憲法演習

最終更新日:2017年8月21日

授業科目名
憲法演習
標準年次
3・4
講義題目
公法学の課題と展望
開講学期
通 年
担当教員
村西 良太
単位数
4単位
教  室
4研
科目区分
展開科目
履修条件
 現時点での能力如何は問いません。それよりも、このゼミを通して法学的な思考力を身につけよう、あるいは高めようという熱意を求めます。定評のある論文を味読し、ゼミ生どうしの議論に積極的に参加しようという、意欲的な学生を歓迎します。
授業の目的
 学説や判例をそれとして「覚える」ことが、このゼミの目的ではありません。むしろそれらの批判的な検討を通じて、自身の見解をできるだけ分かりやすく、かつ説得的に展開するスキルを身につけてもらいたいと考えています。

 そのために、(1)専門的な「論文」を「精読」する力、(2)自身の問題意識や見解を相互に披瀝しながら、これを磨きあげてゆく力(すなわち「議論」する力)、(3)そのようにして徐々に形成されてきた自説を読み手に伝わるように活字化する力、以上3つの能力を高めることがこのゼミの目的です。
授業の概要・計画
(1)現在のところ、前期は、教員がいくつかの課題を提示し、その中から各自の関心に沿って報告テーマを選んでもらう予定です。詳細については参加者各位と相談のうえ決定しますが、基本的な方向性という意味では、次の3つの柱を考えています。

(a)憲法学と行政法学との間で、同一の課題が論じられているにもかかわらず、双方の議論がすれ違いをみせている(ように思われる)テーマ。たとえば、憲法からみた「法律による行政の原理」、省庁の再編と法律(行政組織編成権の所在)、委任立法の限界、「司法権」と行政訴訟など。

 そのため、この演習においては、必要に応じて行政法学説の検討も積極的におこなっていきたいと考えています(演習題目を「公法学の」課題と展望としているのはそのためです)。

(b)明確な対立軸を示しつつ活発な「論争」が交わされ、現在もなお考察課題が残されているテーマ。たとえば議院内閣制の制度構想(とりわけ「国民内閣制」をめぐる論争)、憲法の私人間効力論(憲法と民法の関係)、いわゆる「二重の基準論」など。

(c)我が国における現在の政治状況と密接な関わりをもつテーマ。たとえば、政権交代と選挙制度、内閣総理大臣の指導力、ねじれ国会(二院制の再検討)など。

 いずれのテーマに関しても、それぞれ対立する諸学説の分岐点を公法学の観点から根底的に問いなおし、通説にせよ、少数説にせよ、いっそう深い理解に到達できればと考えています。遠回りなようにみえて、こうした一つひとつの積み重ねが、法学的な思考力を養成するいちばんの近道だと思うからです。このような演習を通じて、自身の考え方を形成したり、これを分かりやすく伝えたりする力もまた、少しずつ身についてくるでしょう。

 なお、最初に課題を提示する際の参考にしたいので、このゼミへの参加を希望する学生は、現時点で関心のあるテーマを演習参加申込書に付記しておいてください。また、授業開始前に連絡をとる可能性があるので、演習参加申込書にはメールアドレスも付記していただけると助かります。

(2)後期は、ゼミ論文集の作成を最終目標として、各自の構想報告を中心に進めたいと考えています。テーマの選定、文献の読み方、細部にわたる表現の仕方など、可能なかぎり丁寧な指導に努めるつもりです。詳細については、ゼミにおいて詳しく説明(または参加者と相談)します。
授業の進め方
 ゼミ生による報告および討論、というオーソドックスな形式によります。具体的には次のとおりです。

・ゼミ生の数にもよりますが、原則として各回に1〜2名ずつ報告を割り当てます。担当者はレジュメを作成し、それに基づいてプレゼンテーションをおこなってください。なお、レジュメは報告の1週間前のゼミにおいて、全員に配布してください。

・報告担当者以外の学生も、レジュメおよびそこで引用されている文献のなかでとくに重要なもの(場合によっては、教員が配布する文献)を事前に読んで、ゼミに出席してください。討論においては、各人かならず1度くらいは発言するように努めましょう。なお、司会進行もゼミ生に割り当てます。
教科書・参考書等
 講義レベルの基礎的な知識に不安のある人は、春休みのあいだにいくつか定評のある体系書を通読しておくとよいでしょう。

 また、ゼミで取り上げたいテーマを探すという意味では、大石眞=石川健治編『憲法の争点』(有斐閣・2008年12月刊行)が有益かもしれません。

 上述のように、このゼミでは「論文の精読」を重視します。各回にどのような論文を取り上げるか、原則として報告者に委ねますが、有益と思われる論文を教員が紹介・配布することもあります。
成績評価の方法・基準
 毎回の出席が大前提です。無断欠席は認められません。

 報告の内容、討論への参加状況、ゼミ論文等を総合的に考慮します。
その他(質問・相談方法等)
・勉強以外の面でも、積極的に相互の親睦を図っていきたいと考えています。ゼミコンパ、ゼミ旅行、ゼミ合宿など、皆さんの希望に沿って企画しましょう。けっして楽ではないけれど、明るく楽しい雰囲気のなかで(教員も含めて)お互いの能力を高めあえるゼミにしたいと願っています。

・なおこのゼミは、教員自身の都合により、2010年度以降は開講されない可能性があります(むろん今年度(2009年4月〜2010年3月)は最後まで開講されること、言うまでもありません)。その場合、新3年生は4年次においてゼミを移ることになるので(それ自体、特別なことではありませんが…)あらかじめご了承ください。

・サブゼミとしての参加を考える学生は、正規の登録手続(2次募集期間)に先立って、早めにご一報ください。

・その他、分からないことがあれば、メールで尋ねるか、研究室に直接お越しください。
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