政治学史演習

最終更新日:2017年8月21日

授業科目名
政治学史演習
標準年次
3・4
講義題目
政治思想史研究
開講学期
通 年
担当教員
木村 俊道
単位数
4単位
教  室
4研
科目区分
展開科目
履修条件
政治と人間の問題を「歴史・思想・哲学」の視点から、深く、地道に考えてみたい方。サブゼミ希望者も歓迎します。
授業の目的
自分の眼で自分の表情や背中を見ることができないように、現代社会が直面する問題の本質は、実は、現代の視点からは明確に捉えることができません。

本演習では、現代文明社会の知的基盤であるギリシア・ローマ以来の西洋政治学の「古典」を、時間をかけてじっくりと読み解きます。この作業を通じて、

@「デモクラシー」や「自由」などの政治的理念の系譜に関する歴史的な洞察力
A21世紀に生きる市民としての教養やリーダーとしての構想力
B現代社会において「善き生」を営むための知恵
を身につけることを目的とします。

本演習では同時にまた、次のような学問的な「資質」や「型」を身体的に修得することを目指します。

@古典的テクストの高度な読解能力の獲得
A論理的・規範的な思考力と学問的なセンスの練磨
B論文の作成や演習での報告・討論を通じた学術的な技芸の修得
授業の概要・計画
【概要】
プラトンやアリストテレスをはじめとるする過去の思想家のテクストは、見えにくい「時代の背中」を映し出す、歴史の知恵の宝庫です。毎回のゼミを通じて、1冊のテクストに刻み込まれた作者の緻密な論理や知的な苦闘を明らかにしながら、自己の思考力を練り上げ、発想をより豊かにしていくことが求められます。

今年度は、木村が通年で担当するはじめての高年次ゼミになります(昨年までは関口先生との合同ゼミでした)。

過去4年間では、モンテスキュー『法の精神』、ハミルトン、ジェイ、マディソン『ザ・フェデラリスト』、ヒューム『政治道徳文芸論集』(+英語版)、バーク『フランス革命の省察』といった骨太の作品を読破しました。

【計画】
・前期はトクヴィル『アメリカのデモクラシー』(1835,1840)を読みます。「アメリカにアメリカを超えるものを見た」彼の作品は、デモクラシーや自由や平等の理念だけでなく、アメリカをはじめ、混迷する現代社会の原像を歴史内在的に理解するための最適の古典です。

「すべてが新しい世界には新しい政治学が必要である」(第1巻上16頁)

・後期はプラトンを読む予定です。テクストの候補は『ソクラテスの弁明』『ゴルギアス』『政治家』『国家』『法律』です。以後何年かかるか分かりませんが、西洋政治学の古典と名著をギリシア・ローマから現代に至るまで順に、ひとつひとつ丁寧に読み潰す予定です(うまくいけば、来年度はアリストテレスになります)。

・また、この演習では、1年間の集大成としてのゼミ論文の執筆が求められます。前期末に研究計画の発表、後期のはじめに中間報告、年度末に最終報告と原稿の提出が課せられます。
授業の進め方
毎回テクストの範囲を決め、担当者の報告をもとに参加者全員で討論します。

なお、演習は★4月23日から開始します(4月16日は休講です)。初回は顔合わせとイントロダクションです。4月30日に補講を考えています。

なおまた、古典や名著を用いた教育プログラムは近年、リーダー育成の一環として、中央省庁の課長クラスを主な対象にした人事院公務員研修所や、企業のエグゼクティブを対象とした日本アスペン研究所においても実施されています。後者のセミナーへの参加経験をもとに、「アスペン・メソッド」の大学教育での応用も考えています。
教科書・参考書等
【トクヴィル】
・『アメリカのデモクラシー』全4冊(松本礼二訳、岩波文庫、2005, 2008)
・『旧体制と大革命』(小山勉訳、ちくま学芸文庫、1998)
・『フランス二月革命の日々−トクヴィル回想録』(岩波文庫、1988)

【参考書】
・小山勉『トクヴィル−民主主義の三つの学校』ちくま学芸文庫、2006
・宇野重規『トクヴィル−平等と不平等の理論家』講談社選書メチエ、2007年
・宇野重規『デモクラシーを生きる−トクヴィルにおける政治の再発見』創文社、1998
・河合秀和『トックヴィルを読む』岩波書店、2001
・松本礼二『トクヴィル研究−家族・国家・宗教とデモクラシー』東大出版会、1991

【プラトン】
・『プラトン全集』全17巻+別巻(田中美知太郎他編、岩波書店、1974-1978)
・『ソクラテスの弁明・クリトン』(久保勉訳、岩波文庫、1927)
・『ゴルギアス』(加来彰俊訳、岩波文庫、1967)
・『プラトン書簡集』(山本光雄訳、角川文庫、1970)
・『国家』全2冊(藤沢令夫訳、1979)
・『法律』全2冊(森進一他訳、岩波文庫、1993)

【参考書】
・廣川洋一『ギリシア人の教育』岩波新書、1990/『イソクラテスの修辞学校』岩波書店、1984/『プラトンの学園』講談社学術文庫1999
・佐々木毅『プラトンの呪縛』講談社学術文庫、2000/『プラトンと政治』東大出版会、1984
・ポパー『開かれた社会とその敵』全2冊(内田詔夫他訳、未来社、1980)
・藤沢令夫『プラトンの哲学』岩波新書、1998
・納富信留『プラトン−哲学者とは何か』NHK出版、2002/『哲学者の誕生』ちくま新書、2005
・ジュリア・アナス『プラトン』岩波書店、2008

【その他】
・岡崎晴輝・木村俊道編『はじめて学ぶ政治学−古典・名著への誘い』ミネルヴァ書房、2008
・九州大学政治哲学リサーチコア編『名著から探るグローバル化時代の市民像』花書院、2007
成績評価の方法・基準
@ゼミ論文および、A通常のゼミに対する取り組み方(報告や討論への参加、ゼミ運営への貢献等)により総合的に評価します。
その他(質問・相談方法等)
政治学史(前期)や政治理論入門(後期)、政治外国書講読(前後期)を併せて受講することが望まれます。
過去の授業評価アンケート