履修条件 |
(1)自分なりの目標・目的や問題意識を明確にもっていること(主観的要件)。 (2)毎回演習に参加できること(客観的要件)。 (3)現時点における刑事法(学)や刑事政策(学)に関する知識の多寡は全く問いません。
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授業の目的 |
このゼミの目標は、次の通りです。 (1)自分で問題を発見する能力の獲得 (2)文献調査・社会調査の遂行能力(自分で身体を動かして、現実の社会の問題を確かめる技術と能力)の向上 (3)自己表現能力(口頭発表、文章作成を論理的・説得的に行う技術と能力)の向上 (4)犯罪学・刑事政策学・刑事法学に関する基本的な知識の獲得 (5)基本的な知識と自分の社会経験を「使う」技術と能力の獲得 |
授業の概要・計画 |
(1)授業のテーマ このゼミでは、例年、刑事政策学や犯罪学上の重要問題を取り上げて、勉強しています。参考までに、過去4年間のテーマを掲げておくと、次のようになります。
2009年度:刑事制裁法の再検討 2008年度:少年非行から見た福祉と司法 2007年度:犯罪現象への対応と刑事司法・行刑制度のあり方 2006年度:心神喪失者等医療観察法をめぐる諸問題
今年度は、「少年事件から考える」をテーマにしてみてはどうかと考えています。少年事件「を」考える、ではなく、少年事件「から」考える、です。 少年事件は、様々な問題と関係します。法律に限っても、少年法はもちろん、児童福祉法・刑法・刑事訴訟法・「刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律」・更生保護法に、場合によっては憲法や民法などにも関係します。犯罪学や刑事政策にも、当然ながら関係します。少年事件「から」考える、というテーマでやってみたいのは、具体的な事件を目の前にして、そこにどのような法的・社会的問題があるのかを、できるだけ広く、そして深く考えていく、ということです。また、具体的な問題を解決するために、どの段階でどの法律のどの部分をどのように使えばよいのか、筋道を立て、自分と違う考えを持つ人を説得するための方法を考える、ということです。さらに、法律で解決できそうにない問題はどうすれば解決できそうなのか、法律の使い方を誤ることでどのような問題が生じうるのかを考える、ということでもあります。そのために、今年度のゼミでは、机上の事例ではなく、できるかぎり現実の事件を素材にしたいと考えています。
(2)検討の方法 特に意識して取り組みたいのは、「(法的)知識をいかに得るか」(だけ)ではなく、「(法的)知識をいかに使うか」ということです。知識は、それを「使う」ことまでできて初めて意味をもちます。具体的な事件から一般的な問題をながめ、そこからまた具体的な事件をみる、ということをできるだけ多くやってみたいと考えています。判例も学説も犯罪学上の知見も、具体的な事件のなかでとらえ、それがどこまでの射程をもち、そこからどのような主張を導きうる/えないのかを考えていこう、というわけです。 また、このゼミでは、例年通り、「街に出る」ことも重視します。正規の講義時間外であっても、フィールド・ワークに出かけることが多くあります。少年・刑事司法の現状がどうか確認したり、弁護士や裁判官のほか、家庭裁判所調査官、鑑別技官、法務教官、刑務官、保護観察官、保護司などが実際にどのような役割と機能をもっているのかを理解するための機会をできるだけもちたいと考えています。 年度末には各自の問題関心に基づいた「論文」を執筆してもらいます。論文の提出は、単位認定の要件にします。
(3)年間計画 詳細については、第1回目の講義の際に受講者の方と相談して決定します。 今年もできれば、夏休み期間中に調査旅行に出かけたいと思います(これまでの主要な調査結果は、ゼミ論集にまとめられていますので、学生情報サロンで読んでください。概略はhttp://www.law.kyushu-u.ac.jp/~takeuchi/semi/semi.htmlでもわかると思います)。 |
授業の進め方 |
<調査→報告→議論>を繰り返しながら問題の発見と調査を発展させていくというのが、このゼミの基本的な進め方です。 報告担当者には、文献・社会調査に基づいて(グルーピングを行った場合には、さらにサブ・ゼミを行った上で)、予め簡潔なハンドアウトを作成して頂き、プレゼンテーションを行ってもらいます。それを軸に、参加者全員で議論を行います。議論の中で新しく出てきた疑問や関連する問題については、さらに調査を進めてもらい、報告してもらいます。 詳細については、第1回目の授業の際に、受講者の方と相談して決定します。 |
教科書・参考書等 |
(1)春休みの間に必ず読んで(自分なりになにか考えて)くるもの 藤原正範『少年事件に取り組む――家裁調査官の現場から』(岩波書店、2006年) (2)購入して開講日に必ず持参してくるもの 法務総合研究所『平成21年度犯罪白書』(2009) (3)開講日までにできれば読んでおいてもらいたいもの 谷岡一郎『データはウソをつく』(筑摩書房、2007年) 浜井浩一編『犯罪統計入門』(日本評論社、2006年) (4)大学の授業を受けるにあたって一読しておいてもらいたいもの 近田政博『学びのティップス』(玉川大学出版部、2009年)[Web版:「名古屋大学新入生のためのスタディティップス」(http://www.cshe.nagoya-u.ac.jp/stips/)] 和田寿博ほか『学びの一歩』(新日本出版社、2003年) 溝上慎一『大学生の学び・入門』(有斐閣、2006年) |
成績評価の方法・基準 |
授業への出席(25%)、報告(調査活動も含む)(25%)、議論での発言(25%)、学年度末に予定している論文の内容(25%)を総合的に考慮して、成績評価を行います。 |
その他(質問・相談方法等) |
(1)無断・正当な理由のない欠席は認めません。 (2)ゼミ運営では参加者のみなさんの自発性・自主性を最重視します。このゼミでできることは、究極的には、参加者のみなさんが何かを考えたり、行動をとったりするための「きっかけ」の提供です。そのために、講義担当者の能力が及ぶ範囲で最大限の「素材」は提供しますが、最も重要なのは参加者のみなさんの問題意識です。 (3)講義担当者から選考期間中・春休み期間中に連絡をとることがありますので、「志望理由書」には、メールアドレスも記入しておいてください。 |
過去の授業評価アンケート |
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