履修条件 |
・特にありませんが、議論に積極的に参加する熱意のある学生を歓迎します。基礎知識は問いません。 ・この演習では判例を扱うので、毎週の予習量は結構なものになる可能性があります。そのため、やる気のある方を歓迎します。 |
授業の目的 |
本演習は、大きく以下の4点を目的としています。 @行政法に関する基本的な考え方と主たる問題についての基礎知識を習得すること。 A判例の読み方と分析・検討の仕方を習得すること。 B社会を認識する眼を養うこと。 C今後の学習に必要とされる基本的なスキルを身につけること。 行政法と日常生活とは、深い関係があります。本演習では、7つの判例の検討を通じて、個々の事案で現れている利害状況の広がりや関連性を認識し、この社会のあり方を理解し、そこにある問題を考えていきます。また、後期から行政法の理論を勉強される一歩前の段階として機能することを目指します。 本演習を通じて、今後主体的に学習・研究するための方法を体得してほしいです。具体的には、情報収集の方法、文献の読解能力、レジュメの作成方法、プレゼンテーションの仕方、議論の仕方、さらにレポートの書き方を、ゼミの活動の中で会得してほしいと考えています。
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授業の概要・計画 |
【授業の概要】 みなさん、「行政法」という名前の法律を、見たことや、聞いたことがありますか?そう、ありません。しかし、私たちの日常生活で行政法は大きな役割を果たしています。例えば、あなたが、スーパーで買い物をするときに読む食品表示(食品衛生法)、病気になったときに提示が求められる保険証(国民健康保険法など)、処方箋がなければ入手できない薬(薬事法)、法学部に来るときに通ったパチンコ屋をうるさく思わないこと(風俗営業適正化法)など、行政法は私たちの日常生活に密接に関係しています。このような様々な行政法規がどのように機能しているのか、もし、あなたが行政と交渉する、あるいは戦うときにどうすればいいか、といったような疑問を持たれたことがありませんか? 実は、行政を適正に機能させる、あるいは権限の濫用を防止する、さらに行政が違法行為をしたときに市民を救済するために、さまざまなルールが設けられています。 本演習は、このようなルールを取り上げて議論することにより、上記の目的を達成しようとします。 具体的には、まず、行政法の基本的な考え方と全体のイメージを把握します。これは、高木光『プレップ行政法[第2版]』(弘文堂・2012年)を基礎に進めます。この教科書は、具体の設例を用いて行政法の基本的問題点を説明しています。また、憲法との関連を重視し、行政法の全体のイメージがよく示されています。 教科書は防御型の行政法について具体的に説明している一方で、給付行政、複効的行政、計画行政を詳しく説明してはいません(防御型、給付行政、複効的行政、計画行政の意味は、ゼミの中で説明します)。本演習では、上記の作業を終えた後に、教科書で取り上げられた各類型の行政領域(具体的にはその例とされる法律)に関する最高裁判所の判例を具体的に検討して、個々の事案における利害状況等を認識し、上記の行政法の基本的な考え方の具体的な働き方を確認しながら、そこにある問題を考えてみます。最後に、行政と司法(裁判所)の関係についても議論しましょう。
【授業計画】(扱う判例について参加者の希望などを踏まえて変更する可能性があります) []は、該当する教科書の頁(目安)です。 演習前 [教科書 PartT( Lesson1〜 Lesson3)] 演習では、教科書の Part2を中心に進めますので、教科書のPartTの部分を自分で読んでおいてください。 第1回 オリエンテーション 自己紹介、演習内容の説明、報告担当者決め等を行います。 第2回 スキル事項の説明 ゼミ報告のために必要な文献・裁判例の調査方法、レジュメの作成方法、プレゼンテーションの方法等について説明します。 第3回 行政事件訴訟法入門 行政判例を読む上で最低限必要な行政事件訴訟法の基礎的な知識を概観します。具体的には、日本の裁判制度、行政訴訟の基本的な仕組みと運用の実態、行政判例の読み方について説明します。 第4回 教科書 Lesson4 喫茶店対PTA [45‐58] 第5回 教科書 Lesson5 防御型の行政法 [59‐72] 第6回 教科書 Lesson6 取消訴訟と国家賠償 [73‐86] 第7回 食品衛生法――最一小判平成16年4月26日(食品衛生法違反処分取消事件)[45‐86] 第8回 風俗営業適正化法――最一小判平成10年12月17日(風俗営業許可取消請求事件)[66‐72] 第9回 児童福祉法――最一小判平成14年1月31日(児童扶養手当資格喪失処分取消事件)[89‐95] 第10回 生活保護法――最三小判平成24年2月28日(生活保護老齢加算廃止訴訟上告審判決)[89] 第11回 薬事法――最二小判平成25年1月11日(市販薬ネット販売権訴訟上告審判決)[88] 第12回 原子炉等規制法――最一小判平成4年10月29日(伊方原発訴訟上告審判決)[97] 第13回 都市計画法――最大判平成17年12月7日(小田急線連続立体交差事業認可取消訴訟上告審(大法廷)判決) [98‐99] 第14回 レポートの書き方について 各自が選んだレポートのテーマを発表してもらい、レポートの作成方法について説明します。
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授業の進め方 |
第3回までは、担当教員が主導します。 第4回以降は、基本的に以下のような流れで進めていきます。 報告担当者による報告→コメンテーターによるコメント→参加者全員による質疑応答と議論→担当教員によるコメント 報告担当者(一人複数回割り当てます)はレジュメを作成し、これに基づいて報告(30分程度)を行います。その後、司会者としてゼミの進行を担当します。レジュメは、基本的に報告の1週間前のゼミで配布します。 コメンテーター(一人最低一回)は5分程度コメントを述べます。 参加者全員は、教科書、判決文及びレジュメに取り上げられた文献を読んでくる必要があります。また、報告内容についての疑問点やコメントを用意して全体討論に臨んでください。その際、必ず一度は発言を行うように心がけてください。
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教科書・参考書等 |
【教科書】 高木光『プレップ行政法[第2版]』(弘文堂・2012年) 六法(ポケット、ディリー等の小型の六法が大丈夫ですが、取り扱う法律がそこに載せられていない場合は、各自コピーして持ってきてください) その他必要な文献は、適宜指定します。 【参考書】 大橋洋一『行政法T 現代行政過程論 第2版』(有斐閣・2013年) 原田大樹『例解行政法』(東京大学出版会・2013年) 判例集として、大橋洋一・斎藤誠・山本隆司編『行政法判例集T 総論・組織法』(有斐閣・2013年)、同『行政法判例集U 救済法』(有斐閣・2012年)
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成績評価の方法・基準 |
試験は行いません。 成績評価は、出席状況(10%)、報告内容(30%)及び議論への参加状況(30%)、レポート(30%)によって総合的に評価します。 レポートは、夏季休業中(8月中旬の予定)に提出してもらいます(5000字程度)。 無断欠席2回以上の場合には単位の認定を行いません。
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その他(質問・相談方法等) |
質問・相談は、随時受け付けます。メール(zhangrh[アットマーク]law.kyushu-u.ac.jp)でも構いません。演習日以外に面談を希望する場合には、メールでアポイントメントをとってください。 ※[アットマーク]は@に置き換えて送信してください。 |
過去の授業評価アンケート |
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