履修条件 |
絶対条件ではありませんが、前期に開講される労働法の講義を履修することが望ましいのはいうまでもありません。労働法の演習ですので、労働法の基礎知識を身につけておくことにより、深い理解や活発な議論ができると思います。 疑問に思ったことをゼミの場できちんと発言しようという意欲を持っていること(間違っていたり、見当違いの意見でもケッコウです)。 |
授業の目的 |
ワーク・ライフ・バランスという言葉をよく耳にします。たとえば、「ワーク・ライフ・バランス憲章」などというものを策定され、様々な役所で様々な政策の指導理念として用いられています。しかし、この言葉は抽象的で曖昧なので、なんとなく胡散臭さもあります。そこで、本演習では、労働法の立法や政策を実現するうえで、ワーク・ライフ・バランスという言葉がどのような機能を果たすべきなのかについて、様々な角度から検証したいと思います。 |
授業の概要・計画 |
ワーク・ライフ・バランスの第1義的な政策は、子育て支援です。そこで、まず、子育て期における男性・女性の労働者の就労について、様々な統計資料を駆使して、その実態に迫ります。およそ法学部らしくない作業ですが、法的思考に入る前に、考察対象を客観的に分析することは必要です。手探りでもいいので、とにかく徹底的に調べるというのは、社会人になって、仕事をする上でも絶対に必要になります。 次に、実態が見えてきたところで、行政によってどのような政策が実施されているかを調べます。これは、厚生労働省だけでなく、経済産業省など様々な行政が行っています(よって、事業仕分けの対象になりますが)。ワーク・ワイフ・バランスの政策理念が、具体的にどのような政策に結びついているのか、それによって足りない施策は何なのかといったことを分析します。例えば、子育て支援としての金銭給付、休暇・休業の保障、短時間勤務制度の実施、在宅勤務制度の普及などがあります。また、労働法だけでなく、社会保障制度の面も検討する必要があります。専業主婦(夫)のメリット・デメリット、第3号被保険者の考え方の妥当性などなど。また、ライフは「生活」だけではなく、「命」の意味もあります。ワークで「命」を削るようなことがないようにするには、どうすればいいか。 そして、こうした施策を裏打ちする立法はどうなっているのか、今後どうすべきなのかについて考えていきます(できれば、政策提言ができるように)。
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授業の進め方 |
ワーク・ライフ・バランスに関して、毎回、ゼミ受講者に報告をしてもらい、議論します。また、この言葉の背景にある(政策目標としての)少子化対策という論点も重視します。例えば、報告テーマは、次のようなものが考えられます(あくまでも例です。ゼミ参加者が主体的にテーマを設定して報告してもらうことが重要です)。 ・夫の家事・育児時間はどのくらいか ・専業主婦(夫)は得か、専業主婦(夫)になりたいか ・バランスを考える前にライフが成り立つ所得はいくらか ・子どもを持つことは損か得か ・育休切りって何だ ・キャリアと子育て ・病気のときの保障 etc. 経済学的、社会学的、政治学的に議論することができますし、できるだけ多様な観点から、ワーク・ライフ・バランスについて議論したいと思いますが、最後は、法律学的にどのように考えるかという作業は必ずやります。 |
教科書・参考書等 |
参考文献をあげておきます。 山田昌弘『少子社会日本』(岩波新書) 野口やよい『年収1/2時代の再就職』(中公新書ラクレ) 牛窪恵『「エコ恋愛」婚の時代』(光文社新書) 大沢真知子『ワークライフバランス社会へ』(岩波書店) |
成績評価の方法・基準 |
出席状況、報告(レポート)内容、討論参加状況等によって、総合的に評価します。演習での学習は毎回出席することが前提となりますので、出席状況は特に重視します。毎回、報告担当者がゼミ参加者に担当テーマを講義するつもりで、しっかり準備してください。 |
その他(質問・相談方法等) |
オフィスアワーの時間にご質問・ご相談をお受けいたします。オフィスアワー以外でもかまいませんが、その場合、十分に時間がとれない場合があります。メールでお問い合わせいただいても結構です。@law.kyushu-u.ac.jpの前に、yamaをつけてください。
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過去の授業評価アンケート |
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