履修条件 |
特にありませんが、積極的に参加する意欲がある方、本演習で取り上げる内容に興味を持って臨むことができる方を歓迎します。 |
授業の目的 |
皆さんは、法律や判決が絶対的、不変のものだと思っていませんか。現実には、社会状況や新たな法整備が判決に影響を与えることがあります。あるいは逆に、判決によって法整備に影響を与えることがあります。本演習では、過払金の返還に関する判例の検討を通じて、判例変更がなされた過程を追い、解釈によってどのように判例理論が形成されていったかを学習することを目的とします。 また、判例の検討を通じて高年次における法律学の学習に必要な能力の習得を目指します。具体的には、 @判例を読むための基礎知識:法律学を学ぶ上で判例を読むことは必要不可欠な作業となります。判例のどこに何が書いてあるのかを理解し、今後の学習の土台を築きましょう。 A文献へのアクセス、分析能力:判例集はもちろんのこと、一般の法学文献や判例批評などへのアクセスの仕方など情報収集に必要な能力を身につけることができます。また、資料や文献との比較検討を通じて分析能力の向上を図ります。 B報告やレジュメ作成能力:判例を整理・分析した上で的確にレジュメにまとめて、わかりやすく説明するという作業を通じて、プレゼンテーション能力を養いましょう。また、議論の場で発言することによって、他者に自分の意見を伝える訓練をすることができます。 |
授業の概要・計画 |
【授業の概要】 本演習で扱う過払金とは、金銭消費貸借において借主が利息制限法所定の利率を超過して支払った利息(制限超過利息)を指します。近年では、借主に有利な判決が出ていることを受けて、過払金返還請求訴訟が急増していますが、借主に有利な判決が出されるまでには、長年にわたる解釈による緻密な判例理論の形成過程があります。このように、過払金の返還をめぐる問題は古くて新しいものです。 また、過払金に関しては、利息制限法、貸金業法、出資法という法律が制定されています。これら法律はいずれも平成18年に改正され、平成19年に施行された貸金業法を除いては、現在移行期にあります。このような大改正が行われるに至った背景には、過払金の返還をめぐる判例の蓄積があります。本演習では、その判例の一部を紹介しますので、それらの検討を通じて、解釈によって判例理論が確立していく過程を体感してもらえることと思います。
【授業の計画】 第1回 ガイダンス(自己紹介、演習の進行説明、報告分担など)、利息債務について 第2回 利息制限法の沿革、過払金返還請求訴訟の流れ 第3回・第4回(担当@) 過払金の元本充当を否定した判決(最大判昭和37年6月13日民集16巻7号1340頁) 第5回・第6回(担当A) 過払金の元本充当を肯定した判決(最大判昭和39年11月18日民集18巻9号1868頁) 第7回・第8回(担当B) 過払金の返還請求を認容した判決(最大判昭和40年11月13日民集22巻12号2526頁) 第9回・第10回(担当C) 一括弁済について返還請求を認容した判決(最三判昭和44年11月25日民集23巻11号2137頁) 第11回・第12回(担当D) 継続的貸付契約に関する判決(最二判平成15年7月18日民集57巻7号895頁) 第13回・第14回(担当E) ヤミ金融業者が元本の返還請求をできないとした判決(最三判平成20年6月10日民集62巻6号1488頁) 第15回 まとめ、近時の動向の整理など
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授業の進め方 |
第1回・第2回で前提知識を固め、第3回以降は、過払金に関する判例を、報告分担に従って報告してもらいます(【授業の計画】担当@〜E参照)。報告担当者(数名で1グループ)は、事前に判例を読み、事実と争点を整理してレジュメにまとめてください。そして、報告担当者が20分程度の報告を行い、それを受けて参加者全員で議論を行う形式で進めます。そのため、報告者だけでなく、その他の参加者も演習の準備をする必要があります。 演習で扱う判例には、未修の分野も出てくることが予想されます。そこで、一判例につき2回分の演習を割り当て、判例を精読します。具体的には、まず前半で事実関係を整理しつつ予備的知識の吸収に努め、後半では法律関係を中心に他の判例との関係を踏まえて議論してもらいます。新しい知識についても、報告者にはできる限り事前に調べて準備してもらいます。不足があれば、担当教員が補足説明を加える形で進めます。前半の演習終了後、担当教員が後半で検討すべきポイントを提示しますので、報告担当者は、それを参考にして、後半の準備に役立ててください。 |
教科書・参考書等 |
【教科書】 本演習の性格上、教科書を指定することはしませんが、民法の教科書(債権総論)と六法を持参してください。第1回・第2回はレジュメを配布します。
【参考図書】 ・西野喜一『法律文献学入門』(成文堂、2002年) ・鎌野邦樹『金銭消費貸借と利息の制限』(一粒社、1999年) ・小野秀誠『利息制限法と公序良俗』(信山社、1999年) その他は、適宜紹介します。 |
成績評価の方法・基準 |
平常点:80% 演習への取り組み(出席状況、報告内容、議論への参加)を総合的に評価します。
レポート:20% 各自が担当した判例について、演習での議論を踏まえて、レポートを書いてもらいます。 |
その他(質問・相談方法等) |
質問・相談等は、メール( sugao[アットマーク]law.kyushu-u.ac.jp )にて随時受け付けます。また、研究室へ直接訪問してもらっても構いません。そのときは、アポイントメントを取る方が確実です。 |
過去の授業評価アンケート |
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