政治動態分析U・発展特殊講義

最終更新日:2017年8月21日

授業科目名
政治動態分析U・発展特殊講義
標準年次
3・4
講義題目
国連外交論
開講学期
後 期
担当教員
川端清隆   
単位数
2単位
教  室
103
科目区分
展開科目
履修条件
国際政治と安全保障問題への関心と基礎的な知識があること。国連など、将来国際機関でのキャリアを目指す者も歓迎する。
授業の目的
 本授業は、国連職員、外交官、NGO要員やジャーナリストなど、国際社会での活躍を志す学部生や大学院生を対象とする。目標は、国連をはじめとする多国間外交の仕組みや役割を、国際キャリアの追求を念頭においた実践的な見地から学び取ること。授業参加者は、国連の「国際の平和及び安全の維持」を担う役割に焦点を当て、その普遍的安全保障体制としての特徴を制度と機能の両面から検証する。とりわけ、予防外交、平和創成、平和維持と平和構築の四段階にわたる国連活動の各局面を、実際の紛争例を踏まえて分析して、その可能性と限界を探る。平和活動の実態に迫ることにより、実務者として紛争処理を行うために不可欠な洞察力、分析力や判断力を培う。加えて、PKO参加や安保理改組などの今日的な課題を国連の視点から多角的に検証することにより、日本などの加盟国が国連で果たすべき役割について、客観的かつバランスが取れた議論を行う能力を育む。また、国際キャリアに必要な資質や、個々の日本人が国際組織で働くことの意義を共に考えて、国際社会とのつながりを築くための基本的知識や心構えを習得する。
授業の概要・計画
 次の四つの課題を中心に講義を行います: 
 I. 総論(政府間機関である国連の機能を組織・機能面から観察して、その普遍的安全保障体制としての特徴を明らかにする。とりわけ、国連憲章の各条項が実際の紛争処理においてどう適用されているか検証して、「現場」から見た国連安全保障の原理や原則を、政治的背景の解説を交えて解き明かす);
 II. 平和維持活動(国連安全保障の要である平和維持活動−PKO−の進化を振り返り、この憲章にない「生成の途上にある概念」の本質を解き明かす。そのうえで、今日PKOが直面する制度及び理念上の諸問題を整理して、同活動の可能性と限界を検証する);
 III. 平和創成活動(三十年にわたるアフガン紛争を振り返って、平和の回復を目的とする国連平和創成活動の全容を検証する。とりわけ、紛争当事者や関係国との交渉など、和平交渉の実態を具体例を交えて解説する。その過程で、紛争の各局面での和平活動の目的や手段を、和平の阻害要因や政治的制約を交えて分析して、平和創成活動のあり方を考える);
 IV. 将来の課題と日本の役割(内戦、テロ、人道的介入や「保護する責任」など、国連が今世紀に直面する挑戦を特定して、その対処法を考える。とりわけ、日本や他の加盟国の国連外交のあるべき姿を、内政や安全保障の脈絡の中で立体的に検討したい。政策上の課題のみならず、個々の日本人と国際平和協力の関係を受講生と共に考える)。
授業の進め方
 受講生は講義でとりあげる問題に対して自分の意見を明らかにして、議論に積極的に参加することが求められます。また、講義では随時、受講生に国連憲章の個別条項を英語で朗読してもらいます。講義で扱う四つの課題の要旨と憲章のテクストなどの資料は、講義開始の一ヶ月ほど前に教務課で配布されるので、必ず事前に取得して目を通しておくこと。
教科書・参考書等
 1.国連憲章(原文); 2.拙著「イラク危機はなぜ防げなかったのか 国連外交の六百日」(岩波書店、2007年); 3.拙著「アフガニスタン 国連和平活動と地域紛争」(みすず書房、2002年); 4.その他(事務総長報告書、事務総長声明、事務総長発言要旨、安保理決議、地図、グラフ、新聞記事など)。
(参考書・参考資料等)
 I.国連関係の入門書 − 明石康「国際連合 軌跡と展望」(岩波新書、2006年); II.研究のための専門書 − (1) Stephen C. Schlesinger, "Act of Creation: The Founding of the United Nations", Colorado, Westview Press, 2003 (国連の生い立ちとその政治的背景をより深く学びたい場合), (2) Sydney D. Bailey and Sam Daws, "The Procedure of the UN Security Council", Oxford, Clarendon Press, Third Edition, 1998(安保理の機能と審議手続きの詳細を研究したい場合), (3) G.John Ikenberry, "After Victory: Institutions, Strategic Restraint, and the Building of Order after Major Wars", New Jersey, Princeton University Presss, 2001 (米国と多国間主義の関係をより深く理解したい場合); (4)「PKO新時代 国連安保理からの証言」(岩波書店、1997)、(ソマリアPKOやルワンダPKOを詳しく知りたい場合)
成績評価の方法・基準
 議論への積極参加を含む出席点に加えて、講義の最後に提出する小論文による。
その他(質問・相談方法等)
(学生へのメッセージ)
 知識の蓄積のみで満足し、主体性のない者は国際社会では通用しません。紛争処理の現場では、考えや価値観の違う相手と意思疎通して、答えのない問題を解かねばならないことが多々あります。そんな現実と向き合い、現状を打開するためには、自らの言葉で戦争と平和を語れる能力を養わねばなりません。加えて、日本の若い世代は好むと好まざるに関わらず、押し寄せる人間社会のグローバル化の波に臨機応変に対応して、乗り切る力をつけねばなりません。そんな激動の時代に生きるあなた方の、知的準備と心構えの一助に本講義がなればと思います。

講義日程:
11/18(金)〜20(日)2限〜5限
11/21(月)2限〜4限
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