国際政治学演習

最終更新日:2010年12月4日

授業科目名
国際政治学演習
標準年次
3・4
講義題目
国際社会の政治社会学―人間力とサンデルの「正義」を読む
開講学期
通 年
担当教員
大賀 哲
単位数
4単位
教  室
305
科目区分
展開科目
履修条件
●とくにありません。政治学科目の前提知識や履修歴がなくともお気軽にどうぞ(サブゼミ可、オブザーバー可ですが、遅くとも1月中旬までにはご連絡ください)。

●なお担当教員の講義では国際政治学の理論的な側面を扱っているので、本演習では国際政治学の知見を活かしてそれを身近な問題にフィードバックする、ということを重視しています。講学的な意味での国際政治学に興味のある方は、担当教員の「政治動態分析U発展」、「外国書政治書講読(英語)」などを併せて受講されることをお勧め致します(但し、講義の履修は本演習を履修する上での必須条件ではありません)
授業の目的
●戦争・貧困・差別・汚職など、世の中が不正に満ちているにも関わらず、「正しさ」を要求される社会に私たちは住んでいます。本演習では、世間の大多数の人々に受容されている倫理や規範、正義といった諸価値に着眼し、それを自分なりの「物差し・尺度」で検証・評価・批判するための思考力を鍛えることを目的とします。

●つまり、論証のプロセス、その根拠や方法を受講生が討議し、更にこれを観点の多元性や物事の多側面性という視角から検討していきたいと思います。ひとつの対象を様々な角度から考察するという作業は、多様な価値観によって構成されている国際社会の理解において不可欠であり、広い意味での国際政治学の学習にも資するものであると考えられます。
授業の概要・計画
●前期は≪個人≫という視点から「人間力」を、後期は≪社会≫という視点からマイケル・サンデルの「正義」論を取り上げたいと思います。

【前期】
 最近、よく耳にする言葉に「人間力」という言説があります。この言葉の歴史は意外と古く、第二次大戦中に生まれたものですが、最近では教育・経済・労働・雇用などの各領域において頻繁に用いられています(定義もあいまいで、到達度も測定し難く、これ自体恣意的な基準です)。
 また就職活動のマニュアル本などで氾濫している○○力という言葉にも同様の傾向があり、人間関係やコミュニケーションなど本来きわめて恣意的な基準を、それがあたかも客観指標であるかのごとく認識させるという「効果」があります。こうした言説が持つ「文脈」と政治性を考えながら、「人間力」についての内閣府や厚生労働省の報告書、企業の社会貢献ないしCSR(企業の社会的責任)のレポートを検討したいと思います。

「我が国においては、経済・社会システムのみならず、その根本をなす国民の基盤的な力である人間力が近年低下しつつあるのではないか、との問題提起がなされている」(内閣府2003年)


【後期】
 『ハーバード白熱教室』として知られるサンデルの「正義」論も異常なほど流行しています。この議論は政治哲学の最先端というよりは、むしろ「アメリカ人が考える正義」又は「善きアメリカ市民を養成する政治学」という特殊アメリカ的文脈に拘束される側面が強く、他方で学問や教養を「商品化」するという商業主義の発想があります。そうした文脈も踏まえながら、正義という言葉の意味を多面的に捉えていきたいと思います。
 補足すると、この本は20世紀を席巻した政治理論―マルクス主義、フェミニズム、ポストモダニズム、政治的リアリズム等、またここに西洋合理主義批判を加えてもよいでしょう―をほぼ素通りしてリベラリズムとコミュニタリアニズムの枠内で議論を展開しています。こうした正義の論じ方を疑問に思うところから本書は読まれなければならないと思います。

「正義は武器に似たものである。武器は金を出しさえすれば、敵にも味方にも買われるであろう。正義も理屈をつけさえすれば、敵にも味方にも買われるものである」(芥川龍之介)
授業の進め方
演習形式によります。また受講生と相談の上決めますが、外部講師をお招きする場合があります。ちなみに昨年度来て頂いたのは下記の方々です―高橋良輔(佐賀大学、元NGO職員)、相野勇雄(米国公認会計士)、中野涼子(シンガポール国立大学)、二村まどか(国連大学)、川端清隆(国連本部)など。
教科書・参考書等
文献は受講生と相談の上決定いたしますが、以下参考まで。

【教科書】(購入の必要のあるもの)
・本田由紀『多元化する「能力」と日本社会―ハイパー・メリトクラシー化のなかで』NTT出版
・マイケル・サンデル『これからの「正義」の話をしよう』早川書房

【参考書】
・梅津光弘『現代社会の倫理を考える〈3〉ビジネスの倫理学』丸善
・田中朋弘『現代社会の倫理を考える〈5〉職業の倫理学』丸善
・加藤尚武『現代社会の倫理を考える〈16〉合意形成の倫理学』丸善
・マイケル・サンデル『ハーバード白熱教室講義録』(上)(下)早川書房
成績評価の方法・基準
出席状況(30%)とゼミ報告等(70%)により評価します。
(なお希望者には、『学生法政論集』への応募論文の執筆をお勧めしています)
その他(質問・相談方法等)
●オープンゼミは1月7日(金)5限、1月14日(金)5限、303教室で行ないます(時間割上の曜日とは異なるのでご注意ください)

●なお、ご質問・ご相談はメールにてお願いします(togaのあとに@law.kyushu-u.ac.jpです)。
過去の授業評価アンケート