国際政治学演習

最終更新日:2017年8月21日

授業科目名
国際政治学演習
標準年次
3・4
講義題目
国際社会の課題と論点
開講学期
通 年
担当教員
大賀 哲
単位数
4単位
教  室
三会
科目区分
展開科目
履修条件
○学ぶ意欲・向学心のある皆さん。未履修であれば、「政治学原論」(基盤科目)、「政治動態分析U発展【国際政治学】」(展開科目)などを併せて受講されることが望ましいです。

○本演習では受講生の主体性を重視しています。そのため、本演習でどのようなテーマに取り組みたいか、本演習を通じてどのような能力・知識を身につけたいのかを明確にしておいて頂けると有り難いです。

○ウェブ学習システム(WCT)を使用しますので、そうした学習スタイルに抵抗のない方(詳しくはhttp://webct.kyushu-u.ac.jp/を参照)

○サブゼミ受講・オブザーバー参加OKですが、あらかじめその旨ご連絡ください(できれば1月末まで)。またゼミ内での役割分担や主体性については正規受講生と同様のものを求めます。
授業の目的
■本演習のねらい

○本演習では「国際社会」を主たるテーマとし、政治学を中心に法学や社会学などにおける「国際社会」論をそれぞれ検討し、現代の国際社会を取り巻く課題と主な論点を学びたいと思います。「国際社会」に関連する文献を分野問わず幅広く取り上げる予定です。

○方針としては@特定のテーマについて関連文献含め、多様な視座を「比較」するというやり方、或いはA(関連文献を網羅することは意図的に避け、)特定の理論家ないし特定領域についての文献をインテンシヴに通読するというやり方、が考えられますが、これについては基本的に受講生の皆さんのご希望に従います。

■本演習の受講にあたって

○政治学の最も大きな特徴は、それが自然科学のような明確な秩序体系を持たず、多種多様な(時には相矛盾する)「概念」や「理論」の集合であるということです。しかし、大事なことはそれらの概念を「覚える」ことではありません。それらが「具体的には何を意味しているのか」を考えることです。

○政治学は一見、実用性の薄い理念・命題の集合のように捉えられがちですが、価値観の多様性や他者との関係など、現代社会に生きる上での示唆を与えてくれるものでもあります。そのため、本演習では詳細な知識よりも「物事の見方・考え方」を重視しています。以上を踏まえ、ゼミでは、「お勉強」するというよりは、問題意識を掘り下げ、それを提示する―つまり、自己の見解を客観的・論理的・説得的な形で問題提起した上で、討論・議論を行なう―技術を習得する場としたいと思います。

○他方、おそらく皆さんの大半は直接的な意味で「政治学」を必要としない職業に就かれることでしょう(余程特殊な職業に就かない限りは、政治学の「専門知識」を使う場面はそんなに多くはありません)。それを踏まえ、本演習では政治学や国際社会についての思考を深めながら、それを通じて論理的思考能力・論文作成能力を身に付ける訓練もしていきたいと思います。学問の世界に「一般的な定義」というものは存在しません。概念の定義は、定義をする人間の置かれている文脈(時代・地域・思想・世界観etc.)に依存します。政治学の概念を学ぶということは、「どのような思考過程を経れば、そうした定義を行なった人間と同一の結論に辿り着くのか」ということを論証していくことを意味します。論理的思考能力といっても、小難しいものでも奇抜なものでもなく、訓練すれば誰でも身につくものです。

*これは受講生の数と皆さんの「熱意」にも拠りますが、学術的な内容に止まらず総合的なコミュニケーション能力を向上させたいという希望があれば、演習にスピーチ(プレゼンテーション)・ディベート・ディスカッション・ワークショップなどを取り入れたいと思います。

