●外国法律書講読(英語)

最終更新日:2017年8月21日

授業科目名
●外国法律書講読(英語)
標準年次
2・3・4
講義題目
文化政策関連英語文献講読
開講学期
後 期
担当教員
小島 立
単位数
2単位
教  室
305
科目区分
基盤科目
履修条件
積極性溢れる受講者の参加を希望します。なお,本授業は,大学院法学府修士課程の「国際関係法学外国書講読第二」との合併授業です。

受講人数を事前に把握したいと考えますので,参加を希望される方は,2009年9月28日(月)までに,小島(メールアドレスは,kojima[アットマーク]law.kyushu-u.ac.jp)までご連絡下さい。
授業の目的
本授業では,「文化政策と法」に関係する英語文献を講読します。「文化政策と法」に対する理解を深めるとともに,外国語(英語)能力の涵養を目指します。
授業の概要・計画
(授業概要)

「文化政策」とは,芸術や文化に関する政策のあり方を論じる学問領域です。文化政策には,法学,政治学,経済学,社会学,歴史学,考古学,美学芸術学,芸術工学などの様々な学問分野が関係し,複合領域の色彩を強く帯びています。

論じられるテーマも多様であり(例えば,指定管理者制度,文化施設への補助金の削減問題,アートNPO,企業メセナ,著作権政策,「創造都市」など),学問としては発展途上の段階にあるといえます。しかしながら,逆にそれは,文化政策という学問領域が,理論面と実践面の双方で,大変に興味深い「宝の山」であるということを示しています。

本授業では,「文化政策と法」に関係する諸問題のうち,芸術に対する助成のあり方を論じた,Marjorie Garber, Patronizing the Arts (Princeton University Press 2008)を講読します。

本書では,芸術に対する助成のあり方について論じています。洋の東西を問わず,芸術家には常に「パトロン(庇護者)」がいました。それは,芸術家が市場経済社会の中で自立することを求められている現代社会においても一定程度妥当します。現代においては,芸術施設や芸術団体の最大のパトロンの1つは,私たち「納税者」です。

近時の厳しい経済情勢,財政情勢の下,芸術に対する助成や支援のあり方は,大きな曲がり角を迎えています。例えば,橋下府政の下で,「大阪センチュリー交響楽団(大阪府立芸術文化振興財団)」や「ワッハ上方(大阪府立上方演芸場)」に対する大阪府の支援打ち切りが議論されてきたニュースは,メディアを通じて大きく取り上げられましたので,皆さんもご存知のことと思います。

芸術に対する助成をめぐっては,理論的にも多くの問題があります。例えば,@ポップ音楽にはほとんど助成が行なわれないのに対し,クラシック音楽や古典芸能に多大の助成(その源泉の多くは税金)がなされるのはどうしてなのか,A芸術団体への寄付金に税制優遇を認めるとはどういうことなのか,B「企業の社会的責任(CSR)」が強調される中で,企業の行なう「メセナ」活動(フィランソロピー)にはどのような問題点があるのか,C公金からの助成である以上,事後評価が求められるのは当然であるが,その基準はいかにあるべきか(助成の結果生み出された芸術の「質」を問うのか,それとも市場(マーケット)での売上げといった「量」的判断を重視するのか)など,未解決の理論的課題は非常に多いといえます。

本授業では,芸術助成のあり方という解決困難な問題について,本書の講読を通じ,受講生の皆さんと一緒に考える機会を持てればと思っています。

(授業計画)

本書は,序論と本論を合わせて,全部で200頁ほどありますので,毎回15〜20頁前後を読んでいくことになります。分量が比較的多いことから,授業時間を毎回15〜20分ほど延長することになると思います。さらに,授業進度を勘案し,補講を設定することもあり得ますので,予めご了承下さい。

