政治学演習

最終更新日:2017年8月21日

授業科目名
政治学演習
標準年次
3・4
講義題目
現代日本政治の変容−政府の政治と社会の政治
開講学期
通 年
担当教員
出水 薫
単位数
4単位
教  室
305
科目区分
展開科目
履修条件
※「ありえない」ことですが、昨年度はゼミ参加者数の上限にまで達してしまいました(笑)。そこで今年度は、参加申込書の「志望理由」により、実質的な選抜をおこないます。参加希望者のみなさんは、以下のシラバス全体を細部まで読み込んだ上で、志望理由を書いてください。

(1)「問い」を欲望している方、あるいは「問い」を適切に「かたち」にできるようになりたいという意欲をもっている方。

(2)言葉の力を向上させたいという意欲を持っている方。

(3)問題の「現場」を「楽し」める方(現場には厳しい現状と、どうしようもない無力感と、しかし魅力的な人々との出会いがあります)。

(4)ゼミ履修上の「義務」を果たそうと誠実に努力する方。なお09年度は、毎年おこなっている5大学合同ゼミのホスト校を、西南大の田村ゼミと一緒に担当します。100人を超える学生が2泊3日の合宿をおこなう催しです。この催しの準備も重要な活動になります。

(5)昨年度に続き09年度も、毎月1回(ゼミの時間とは別)、福岡の若手弁護士のみなさんと、具体的な社会問題を、当事者の方の声を聞く機会を交えて学びます。昨年度は、薬害肝炎問題、在日コリアン無年金問題、野宿者・ネットカフェ難民問題、北九州の生活保護問題(申請拒否と餓死事件)、中国残留孤児・婦人問題などをとりあげました。ですから法曹志望の方も歓迎します(ゼミのメーリングリストとは別に、弁護士の方々とのメーリングリストがあります)。

(6)単位はいらないけれど参加したいという方、大歓迎です。例年1〜3名は単位のいらない参加者です。
授業の目的
(1)「政治」と聞いて、多くのみなさんは、政治家・政党・国会・内閣などを思い浮かべると思います。政治とは政府をめぐるできごとだという「予断」、すなわち「国家と社会」モデルが当然の前提とされているのは、「国民国家」の「国民」として、私たちが規律・形成されてきたからだと言えるでしょう。

(2)しかしグローバル化は、一方で国境を超えるやりとりによって、他方でそのようなやりとりがもたらす「現場(ローカル)」の変容によって、国民国家を揺るがしています。したがって私たちは、国家と社会という二元論モデルを前提に「政治」を政府(国家)に囲い込むのではなく、「社会の政治」をも視野に入れて、「政府の政治」を再構成する必要に迫られています。

(3)この演習では上記のような認識を前提に、現代の日本における「政府の政治」と「社会の政治」の現状を検討します。政治過程や政党制の変化を扱うテキストと、社会の変貌を扱うテキストを併読します。さらに具体的な事例に着目したテキストとともに、抽象度の高い理論的テキストも読むことで、複数の領域の間、具体と抽象の間を往復する力をつけてもらいます。

(4)ゼミではテキストの輪読と討議、現地調査・合宿を通じて検討していきます。そしてその過程で、報告・司会・討論・聞き取り調査・文書報告の作成など、職業生活でも必要になる「汎用的」な技術を向上させます。
授業の概要・計画
書をもって街(現場)に出る、これが基本的に私たちのゼミのやり方です。

通常のゼミ(年間に10冊程度のテキストを読破)の他に、毎月最初のゼミでの書評会(最低5冊の読書リストとお薦め1冊の紹介)、1年間に3〜4回程度のゼミ論構想発表会などをおこない(かつ希望者は毎月の弁護士との学習会)、それらの合間に現地調査・合宿をおこなうのが、私たちのゼミの「活動量」です。

09年度は、下記のような現地調査・合宿を計画しています。
※なお08年度より、文部科学省の補助金をもらえるようになったため、現地調査・合宿の参加個人負担は、2泊3日の場合でも3〜4千円以内に抑えられる見込みです。

(1)福岡県にある航空自衛隊築城基地をめぐる地域社会の政治を、ひとつの事例として、2回(夏休み前と、秋)現地調査・合宿をおこないます。
(2)比較のために沖縄県の基地問題を検討する沖縄現地調査・合宿をおこないます(夏休みの9月)。
(3)12月に5大学合同ゼミを、築城基地周辺でおこないます。
(4)3月に、ゼミ論合評合宿を福岡県下の村(中山間地域)でおこないます。

なお公式のゼミ現地調査・合宿とは別に、08年度は弁護士のみなさんとの合宿を1回、韓国貧乏旅行(すべて込みで、2泊3日、3万円超の費用!)を1回おこないました。
こちらは有志による自主企画ですので、補助金は適用されませんが、いずれも面白い企画でした。
おそらく今年も有志の提起による、自主ゼミや合宿、海外旅行があるものと思います。もちろんそれらは希望者のみの参加で「義務」ではありません。
授業の進め方
(1)授業の内容はテキストの輪読・討論と、現地調査の実施と討論の二つに大きく分けられます。

(2)通常の授業では、司会者の進行により、テキストを利用して報告者が報告(レジュメ準備)し、それにもとづいて討議します。

(3)現地調査・合宿は、その都度に幹事を決定し、幹事を中心に約束のとりつけ、宿所の確保などをおこない実施します。

(4)以上の活動に織り交ぜて、ゼミ論作成のための討議もおこないます。
教科書・参考書等
(1)山口二郎『戦後政治の崩壊』岩波新書
(2)吉見俊哉『ポスト戦後社会』岩波新書
(3)朝日新聞「分裂にっぽん」取材班『分裂にっぽん』朝日新聞社
(4)山田昌弘『少子社会日本』岩波新書
(5)松原隆一郎『消費資本主義のゆくえ』ちくま新書
(6)本山美彦『金融権力』岩波新書
(7)バウマン『リキッド・モダニティ』大月書店
(8)森政稔『変貌する民主主義』ちくま新書
(9)広井良典『定常型社会』岩波新書
成績評価の方法・基準
(1)ゼミ論文(1万字以上):40点
年に3回ほどゼミ論文構想検討会をおこないます。また原則として10月締め切りの『学生法政論集』に応募してもらい、それを元にゼミ論を完成してもらいます。

(2)ゼミでの報告:40点
ゼミでおこなった報告の内容を総合して判断します。

(3)書評会での発表:20点
毎月1回の書評会で、5冊以上の「ノルマ」が達成されているかを基準にします。

※無断欠席と無断遅刻は、大幅に減点します。欠席や遅刻は、原則として前日までにメーリングリストで届けなければなりません。
その他(質問・相談方法等)
(1)ゼミの相談はメーリングリストでもおこないます。参加者は携帯以外のメールアドレスを持ってもらう必要があります。

(2)授業時間の「延長」が恒例になっていますので、ゼミの後の時間に授業やバイトがない方が良さそうです。
過去の授業評価アンケート