履修条件 |
とくになし。 |
授業の目的 |
たとえば、AがBに500万円を貸したが、Bは約束していた期限になっても500万円を返済しない場合、Aは何をすることができるだろうか。この場合、民法によれば、AはBから500万円を国家権力(裁判所)により強制的に取り立てる権利をもっていることになる。しかし、これはあくまでAの言い分であって、Aが現在このような権利を本当に持っているのかどうかはわからない(実はAはBにお金を貸していないかもしれないし、BはすでにAに債務を弁済しているかもしれない)。そこで、Aは訴えを提起して、審理の結果、裁判所の判決によりAの権利が存在するかどうかを確定してもらうことができる。この手続を(狭義の)民事訴訟(判決手続)という。さらに、BがAの言い分を認める確定判決に任意に従わない場合には、Aはこの判決(債務名義)に基づいて強制的にBの財産から500万円を取り立てることができる。この手続を強制執行という。 本講義は、以上のような私人の権利を保護・実現するための一連の手続(広義の民事訴訟)のうちの、判決手続を規律するルールや原則を概説することを目的とする。 私法上の権利の保護と実現に資する最も基本的な手続法である民事訴訟法を理解することは、他の手続法を理解するためにも重要である。それのみならず、訴訟法を理解することにより、実体法の役割についても理解をさらに深めることができるようになると考える。 |
授業の概要・計画 |
講義は概ね次の順序で行う(1つの項目を1コマで行うわけではない)。 ◎前半 民事訴訟手続概観 1 民事訴訟の存在理由 他の民事紛争処理制度との関係 2 民事訴訟の構造と基本原則 3 判決手続の流れ(1) 訴えの提起 4 判決手続の流れ(2) 口頭弁論 5 判決手続の流れ(3) 証拠調べ 6 判決手続の流れ(4) 判決 7 判決手続の流れ(5) 上訴 8 判決手続の流れ(6) 確定判決の効力・再審 ◎後半 民事訴訟法の重要問題 1 民事訴訟の目的論、訴訟と非訟、本案と訴訟要件 2 訴え、訴訟物、訴訟物に関する訴訟要件 3 当事者、当事者に関する訴訟要件 4 裁判所、裁判所に関する訴訟要件 5 処分権主義、弁論主義、釈明権 6 証明責任とその周辺 7 証拠調べ 8 判決によらない訴訟の終了 9 終局判決とその効力、再審
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授業の進め方 |
前半の講義においては、民事訴訟制度の意義と判決手続の大まかな流れについてレジュメに沿って説明する。民事訴訟法学は極めて体系的に構築されているので、ここで、概念の定義や手続の流れをしっかり押さえて、後の発展的な講義に備えてほしい。 後半の講義では、民事訴訟法の重要問題について、判例および通説の状況とその問題点を指摘しながら、掘り下げて説明する。 |
教科書・参考書等 |
教科書 追って指定する。 参考書 高橋宏志=高田裕成=畑瑞穂編『民事訴訟法判例百選(第4版)』(2010年、有斐閣) 三木浩一ほか著『民事訴訟法』(有斐閣・2013年3月出版予定) 中野貞一郎『民事裁判入門(第3版)』(有斐閣・2010年) 松本博之=上野泰男『民事訴訟法(第7版)』(弘文堂・2012年)伊藤眞『民事訴訟法(第4版)』(有斐閣・2011年) 中野貞一郎=松浦馨=鈴木正裕編『新民事訴訟法講義(第2版補訂2版)』(有斐閣大学双書・2008年) 新堂幸司『新民事訴訟法〔第5版〕』(弘文堂、2011年) 高橋宏志『重点講義民事訴訟法(上)(第2版)』(有斐閣・2011年)『同(下)〔第2版〕』(有斐閣・2012年) その他、最新の参考書が出版されていれば、講義の際に紹介する。
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成績評価の方法・基準 |
成績は基本的に定期試験のみで評価する。ただし、講義の中で、理解度を確認するために、質問カードを配ることもありうる。この場合、これらの提出状況等をも考慮して成績を評価する。 |
その他(質問・相談方法等) |
【学務委員会注】 2004〜2009年度の入学者には、この科目は民事訴訟法T(基盤科目2単位)+民事訴訟法U(展開科目2単位)として一括して単位認定されます。2010年度以降の入学者には、民事訴訟法(基盤科目4単位)として単位認定されます。 |
過去の授業評価アンケート |
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