民法演習

最終更新日:2017年8月21日

授業科目名
民法演習
標準年次
3・4
講義題目
民法(財産法)の重要問題
開講学期
通 年
担当教員
赤松 秀岳
単位数
4単位
教  室
207
科目区分
展開科目
履修条件
 民法の基本的知識を有することが望ましいが、ゼミに受講開始時に民法全科目を履修している必要はありません。
 ゼミやグループ討論で物怖じせず、自分の考えを述べるなど積極的な参加ができる(してみようと努力する)人の受講を希望します。
 このゼミの基本方針は、次の通りです。
 民法の学習では、「読んで覚える」ことは単なる出発点で、「討論し考える」ことが重要です。他者と対話しつつ自分自身で考える中で会得したことは、自身の中にしっかりと根付きます。また「発見のおもしろさ」を経験することは、もっと勉強してみよう、というモチベーションを高めることにもつながります。こうして将来、法的素養と応用力・創造力を併せ持った人材となるための基礎が身に付きます。
 以上の基本方針に共感する人に、このゼミを受講して欲しいと思います。
授業の目的
 民法財産法を中心に、(とくに3年次生については)基本的知識を踏み固めると同時に、「法的に考える」力の養成に資するような重要問題を判例に即して検討します。各回の問題・判例につき、事実との関連で、なぜそのような判断が導かれたのか、そのような問題が生じる背景は何か、判例に対する批判的な学説があれば、考え方が分かれる理由はどこにあるのか、自分自身はどのような立場をとるか、などにつき、グループ討論とゼミ本番での討論を通じて検討します。
授業の概要・計画
 以下の通り、なるべく民法財産法の全体を網羅し、さらに最新の重要判例もカバーできるように、問題と判例を取り上げます。
第1回 ガイダンス・クラス作りとディベートの体験
第2回 無権代理と相続(最判平成5年1月21日民集47巻1号265頁)
第3回 民法92条2項と110条(最判平成18年2月23日民集60巻2号546頁)
第4回 表見代理(最判昭和44年12月18日民集23巻12号2476頁)
第5回 消滅時効(最判平成元年12月21日民集43巻12号2209頁)
第6回 背信的悪意者からの転得者(最判平成8年10月29日民集50巻9号2506頁)
第7回 民法177条と時効取得(最判平成18年1月17日民集60巻1号27頁)
第8回 即時取得(最判平成12年6月27日民集54巻5号1737頁)
第9回 公道に至るための他の土地の通行権(最判平成2年11月20日民集44巻8号1037頁)
第10回 共有関係(最判平成15年7月11日民集57巻7号787頁)
第11回 抵当権に基づく妨害排除請求(最判平成11年11月24日民集53巻8号1899頁)
第12回 物上代位(最判平成10年1月30日民集52巻1号1頁)
第13回 法定地上権(最判平成19年7月6日民集61巻5号1940頁)
第14回 共同抵当(最判平成4年11月6日民集46巻8号2625頁)
第15回 利息債権(最判平成15年7月18日民集57巻7号895頁)
第16回 債権者取消権(最判平成10年6月12日民集52巻4号1121頁)
第17回 債権譲渡(最判平成5年3月30日民集47巻4号3334頁)
第18回 数量指示売買(最判平成13年11月27日民集55巻6号1380頁)
第19回 賃貸借(最判昭和41年12月11日民集20巻8号1640頁)
第20回 請負(最判平成9年2月14日民集51巻2号337頁)
第21回 不法原因給付(最判平成20年6月10日判時2011号3頁=民集登載予定)
第22回 過失(最判平成7年6月9日民集49巻6号1499頁)
第23回 使用者責任(最判平成3年10月25日民集45巻7号1173頁)
第24回 人身損害(最判平成8年4月25日民集50巻5号1221頁)
第25回 「人生被害(ハンセン病)」(熊本地判平成13年5月11日判時1748号30頁)
第26回 素因減責(最判平成4年6月25日民集46巻4号400頁)
授業の進め方
 ゼミ募集の結果もし相当数の受講者があれば、次のように行ないます。
(1)グループによる事前討論
 まず、ゼミの受講者全員をいくつかの班に分けます。各班ごとに順番に報告を担当します(班の中でさらに報告者は固定せず、ローテーションしてください)。報告が当たっている班は事前に検討会を行い、報告レジュメを作成し、ゼミ当日の数日前(具体的に何日前とするかは、作業の負担との関係もあるので、受講者と話し合って決めます)には、レジュメを担当教員宛提出するとともに、他の受講者全員にも事前配布します(そのためのHPを立ち上げます)。報告が当たっていない班は、このように事前配布されたレジュメをもとに、ゼミ当日までに必ず最低1回は事前検討会を行って、ゼミ本番に出席します。いうまでもなく、ゼミ本番でのディベートが活発になるよう、このようなシステムを採ります。
(2)教場での授業
 ゼミ当日の教場では、報告を担当する班から選ばれた司会者が進行係を務め、レジュメを踏まえて問題提起がなされます。他の各班の受講者も事前討論をしており、当日の問題について一定の知識と関心を共有しているはずなので、それを前提に、全体討論と、場合によっては各班ごとの再討論が教場でなされます。以上を通じ、問題を深化させ、掘り下げていきますが、これも必要に応じ(とくに民法全部の学習をまだ終えていない受講者を念頭に置いて)、担当教員の側から、ミニ・レクチャーが挟まれることもあります。
(3)ライティングの課題―書く力の養成―
 自分の意見や考えを誤解されることなく正確に、自分の言葉で文書化できるということも、法曹としては不可欠の素養・能力です。そこで、このゼミでは、ゼミで取り上げた問題、あるいはそれ以外の問題で、自分の関心がある民法上の問題について、問題は何か、何故そのような問題が生じるのか、自分はどう考えるか、などにつき、自分自身の言葉で文章化して提出するライティングの課題を課します。提出された課題については、添削をして返却します。また、受講者のこのゼミ以外の勉強や活動になるべく影響がないよう、ライティングの課題は、夏休みを利用して作成してもらう予定です。そして、できればゼミ論集に纏める予定です。
教科書・参考書等
 授業概要・授業計画にあげた各回の判例とその解説(判例百選や調査官解説、判例評釈)のほか、各種の民法基本書。
成績評価の方法・基準
 ゼミでの報告・討論によって、このゼミが目標とする「法的に考える」力を各受講生がどのように習得しているか、およびライティングの課題を通じて評価します。
その他(質問・相談方法等)
 担当教員は、わが国における法科大学院制度が発足してからこれまでずっと、主として法科大学院での民法教育と法曹養成に従事してきました。この経験を活かして、学部における本ゼミでも、法科大学院への進学も視野に置きますが、もちろん法科大学院進学以外の進路(公務員・民間企業、あるいは司法書士など)を希望する方にも、有益なゼミとしたいと思います。
過去の授業評価アンケート