■本演習における獲得目標
以下のうちの2つ〜3つ程度を本演習の獲得目標としたいと思います。

@「国際社会」についての先行する議論を整理し、主な課題・論点を把握する。

A同一のテーマ【国際社会】を異なったアプローチ(法学・政治学・社会学etc.)から学ぶことにより、多元的なものの見方や多様性を養う―これに加えて、物事を評価し・比較する際に必要な批判的視点も養いたいと思います。

B特定のテーマや理論についてインテンシヴに通読し、どのような論理構造から如何なる結論が導かれているのかを分析的に検討する。

C論文作成を通じて、独自に問題を設定し、リサーチを行ない、それを論理的一貫性・整合性をもった文章にまとめ上げる技術を習得する。

授業の概要・計画
○初回に受講生と相談の上、決定いたしますが、文献の輪読を基本とします。受講生の興味関心をもとに授業計画を立てたいと思いますので、このゼミでどういったテーマを取り上げたいのかを考えておくことが望ましいです。

○(勿論限度がありますが)実際に「現場」―たとえば人権、貧困、差別、文化共生、国際協力などの現場―を見に行くことも試みたいと思います。このことの趣旨は、単に「現場を見に行く」ということではなく、自身が抽象的に「概念」や「理念」として考えたいた事柄が現実社会の中でどのように作用し、構成されているのかを知るということです。幻滅するかもしれませんし、落胆するかもしれません(もしかしたら怒りを覚えてしまうかもしれません)。しかし、そうした矛盾や限界を知ることも政治学では大事なことです。世の中はそんなに「分かり易く」できてはいないものです。
授業の進め方
○基本的には、報告者+討論者を立てて指定文献を輪読します。また適宜、論文構想発表などを組み込みます。

○年に数回、外部講師(研究者、国際機関職員、実務家、メディア関係者)などをお呼びして講演会を行なうことを考えています。これ以外に(皆さんのご希望にもよりますが)国際機関、NGO、メディア、その他の公共団体などへの見学も行ないたいと思います。

○蛇足ですが、本に書かれている内容と同時にそれを書いた「人間」―その背景や時代状況、感性など―にも興味を持つようにしてみると良いかもしれません。前述のように本書から得られた知識を実際に「観察する(見に行く)」ことも政治学においては大切なプロセスです。
教科書・参考書等
適宜指示します。

受講生の希望にも拠りますが、最初の数回は次のうちのいずれかを輪読したいと思います。

・大沼保昭『国際法―はじめて学ぶ人のための』(東信堂)
・メイヨール『世界政治―進歩と限界』(勁草書房)
・馬場伸也『アイデンティティの国際政治学』(東大出版)

但し、これに拘泥するつもりはないので、輪読文献は受講生の興味関心に応じて柔軟に対応したいと思います。また、ゼミで読みたい文献がある場合には、ご提案+持ち込んで頂いて構いません(但し、学問的背景の薄いもの、単に時事ネタを取り上げたもの等は除きます)。
成績評価の方法・基準
毎回のプレゼンテーションやディスカッションを累積点で評価します。またゼミ論文の提出を単位取得の条件とします。
その他(質問・相談方法等)
○09年度は担当教員が前期に在外研究に出ていたため、ゼミは開講しませんでしたが、08年度は佐賀大学文化教育学部・高橋良輔ゼミ(国際政治学)と合同ゼミ合宿を行ないました。2010年度については詳細未定ですが、釜山大学政治外交学部との合同セミナーを現在検討中です(勿論、基本的には皆さんのご希望によります)。

○上記の通り今年度はゼミを開講していないため、オープンゼミは行ないません(というか行なえません)。ゼミについての質問・ご相談などはメールにてお願いします(togaのあとに@law.kyushu-u.ac.jpです)。また、テーマの選定やゼミの進め方について、よく分からないという方もお気軽にお尋ねください。

○政治学の基本的な知識について不安がある方は、ご相談頂ければ初学者向けの書籍などをご紹介いたします(また視聴教材もいくつか手元にあります)。お気軽にご相談ください。
過去の授業評価アンケート