●知的財産法特殊講義T

最終更新日:2017年8月21日

授業科目名
●知的財産法特殊講義T
標準年次
3・4
講義題目
特許法・著作権法
開講学期
前 期
担当教員
小島 立
単位数
2単位
教  室
302
科目区分
展開科目
履修条件
知的財産法は、「授業の目的」に書いているとおり、複合的かつ学際的な学問領域です。

本講義の理解を深めるに当たっては、憲法(特に「表現の自由」に関する部分)、民法(民法総則、物権法、債権総論、債権各論),民事訴訟法(上訴等も含む判決手続一般)、行政法(行政法総論、行政救済法)、国際公法、国際私法等の科目を履修済みか、あるいは並行して履修していることが望ましいです。
授業の目的
1.本講義で取り扱う対象

情報社会の現在、財としての情報の保護を求める要求は日増しに高まっています。その中心的な役割を果たす法律群の総称を、知的財産法(無体財産法)といいます。

知的財産法には、特許法、実用新案法、商標法、意匠法、種苗法、半導体チップ法、著作権法、不正競争防止法といった様々な法律が含まれますが、本講義では、知的財産法の中核を担う「創作法」としての特許法と著作権法を中心に取り上げます。

2.ビジネスローとしての知的財産法

知的財産法は、経済社会の最先端で機能するビジネスローです。現実の取引社会で生じる知的財産法の問題は、複数の法領域に跨ると同時に、高度なビジネス判断を要することも少なくありません。

つまり、知的財産法の世界は、複合的な性格を有する、未解決かつ高度な理論的問題の宝庫であり、他の法領域や隣接諸科学等の知識も要求される、いわば「総合法学」と称すべき性格を有するものです。このような性質を有する本領域においては、ただ単に知的財産法の知識に秀でているのみならず、法律学の基本的なツールに習熟し、ビジネスロー全般に目配りをしながら、自分の頭で物事を考えることが可能な創造性が必要となります。
 
3.ビジネスローの特色

現実の経済社会で解決されなければならないビジネスローの問題は、複合的な性格を有します。渉外法務などの最先端の局面では、知的財産に関する事案といっても、特許法や著作権法といった「縦割り型」の発想では、その姿が十分には見えません。

というのも、知的財産法の最先端の問題は、契約法、信託法、会社法、倒産法、労働法、租税法、国際取引法といった、他のビジネスローと複雑に絡まり合った形で登場するからです。科目ごとの「教科書」に答えは書かれておらず、各種法分野の基本的なツールを組み合わせ、自分の頭で解決策を見出すしかありません。そこでは、ビジネスローに対する横断的な「土地勘」が必要となるのであって、いわゆる古典的な六法の学習のみでも対応は困難です。

また、法律学の知識に加えて、実際の経済取引においては、高度なビジネス判断が要求されるなど、法律学以外の隣接諸科学の複合的な知識が要求されることも珍しくありません。

4.ビジネスローとしての知的財産法を学習する意義

もっとも、これまでの知的財産法を含めたビジネスロー教育においては、受講生が、基礎的な法律知識を習得せずに、一種の「流行」を追いかけるような感覚で学習する態度が散見されました。しかし、ビジネスローの最先端の問題といっても、結局は法律学の基礎的なツールを駆使することによって解決が導かれることが少なくありません。

むしろビジネスローに触れることにより、皆さんが現在勉強している六法を中心とする基本科目にこそ、最先端の問題を解決する上での必須の知識・思考が存するという点を再認識することが可能となるでしょう。かかるビジネスローから基本科目へのフィードバックは、皆さんの学習意欲をより一層高めることにも資するだろうと思われます。同時に、ビジネスローを学習することにより、現実社会において法がどのように機能しているのかという具体例を知ることにも役立つでしょう。
 
5.受講生に期待すること

多面的な性格を有する知的財産法は、皆さんにとってその習得は決して容易なものではないと思われますが、逆の意味では、前述のとおり、未解決かつ高度に理論的な問題の宝庫とでも呼ぶべき大変に興味深い内容を含んでいるといえるでしょう。
授業の概要・計画
本講義では、知的財産法の中核を占める「創作法」としての特許法(特許手続法は、知的財産法特殊講義2に譲る)と著作権法を中心に解説を行ないます(教場試験となる可能性に鑑み、合計14回で計画を立てています)。
 
受講生にとって理解が容易となるべく、知的財産法の総論(2回)に続けて、著作権法(6回)、特許法(4回)の順序で講義を進める予定です。時間が許せば、営業秘密(1回)、知的財産法の国際的側面(1回)についても触れることにします。

なお、上記の回数はあくまでも予定ですので、進行の都合上、変更する可能性があります。
授業の進め方
事前に予習すべき教科書の該当部分を指示しますので、それらを読んだ上で、授業に臨んで下さい。

授業は講義形式となりますが、受講生との双方向のやり取りを重視したいと考えていますので、授業参加者に発言を求めます。

また、特許法や著作権法が掲載されている六法や条文集を準備して下さい(特許法、著作権法、不正競争防止法であれば、『ポケット六法』や『コンパクト六法』にも所収されています)。

【4/3追記】第1回(4月12日(木)・2限)の授業で用いる配布資料(特許公報1通)を、学生第三係に準備しています。本授業の受講を検討している方は、4月4日(水)以降、受け取りに行って下さい。当日は、配布資料に目を通してきていただいていることを前提に授業を進めるつもりです。
教科書・参考書等
1.教科書

下記の判例集は授業で用いますので、必ず購入して下さい。

大渕哲也ほか『知的財産法判例集〔補訂版〕』(有斐閣、2010年)

2.参考書

下記の参考書は、授業の理解を助けるべく、各回の講義内容に応じて予習範囲を指示する予定です。

相澤英孝=西村あさひ法律事務所編著『知的財産法概説〔第4版〕』(弘文堂、2010年)

3.参考文献

下記2冊については、教科書及び参考書としての指定はしませんが、現在の日本の知的財産法学の到達点を示す体系書であり、購入をお勧めします。授業中に、その内容に適宜触れることもあります。

中山信弘『著作権法』(有斐閣、2007年)
中山信弘『特許法』(弘文堂、2010年)

また、知的財産法の入門書としては、以下のものを推薦致します。

中山信弘『マルチメディアと著作権』(岩波新書(赤426)、1996年)

残念ながらこの本は、絶版となっているようですが、知的財産法の最良の入門書ですので、図書館で借りるなどして読まれることをお勧めします。授業開始前に通読しておいていただくと、授業の理解度が格段に上がると思います(特に第1章の部分)。
成績評価の方法・基準
期末試験により成績評価を行ないます。その際には、書き込みのない六法(判例付き不可)の持ち込みを認めます。
その他(質問・相談方法等)
授業に関して不明な点がありましたら、授業担当者までお尋ね下さい(メールアドレスは、kojima[アットマーク]law.kyushu-u.ac.jp)。
過去の授業評価アンケート