●法政基礎演習

最終更新日:2017年8月21日

授業科目名
●法政基礎演習
標準年次
2
講義題目
憲法の学び方
開講学期
前 期
担当教員
平良小百合  
単位数
2単位
教  室
304
科目区分
入門科目
履修条件
・丁寧に進めるので、現段階での憲法の習得状況は問いません。この演習が、憲法に関心はあるのに、どのように勉強すれば良いのか分からなくなっている学生の手助けになるようにと考えています。
・しかし、簡単な問題を扱うわけではありません。丁寧に難しい問題に向き合います。また、毎週の予習量は結構なものになります。複雑な問題を考えることを厭わず、読みごたえのある判決文や文献と格闘する強い意欲を有していることが不可欠です。
 
授業の目的
 この演習の目的は、今後、主体的に学び、その成果を発信するための基礎をつくることです。具体的には、以下のようなことです。
 @何かを学ぶには、その対象が全体としてどのような構造をしていて、どのような性格を持っているのかをあらかじめ頭の中に入れておくことが有用です。この演習では、憲法を素材にしていますので、憲法の全体像と特質を把握することを第一の目的とします。
 A他の法分野と同様、憲法を学ぶ際にも、判例を読むことは一つの重要な作業です。判例の分析・検討の仕方を習得することを第二の目的とします。判例を検討する中で、@で述べたように憲法の全体像と特質を把握していることがどのように役立つのかを身をもって体験することができると思います。
 B技術的な能力の向上を図ります。まず文献・判例の調査、読解が独力でできるようにします。そして、学んだことを人に分かりやすく伝えるためのレジュメの作成、報告の仕方、レポートの書き方を学びます。さらに、議論を深める意見交換の仕方を学びます。
 
授業の概要・計画
○概要
 戸松秀典『プレップ憲法〔第3版〕』(弘文堂、2007年)を基礎に進めます。このテキストは、憲法問題について考える際の基本的な頭のはたらかせ方が明示された入門書となっています。また、統治機構論と人権論を意識的に関連させながら、憲法の全体像がイメージしやすいように叙述されています。したがって、この演習の目的@を達成するのに適したものです。テキストでは憲法問題の所在を指摘するにとどめてあるので、演習では、そこで取り上げられている判例・論点を更に詳しく検討します。

 最後の方では、テキスト第8章で触れられている昭和51年衆議院議員定数不均衡訴訟に関連づけて、平成21年の参議院議員定数不均衡訴訟を取り上げます。選挙訴訟は、統治機構論と人権論の複合事案として最適な素材です。また、現実の政治の世界でも選挙制度改革は大きな争点となっています。さらに、同じく選挙権が問題となった有名な判例として、平成17年の在外邦人選挙権事件を取り上げます。両事案では判決の出し方、判決後の政治部門の対応の仕方に差があります。なぜ差が生じたのか考えてみましょう。

○計画 (扱う判例は変更する可能性があります。)
演習前 〔テキスト第1部(第1章〜第3章)〕
 指定テキストを通読しておいてください。とりわけ、第1部をよく読み、演習に参加する心の準備をしておきましょう。
第1回 オリエンテーション
 自己紹介、演習内容の説明、参加者数によってはグループ分け、報告担当決め等を行います。
第2回 技術事項の説明
 、レジュメの作成方法など、演習に参加するにあたって必要な技術の説明を行います。
第3回 〔テキスト第4章・第6章:違憲判決と憲法判例〕――最大判昭和48年4月4日 尊属殺人事件
第4回 〔テキスト第5章:最高裁判所と裁判官〕――最大判昭和27年2月20日 裁判官の国民審査
第5回 〔テキスト第7章:憲法訴訟の道〕――最大判昭和27年10月8日 警察予備隊訴訟
第6回 〔テキスト第7章〕――最大判昭和35年6月8日 苫米地訴訟
第7回 〔テキスト第9章:国民と憲法〕――札幌地判昭和42年3月29日 恵庭事件
第8回 〔テキスト第7章・第9章〕――熊本地判昭和60年11月13日 丸刈り頭髪規制訴訟
第9回 〔テキスト第7章・第9章〕――東京地判昭和61年3月20日 日曜日授業参観事件
第10回 〔テキスト第2章〕――最大判昭和52年7月13日 津地鎮祭訴訟
第11回 〔テキスト第8章:政治過程における解決〕――最大判昭和57年7月7日 堀木訴訟
第12回 〔テキスト第8章〕――最大判昭和51年4月14日 衆議院議員定数不均衡訴訟
第13回 最大判平成21年9月30日 参議院議員定数不均衡訴訟
第14回 最大判平成17年9月14日 在外邦人選挙権事件
第15回 レポート執筆へ向けて
 レポートの執筆方法について説明します。各自の選んだレポートのテーマを発表してもらいます。
 
授業の進め方
 第2回までは、担当教員が演習を主導します。
 第3回以降は、初めに決めた担当者(一人複数回割り当てます)に40分程度報告をしてもらいます。その後、質疑応答を行い、議論します。参加者は、全員が判決文及び指定の文献を毎週読んできている必要があります。積極的に発言して、楽しく和やかに議論しましょう。
 
教科書・参考書等
○テキスト  (開始前までに通読しておいてください。)
 戸松秀典『プレップ憲法〔第3版〕』(弘文堂、2007年)
 その他必要な文献は、報告担当者に前もって調査してもらい、全員が読むべきものは配布します。

○参考図書
 自分の好きな憲法の基本書を開始前までに通読しておくとなお良いです。
 『憲法判例百選T、U〔第5版〕』(有斐閣、2007年)が手元にあると便利かもしれません。
 
成績評価の方法・基準
 出席10%・報告内容及び議論への寄与70%・レポート20%で成績をつけます。
 レポートは、夏季休業中(8月中旬の予定)に提出してもらいます(5000〜10000字程度)。
 なお、やむを得ない事由による以外、無断欠席はその後の参加を認めず、単位も認定しません。
 
その他(質問・相談方法等)
 質問・相談は、随時受け付けます。メール(taira[アットマーク]law.kyushu-u.ac.jp)で問い合わせてもらっても構いません。演習日以外に面談を希望する場合には、前もってアポイントメントをとってください。
 
過去の授業評価アンケート