授業計画は以下のとおりです(11月25日(水)は,授業担当者が海外出張のため,休講とさせていただきます)。

第1回(9/30): Preface (pp.XI-XV)
第2回(10/7): PP.1-17
第3回(10/14): pp.17-31
第4回(10/21): pp.32-50
第5回(10/28): pp.50-65
第6回(11/4): pp.65-82
第7回(11/11): pp.82-96
第8回(12/2): pp.97-113
第9回(12/9): pp.113-133
第10回(12/16): pp.133-150
第11回(1/13): pp.150-164
第12回(1/15・2限〔補講〕): pp.164-177
第13回(1/22): pp.178-196
第14回(1/25・3限〔予備日〕): 進捗状況次第で補講の有無を決定します。
授業の進め方
1.概要

講読において,特に担当者を決めることは致しません。また,文章の全訳を求めることはありませんが,文章のまとまり(意味の固まり)を自分で把握し,その要約を行なって下さい。

2.予習時の留意点

(1)予習の際,何が文章の主題として取り上げられているのか,何と何が対比(比較)して書かれているのか,従前の問題状況はどういった内容で,筆者はそれに対してどのような分析を加え,従来の考え方とどのように違った意見を持っているのか,といった点について,意識的に注意を払っていただきたいと思います。

(2)これまでの担当教員の経験から申し上げますと,学生の皆さんは,個々の短熟語の意味を辞書で調べることに意を用いすぎ,一定の長さの文章が固まりとして何を言っているのかを把握することが苦手であるような気がします。そのような「木を見て森を見ない」状況に陥らないように気をつけながら,予習を行なって下さい。

(3)重要な法的概念について,授業担当者が質問を行なうこともありますので,丁寧に予習していただきたいと思います。

3.授業時間について

前述したとおりですが,毎回,それなりの分量を講読しますので,授業時間を若干延長することもあります。予めご了承下さい。
教科書・参考書等
1.著作権の関係上,参加者全員に本1冊を丸々コピーしてお渡しすることはできません。講読する文献を文系生協書籍部に用意致しますので,参加者は各自購入した上で授業に臨んで下さい。価格は,2,300〜2,400円前後と聞いております(2009年1月現在)。

2.授業には,英和辞書(電子辞書でも可)を必ず持参して下さい。

3.授業担当者の外国語教育に対する基本的な考え方を知る上での参考文献を,法学部の「コアセミナー(法政基礎演習1)」(2007年度前期・金曜4限)のシラバスに記していますので,関心のある方は御覧いただきたいと思います。

4.文化政策についての基本的知識を得たい場合には,後藤和子編『文化政策学――法・経済・マネジメント』(有斐閣,2001年),伊藤裕夫=片山泰輔=小林真理=中川幾郎=山崎稔恵『新訂 アーツ・マネジメント概論』(水曜社,2004年),池上惇=植木浩=福原義春編『文化経済学』(有斐閣,1998年)を参照して下さい。

5.本演習の内容に直接関係する参考文献として,高階秀爾『芸術のパトロンたち』(岩波新書,1997年),海野 弘『パトロン物語――アートとマネーの不可思議な関係』(角川書店,2002年),ハンス・アビング(山本和弘訳)『金と芸術――なぜアーティストは貧乏なのか』(grambooks,2007年),企業メセナ協議会『なぜ,企業はメセナを行なうのか――企業とパートナーを組みたいあなたへ』(企業メセナ協議会,2000年)などがあります。
成績評価の方法・基準
授業への出席,平素の態度により評価を行います。自発的に発言がない場合には,こちらから適宜指名し,発言していただくことにします(その際に,発言者の氏名を尋ねます)。

つまり,発言回数,発言内容などが成績評価に反映されることになります。従って,積極的な発言がない場合には,当該参加者には自ずと低い成績評価しか与えられないことは,予めご了解下さい。
その他(質問・相談方法等)
ご不明な点があれば,小島までお尋ね下さい(メールアドレスは,kojima[アットマーク]law.kyushu-u.ac.jp)。
過去の授業評価アンケート