英米法は数世紀にわたる判例の蓄積を中核に形成され、大陸法や日本法とは顕著に異なる体系を構築している。本講義では、陪審制、連邦制、判例法主義、法曹一元などといった英米法の諸特徴を示す具体的判例を紹介しつつ、英米法社会において、法律家がどのように法を動かしているか概観する。契約法、不法行為法、刑事法といった実定法各論に体系的に踏み込むことはしないが、日本法を学んだ諸君が本講義を経て、英米法の基礎を理解するとともに、日本法を客観的に相対比してみる目を養ってもらいたい。 講義においてはアメリカ民事訴訟法を主たる具体例として、次の順序で論じてゆく。 (1)英米法の基礎(「英米法と国家領域とのずれ、コモン・ローとエクイティの区別と融合、判例法主義、合衆国憲法の歴史)、(2)法律家と裁判所(アメリカの法律家、イングランドの法律家、イングランドの司法制度と改革、連邦制のもとでのアメリカの司法)、(3)陪審制(大陪審と小陪審、陪審の付される事件類型、陪審員選任手続、開示・トライアル手続・証拠法、陪審と裁判官のそれぞれの役割、評決とそれに対する尊重、陪審制の評価と展望) |