学生がレジュメをゼミ当日初めて目にすることにあると思われるので、このゼミでは、ゼミ本番でのディベートが活発になるよう、このようなシステムを採ります。
 (2)教場での授業
 ゼミ当日の教場では、報告を担当する班から選ばれた司会者が進行係を務め、レジュメを踏まえて問題提起がなされます。必要に応じて、教員からも問題提起がなされます。他の各班の受講者も事前討論をしており、当日の問題について一定の知識と関心を共有しているはずなので、それを前提に、全体討論と、場合によっては各班ごとの再討論が教場でなされます。以上を通じ、問題を深化させ、掘り下げていきますが、これも必要に応じ(とくに民法全部の学習をまだ終えていない受講者を念頭に置いて)、担当教員の側から、必ず押さえておくべき前提知識などにつき、ミニ・レクチャーが挟まれることもあります。
 (3)ライティングの課題
 人前で物怖じせずプレゼンテーションや議論ができることだけでなく、自分の意見や考えを誤解されることなく正確に、自分の言葉で文書化できるということも、法曹としては不可欠の素養・能力です。そこで、このゼミでは、ゼミで取り上げた問題、あるいはそれ以外の問題で、自分の関心がある民法上の問題について、問題は何か、何故そのような問題が生じるのか、自分はどう考えるか、などにつき、自分自身の言葉で文章化して提出するライティングの課題を課します。提出された課題については、添削をして返却します。また、受講者のこのゼミ以外の勉強や活動になるべく影響がないよう、ライティングの課題は、夏休みを利用して作成してもらう予定です。
教科書・参考書等
 授業概要・授業計画にあげた各回の判例とその解説(判例百選や調査官解説、判例評釈)のほか、各種の民法基本書。
成績評価の方法・基準
 ゼミでの報告・討論によって、このゼミが目標とする「法的に考える」力を各受講生がどのように習得しているか、およびライティングの課題を通じて評価します。
その他(質問・相談方法等)
 担当教員は、わが国における法科大学院制度が発足してからこれまで4年間ずっと、主として法科大学院での民法教育と法曹養成に従事してきました。この経験を活かして、学部における本ゼミでも、法科大学院への進学をも視野に置いたゼミにしたいと思います。
過去の授業評価アンケート