労働法演習

最終更新日:2017年8月21日

授業科目名
労働法演習
標準年次
3・4
講義題目
現代の雇用問題の研究
開講学期
通 年
担当教員
山下 昇
単位数
4単位
教  室
305
科目区分
展開科目
履修条件
絶対条件ではありませんが、前期に開講される労働法の講義を履修することが望ましいのはいうまでもありません。本演習は、理論的というよりも、雇用問題の実態に対する自身のスタンスを持った上で、実務的・具体的問題の解決について研究することが中心になりますので、労働法の基礎知識を身につけておくことにより、深い理解や活発な議論ができると思います。
毎回一度は発言すること。
授業の目的
本演習の第一の目的は、日本の雇用を取り巻くさまざまな問題(非正規雇用の増加、少子高齢化と育児介護の問題、ニート・フリーター問題、ワーキングプア、雇用の流動化、外国人労働者の受入れなど)について、立法・政策・経済の観点を踏まえて、どのように解決すべきかを具体的に考えてもらう(そして、研究発表してもらう)ことです。第二の目的は、具体的な問題点(今のところ、アルバイトなどの非正規雇用の問題)について、実際のトラブルをリサーチして、問題解決の方法を議論することです。そのために、同種の問題についての裁判例を調べてもらうことにより、アルバイトをめぐる法律問題を体系的に理解することができると思います。
授業の概要・計画
前期は、現在の日本の雇用を取り巻くさまざまな問題について検討します。前期に取り扱うテーマは以下のようなものです。
・少子高齢化の現状とその政策・将来像
・育児介護と(特に女性の)雇用継続の法政策
・フリーターの現状、ニートと長期無業者の問題
・ワーキングプア・ネットカフェ難民問題
・正社員の長時間労働・メンタルヘルスケア
・雇用の流動化・大学生の就職状況
・非正規雇用の増加とその法政策
・外国人労働者の受入れ(研修生など)

後期は、今のところ、アルバイトなどの非正規雇用の法律問題について(前期の議論の中で、ほかのテーマで面白いものがあれば、変更する場合があります)、具体的な問題を解決する技能を身につける勉強をします。夏休みに、友人・知人のアルバイト等でのトラブルについてリサーチし、法律的にはどのように解決すべきかについて、解答を考えてもらいます。たとえば、以下のような問題。
・未成年者だけど、親に内緒で(親の同意ないしに)居酒屋でバイトを始めた。あとで親にバレて、親がバイト先の居酒屋にバイトをやめると言ってきた。辞めなければならないのか。
・募集要項で、バイトは700円以上だったが、見習い研修中は650円からスタートし、面接のとき、「1ヶ月程度」と聞いていたのに、研修期間も4ヶ月をこえ、その後研修期間が終わっても680円のままである→いつになったら、700円にあげてもらえるか。
・たいしてミスもしていないのに、見習い期間が終わったら、クビになった。せっかく慣れてきたので、仕事を続けたいが、解雇は有効なのか。
・面接時に毎週月曜日は出勤できないことを伝えて、アルバイトを始めたのに、決めた休みがもらえず、バイトの休みが希望通りにとれないが、月曜日にも出勤しなければならないか。
・給料をきちんと貰えなくなり、月の給料の一部が勝手に天引きされているようだ。給料を全額分を貰うには、どのような手続をとればいいのでしょうか(賃金請求訴訟、仮処分手続、簡易裁判所、小額訴訟、労働審判、行政機関のサービス、時効)。
・以前よりも忙しくなって、仕事も増えたにもかかわらず、暇だった頃と同じ時給であった。仕事内容と給与が見合っていないような気がするが、賃金を上げてもらえるか。
・バイト中に、店の物品(皿とかコップなど)を破損したら、皿1枚につき1000円、コップ1個について500円弁償するように規則で決められており、毎月、給料から差し引かれている。こうした規則は仕方がないのでしょうか。
・残業を命じられたが、デートの約束があったので断ったら、クビになった。残業命令には従わなくてはならないのか。
・バイトの人数不足のせいで、辞めたいと言っても辞められない。
・アルバイトを遅刻した罰として、休憩中に無償で清掃させることは、法律違反にならないのでしょうか。この時間を労働時間として賃金を請求できるでしょうか。
・アルバイト先の商品(クリスマスケーキ)の予約を取るようノルマを課されている。ノルマ達成のための営業活動には賃金は出ない。これっていいの?
授業の進め方
前期は、新書やテレビ番組を題材として議論し、ゼミ生同士の問題意識の共有をはかりたいと思います。

後期は、前期での問題意識を踏まえ、身近なアルバイトをめぐる具体的諸問題について研究したいと思います。また、それ以外のテーマでについても、前期の議論の中で取り扱うテーマをいくつか設定し、ゼミ生個々人(あるいは数名のチーム)で、特定の問題に取り組んで、研究発表してもらいます。法学部のゼミですから、法律や判例がどうなっているかきちんと調べて、実際に相談に受けた場合にどうアドバイスするかを具体的に考えるようにしましょう。労働法律相談と考えてください。

教員は極力発言を控えるよう努力します。沈黙がうまれないように、報告者だけでなく、参加者も積極的に発言してください。
教科書・参考書等
テキストは特にありませんが、皆さんの報告テーマによって、新書(700円程度)を何冊か読んでいただくことがあります。
以下、参考書をあげておきます(気が向いたら読んでみて下さい)。
野川忍監修『職場のトラブル解決の手引き』(労働政策研究・研修機構)
菅野和夫ほか編『労働判例百選(第7版)』(有斐閣)
山田昌弘『少子社会日本』(岩波新書)
野口やよい『年収1/2時代の再就職』(中公新書ラクレ)
井上幸夫・笹山尚人『フリーターの法律相談室』(平凡社新書)
朝日新聞特別報道チーム『偽装請負』(朝日新書)
生田武志『ルポ最底辺』(ちくま新書)
島本慈子『ルポ解雇』(岩波新書)
成績評価の方法・基準
出席状況、報告(レポート)内容、討論参加状況等によって、総合的に評価します。演習での学習は毎回出席することが前提となりますので、出席状況は特に重視します。毎回、報告担当者がゼミ参加者に担当テーマを講義するつもりで、しっかり準備してください。
その他(質問・相談方法等)
オフィスアワーの時間にご質問・ご相談をお受けいたします。オフィスアワー以外でもかまいませんが、その場合、十分に時間がとれない場合があります。メールでお問い合わせいただいても結構です。@law.kyushu-u.ac.jpの前に、yamaをつけてください。
過去の授業評価アンケート