日本法制史特殊講義

最終更新日:2017年8月21日

授業科目名
日本法制史特殊講義
標準年次
3・4
講義題目
近代日本の「刑法」継受史
開講学期
前 期
担当教員
宇野 文重  
単位数
2単位
教  室
204
科目区分
展開科目
履修条件
「日本法制史」を受講していることが望ましい。
授業の目的
 本講義は、近代日本の法構造を「刑法」の継受過程を素材として学ぶものである。
 明治維新後、最初に制定された西欧型の法典は「刑法」(明治13年制定)であった。政府としては、憲法や民法の制定を急いでいたにも関わらず、「刑法」が最初に制定されたのはなぜだろうか?また、 近世には容認されていた「仇討」は、明治以降「自力救済の禁止」により禁止されていくが、法と社会の実態との間でズレはなかったのであろうか?
 例えばこのような問いを出発点として、「法」という現象と「権力」との関係を考えてみるのが法制史(法史学)という学問領域である。ここでいう「法」とは、われわれが親しんでいる「制定法(成文法)」だけでなく、慣習や判例などの「不文法」も含む。本講義では、西洋における「法」の概念を「継受」した明治期日本において、近代以前の「法」の世界と新たにもたらされた西洋の「法」の世界とがどのように対立/相克/接合したのかということを、「刑法」の継受史を中心に学ぶ。
 講義の柱は、@「律」をモデルとした明治初期刑法、ボアソナード草案を元に制定された旧刑法、現行刑法である明治40年刑法について、それぞれ編纂過程と法構造を「法史学的観点」から理解すること、A法の運用の側面、すなわち実際の「裁判」においてどのような判決が示されていたのかを資料を通して学ぶこと、B当時の人々の生活と「法」及び「権力」との関係について知ることの三点である。
授業の概要・計画
(1) ガイダンス
(2)「法」の歴史の分岐点――法の継受史と日本の<近代>
(3) 明治国家と法典編纂――条約改正と「泰西主義」
(4) 刑法の継受史@「律型刑法」の制定とその歴史的意義
(5) 刑法の継受史A「律型刑法」の構造と罪刑法定主義
(6) 刑法の継受史B「律型刑法」の思想と<近代法>
(7) 刑法の継受史C 身分秩序と国家権力
(8) 民衆生活と「国家権力」の浸透――「違式&#35455;違条例」の世界
(9) 刑法の継受史D「旧刑法(明治13年刑法)」の制定
(10) 刑法の継受史E「旧刑法」の思想とボアソナード
(11) 刑法の継受史F「旧刑法」の構造と<近代>性
(12) 刑法の継受史G明治期の刑事裁判と法曹世界
(13) 刑法の継受史H「明治40年刑法(現行刑法)」の制定とその構造
(14) 刑法の継受史I「刑法改正ノ綱領」と「治安維持法」の成立
(15) まとめ
授業の進め方
講義の際に、レジュメと資料を配布する。
1日1回、「出席・感想票」を配布する(評価の対象となる)。
教科書・参考書等
教科書は指定しないが、以下の図書を参照すること。
  
 浅古弘・伊藤孝夫・植田信廣・神保文夫編『日本法制史』(青林書院、2010年)
 川口由彦『日本近代法制史』(新世社、1998年)
 水林彪・大津透・新田一郎・大藤修編『新体系日本史2 法社会史』(山川出版社、2001年)

 なお、講義中にも適宜参考文献を紹介する。
成績評価の方法・基準
論述試験(90%)+出席・受講態度(10%)。
論述試験には「自筆ノート」の持ち込みを認める。
その他(質問・相談方法等)
 質問については、「出席・感想票」に記入すれば、原則として次回講義中に応答する。
 小説や当時の生活がうかがえる資料なども紹介しつつ、「明治」という時代の「空気」や「世界」も伝えたいと考えている。多様な関心をもって「近代日本の罪と罰」について学んでほしい。

日程:9/8(月)〜9/12(金)
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