●法政基礎演習 II

最終更新日:2017年8月21日

授業科目名
●法政基礎演習 II
標準年次
2
講義題目
刑事法入門
開講学期
前 期
担当教員
内山真由美  
単位数
2単位
教  室
307
科目区分
入門科目
履修条件
特にありません。刑事法に関心のある方を歓迎します。
授業の目的
・刑事法を考えるための多面的なものの見方を身につけること
本演習の目的は、広い視野から刑事法に関わる問題を考えることにあります。それは、今後みなさんが刑法総論、刑法各論、刑事訴訟法、刑事政策、少年法など刑事法を深く学ぶための素地となるでしょう。
・問題探究に不可欠な能力を身につけること
まず、問題状況を把握するために欠かせないのは、情報を収集し解読する能力です。刑事法を広い視野から考えるという本演習の目的から、演習参加者には、相当量の文献を収集し読み込むことが求められます。次に、演習で報告を担当し、他の参加者との議論を経ることで、刑事法におけるさまざまな問題をさらに深く考える能力が身につくでしょう。最後に、本演習の成果としてレポートを作成・提出していただくことで、自身の見解をまとめる能力を身につけてもらいたいと思います。
授業の概要・計画
・授業の概要
例えば、ニュースを聞いていて、「なぜ精神障害者は罪に問われないのか」と疑問に思ったことはありませんか。触法行為に及んだ精神障害者が異なる取り扱いとなるのは、刑法典における責任主義を具体化した条文の一つ、39条の責任能力規定によるためです。では、精神障害者は本条によって罪に問われていないのでしょうか。実際は、多くの者が実刑となり刑事施設に収容されています。一方、実刑とならず刑事手続を離れた場合どうなるのでしょうか。「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律」および「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察に関する法律」によって、精神科病院に強制的に入院・通院させられます。では、そもそも、強制入院は日本国憲法から見て問題はないのでしょうか。また、歴史的および国際的に見て日本の精神科医療はどうでしょうか。このように、刑法39条に関する疑問には、さまざまな論点を踏まえてこたえる必要があります。以上は一例ですが、本演習では、刑事法に関する事柄を多面的に検討して行きたいと思います。
・授業計画
授業を、前半と後半に分けて行います。前半は、刑事法を広い視野から検討するための素材として、触法精神障害者問題をどのように考えるかということにテーマを設定し、論点をみなさんの感想をもとに抽出します。一方、後半は、演習参加者の刑事法に関わる興味関心によってテーマを設定しますので、ニュースなどで気になった刑事法に関する疑問などみなさんの積極的な提案に期待します。
演習の初回には、指定テキスト2冊(下記を参照のこと)を一読の上出席してください。感想をお聞きしますので、前もってテキストの中で気になったところなどに付箋を貼ったりメモ程度にまとめたりしておくことをおすすめします。
第1回目と第2回目は、みなさんの自己紹介をかねて、指定テキストに関する感想と刑事法への疑問点を述べてもらいます。その中で、担当教員が本演習の目的を説明し、第3回目以降の報告の担当と順番を決めます。
授業の進め方
第3回目以降は、報告担当者が作成したレジュメに基づいて報告を行い、出席者で議論します。報告の担当は、参加者の人数によりますが、数人からのグループで行っていただきます。報告は20分程度にまとめ、議論に多くの時間をあてたいと思います。前半のテーマを数回取り上げた後、演習初回にみなさんに出してもらった刑事法に関する疑問点を再度確認して後半のテーマを設定します(要望があれば前半のテーマを引き続き行ってもかまいません)。報告はグループ単位ですが、レポートは個人で作成してもらいます(5000字程度)。レポートは、前半のテーマに基づくもの、後半のテーマに基づくもの、または、演習で学んだことを踏まえて刑事法の別のテーマを取り上げて論じたもの、問いません。本演習の成果となるものをまとめてください。
教科書・参考書等
・指定テキスト
以下の2冊を演習の初回までに一読してください。
岩波明『精神障害者をどう裁くか』(光文社・2009年)740円+税
呉智英・佐藤幹夫編著『刑法39条は削除せよ!是か非か』(洋泉社・2004年)760円+税
・参考文献
指定テキストを刑事法からより深く考えるために、例えば、町野朔編『精神医療と心神喪失者等医療観察法』ジュリスト増刊(有斐閣・2004年)3,200円+税があります。
また、強制入院の問題を考えるにあたり、ハンセン病患者に対する強制隔離政策について、畑谷史代『差別とハンセン病』(平凡社・2006年)760円+税の一読をおすすめします。
後半に取り扱うテーマ設定のためには、内田博文・佐々木光明編『「市民」と刑事法(第2版)』(日本評論社・2008年)2,500円+税、そのほか、刑法、刑事訴訟法、刑事政策の教科書をご参照ください。これらについては特に挙げませんが、演習時に紹介します。
なお、雑誌論文など必要な資料は適宜配布します。
成績評価の方法・基準
試験は行いません。出席状況、報告内容、議論への参加状況、レポート内容を総合して評価します。
その他(質問・相談方法等)
質問などは、法学部第15研究室(TEL 092−642−3232)もしくはメールにて受け付けます。メールアドレスは初回演習時にお知らせします。
過去の授業評価アンケート