法政基礎演習

最終更新日:2017年8月21日

授業科目名
法政基礎演習
標準年次
2
講義題目
事例に学ぶ国際法入門
開講学期
前 期
担当教員
沖 祐太郎  
単位数
2単位
教  室
304
科目区分
入門科目
履修条件
国際法について先取り的な学習に取り組んでみたい人。学部の講義を受ける前から内容の一部に触れるので、熱意とやる気をもっている人を歓迎します。現時点での国際法の知識の有無は問いません。なお、英語の文献を読む可能性もあるので、この点にも意欲的であれば一層歓迎します。
授業の目的
(1)国際問題を客観的に認識する眼を養う
ここ数年、日本が関わる国際問題が多数生じています。尖閣諸島や竹島をめぐる諸問題、福島の原子力発電所からの汚染水の流出、TPP参加交渉、PM2.5による大気汚染、日本とオーストラリア・ニュージーランドとの間で捕鯨規制問題(国際司法裁判所に係争中)等は新聞紙上でも頻繁に議論されています。しかし、このような国際問題について論じる場合、私たちの見解はどうしても偏ったものになりがちです。国際問題を理解する際には、自らの立場・主張を相対化し、できる限り客観的な視点から問題に向き合う必要があります。国際法というフィルターを通して国際問題を見れば、一定程度は、客観的な理解を得ることが出来るようになります。本演習の一つ目の目的は、このような国際法を通したものの見方を習得することにあります。(もちろん、そのために必要な国際法の基礎的な知識の獲得も一つの目的ではあります。)

(2)知的生産方法の体得
本演習の二つ目の目的は、課題の発見→情報収集→分析・考察→報告(プレゼンテーション)→議論→レポート・論文作成という一連の知的生産過程の経験を踏み、それぞれの能力を向上させることです。大学で法律学を学ぶ上では、まず何が問題であるかを把握し、その問題に対する自分なりの解答を考えるために広く情報を集め、関連する諸論文を検討し、議論するというプロセスが不可欠です。さらに、このプロセスを経てたどり着いた解答ではあっても、それを論理的な文章で書きあげるためにはそれなりの訓練が必要です。これらは、将来どのような分野に進んだとしても必要な技術ですので、本演習で十分な経験を積んでほしいと考えています。
授業の概要・計画
【授業の概要】
国際問題を中心とした事例(「事例問題」)を法的に検討する訓練を繰り返すことで、国際法の基礎的な知識を獲得し、さらに国際法的なものの見方を習得していきます。なお「事例問題」は、実際の国際問題や判例をシンプルにしたものを中心にする予定ですが、受講生の皆さんの要望によっては具体的な国際問題自体を扱うこともあります。さらに、受講生の皆さんには最終的に、自らの選んだテーマあるいは事例について十分な調査をしたうえで、3000字以上のレポートを提出してもらいます。

第1回は担当教員・受講生の皆さんの自己紹介と、ゼミの進行方法についてのガイダンスを行います。また、参加人数に応じたグループ分けを行います。
第2回は指導教員が「国際法上の国家とはなにか?」をテーマに指導教官がどのような「事例問題」を作成し、皆さんにどのように議論してもらいたいかを、指導教員自身で模擬的にゼミをすることで説明します。皆さんは、第1回のゼミで配布する事例と教科書の該当部分を読んできたうえで、質問を考えてきてください。
第3回以降は、「授業の進め方」に従って事例検討ゼミを行います。前半の「基礎編」(第3回から第7回)では比較的単純な事例を、後半の「応用編」(第9回から第13回)では複数の法的論点が含まれる複雑な事例をとりあげます。
 第8回、第14回、第15回では、最終的に皆さんに書いてもらうレポートについて、その書き方を説明したのち、各自の構想を報告してもらいます。

【授業の計画】
 以下の通り計画していますが、受講生の皆さんの意見を聞きながら、柔軟に対応していきます。
第1回:オリエンテーション
第2回:指導教員による模擬ゼミ
第3回〜第7回:事例検討ゼミ(基礎編)
第8回:レポートの執筆について
第9回〜第13回:事例検討ゼミ(応用編)
第14回:各自のレポート構想報告
第15回:各自のレポート構想報告・全体の総括
授業の進め方
 初回のオリエンテーションの際に、具体的な内容をお話し、受講生の皆さんと決定します。基本的には、以下のように進める予定です。
(1)司会進行役は、受講生の皆さんにお願いします。
(2)各回の報告グループが、まず担当する事例に関わる国際法上の論点について整理して報告します。その後、続けて事例に対する法的評価を報告します。報告はレジュメに基づいて30分程度でお願いします。
(3)報告グループ以外の受講生の皆さんが報告に対し質問や意見を出し、議論を行います。報告グループ以外の受講生の皆さんも事例、関連文献をあらかじめ読んだ上で、疑問点や意見を用意しておいてください。
(4)担当教員が議論に対するコメントを行います。
(5)報告グループがその回の議論を総括します。
教科書・参考書等
【教科書】
柳原正治・森川幸一・兼原敦子編『プラクティス国際法講義[第2版]』(信山社、2013年)(3800円)
※この本は購入してください。学部での国際法の講義を受講する際にも教科書として指定される可能性が高い書籍でもあります。

【参考図書】
山本草二『国際法[新版]』(有斐閣、1994年)
小寺彰・森川幸一・西村弓編『国際法判例百選[第2版]』(有斐閣、2011年)
※なお、本演習で用いる事例のいくつかは、Cristina Verones & Sébastien Rosselet, The Public International Law Study Guide for Students :Exercises and Answers(Oxford and Portland,Oregon, 2013)($35)に元ネタが掲載されています。購入する必要はありませんが、興味のある方は読んでみてください。
成績評価の方法・基準
試験は行いません。以下の割合に従って評価を行います。
1.出席状況:20%
2.報告時の報告内容:30%
3.他グループ報告時の発言:20%
4.レポート:30%
その他(質問・相談方法等)
質問・相談は随時受け付けます。メールや研究室での相談も歓迎します。
過去の授業評価アンケート