●コアセミナー【法政基礎演習 I 】

最終更新日:2017年8月21日

授業科目名
●コアセミナー【法政基礎演習 I 】
標準年次
1
講義題目
学校教育をめぐる憲法問題
開講学期
前 期
担当教員
村西 良太
単位数
2単位
教  室
403
科目区分
基幹教育科目
履修条件
このゼミは、「とにかく出席するだけで楽に単位をとりたい」という人には向いていません。難解な文章と向き合い、ゼミ生どうし活発に意見を交換し、自身の論理的思考力を高めようと考える意欲的な学生を求めます。
授業の目的
【コアセミナーの共通目的】
 このコアセミナー(法政基礎演習T)は、少人数でのゼミ形式を通じて、以下の4点にわたる勉強の「型」や「フォーム」を体得することを目的としています。

(1)情報の集め方について学ぶこと(リサーチ能力)
(2)情報の分析の仕方について学ぶこと(分析能力)
(3)議論の方法について学ぶこと(ディスカッション・プレゼンテーション能力)
(4)自分の意見を説得的に文章にまとめる技術について学ぶこと(レポート・論文作成能力)

【このゼミの目的】
 以下に詳述するとおり、本演習では裁判例を取り上げますが、そこに書かれている内容を完璧に理解することがここでの目的ではありません。それよりも、「どこが分からないのか」、「何を知りたいのか」、明快に問い質す力を磨いてほしいと思います。
 また、裁判の当事者のうち、「いずれの主張を勝たせるか」という「結論」よりも、むしろそこに至る「理論構成」に着目する習慣を少しずつ身につけてもらいたいと考えています。
授業の概要・計画
 公教育をめぐって実際に争われた裁判例を素材に、「憲法」という学問領域の奥深さを味わってもらおう、というのが本演習の基本構想です。つい先日まで高校生活を送っていた人も多いと思いますが、たとえば次の諸点について、皆さんはどのような考えをもっているでしょうか。

・校則で髪型やスカートの丈まで規律することは許されるか。たとえば男子の髪型を「丸刈り」に統一する校則があるとして、これに違反した生徒を出席停止とすることは認められるか。

・ある生徒が、真摯な宗教上の理由により、体育の授業における武道の実技を欠席したいと申し出てきた。当該体育の教師は、この申し出にどのように対応すべきか。

・卒業式や入学式において「君が代」の斉唱を義務づけることは、生徒の権利、または教師の権利という観点から、いかに評価されるべきか。

 この具体例はいずれも、実際に裁判所に持ち込まれた係争の一例ですが、唯一の「正答」を準備できるような問題ではありません。裁判所によって下された結論に、多くの学者が異を唱えている事例もあれば、なかには、下級裁判所と最高裁判所との間でまったく結論が割れてしまった事例もあります。

 本演習では、このように法律学の結論がけっして一つではないことを踏まえたうえで、ひとつの裁判例を複数回にわたって(下記のように多いときで3回にわたって)丁寧に検討したいと考えています。
 
 第一に、事実関係を整理し、当事者の主張を洗い出したうえで、皆さんが裁判官であればいかなる理屈で、どのような判決を下そうとするか、意見を出しあってもらいます。

 第二に、裁判所の判決を繰り返し読んでもらいます。理解の難しいところがあれば、議論を通じてこれを解決したうえで、各自の意見に照らし合わせて判決の「評価」に踏み込んでみましょう。

 第三に、下級裁判所と最高裁判所で判決が大きく割れている場合、または裁判官の間で見解が大きく対立している場合には、さらにもう一回時間をとって、いずれの理論構成がもっとも説得力に富んでいるか、みんなで議論したいと思います。

 次に、大雑把な授業計画を示しておきましょう。

 第1回は、まず自己紹介をしてもらった後、ゼミで取り上げる裁判例と各回の報告担当者を決定します。参加人数にもよりますが、各回に2〜3人の報告担当者を割り当てる予定です。

 第2回および第3回は、教員の準備した資料に基づきガイダンスをおこないます。レジュメの作成方法、文献探索の仕方、さらにはこのゼミにおいて必要となるであろう憲法学の基本的な知識を確認します。後者については、第1回のゼミで配布する予習プリントを解いてきてもらって、参加者各位に見解を求めるかたちで進める予定です。

 第4回以降は、いよいよ本格的な「ゼミ」に移ります。詳細については、次の「授業の進め方」をご参照ください。
授業の進め方
ゼミ(演習)と呼ばれる授業はいずれもそうですが、参加者による報告とそれに基づく討論が中心となります。

(1) 報告担当者は、報告内容をまとめた「レジュメ」を作成し、これに沿って自身の問題意識(あるいは争点となりそうなポイント)を発表します。レジュメは報告の1週間前のゼミにおいて、参加者全員に配布してください。

(2) 報告が終わったら、参加者各位が十分に理解できなかったところを質したり、報告者によって提示された争点について自由に見解を述べ合ったりします。ここで必要となる司会者についても、ゼミ生に委ねます。

(3) 報告者は、上記の討論を経て、自分の報告に何が足らなかったのか、当該論点につき自分はどのように考えるか、もういちど深く考えてレジュメに加筆修正をほどこしてください。その成果を、夏休みのレポート課題として提出してもらいます。
教科書・参考書等
・憲法の教科書として、芦部信喜=高橋和之補訂『憲法〔第4版〕』(岩波書店・2007年)を指定します。このゼミで参照を指示することはさほど多くありませんが、法学部生にとって「必携の基本書」というべき一冊ですから、この機会にかならず購入してください。

・西原博史『良心の自由と子どもたち』(岩波新書・2006年)を参考書(というよりこのゼミの基本書)として使用します。初回のゼミ(4月17日)までに各自入手し、(可能であれば)通読しておいてください。
成績評価の方法・基準
ゼミにおける報告、発言、および夏休みに提出してもらうレポート課題を総合的に評価します。無断での遅刻・欠席は認められません(単位を認定しません)。
その他(質問・相談方法等)
・何か分からないことがあれば、メール(muranishi【アットマーク】law.kyushu-u.ac.jp)で気軽に尋ねてください。研究室に来ていただいても構いませんが、その場合には、事前に在室の時間を確認していただく方が確実でしょう。

・担当教員は、ちょうどこのゼミの直後に、3・4年生向けの憲法演習を開講しています。正規のゼミを合同で開くことはむろんありませんが、何らかの形で、双方の参加者の親睦を図っていきたいと考えています。
過去の授業評価アンケート