法政基礎演習

最終更新日:2017年8月21日

授業科目名
法政基礎演習
標準年次
2
講義題目
コスモポリタニズム(世界市民主義)の法理論
開講学期
前 期
担当教員
城下健太郎  
単位数
2単位
教  室
科目区分
入門科目
履修条件
 履修条件は問いません。無断欠席はしないこと。
 ただし、実定法の論理や内容を学習する演習ではなく、法の現実に対して原理的・批判的に考えられた理論や思想を検討する演習だということにご注意ください。
授業の目的
○法政基礎演習の共通目標
 高年次ゼミの学習に備えて、演習形式の講義に参加する上で欠かせない能力を参加者の皆さんに身につけてもらうよう努めます。レジュメ・レポート作成や報告発表、文献読解の能力の養成に加えて、他者の意見に対して批判的応答ができるようになることをめざします。

○本演習の目的
 上記の目標に加えて、以下のことをより重視します。
・現代法の拠って立つ基本的な枠組みや「価値」について理解し、説明可能になること
・テキストの講読を通じて、著者の立場や意見を正しく理解することができるようになること
・高年次の学習にとって必要な「とっつきにくい学術書」の読み方を身に着けること
授業の概要・計画
 演習形式の講義ですので受講者の皆さんに主体的に参加・議論してもらうことが前提の上で、次のように授業を行っていきます。

〈授業の概要〉
 現在、社会や政治、経済のグローバル化が進行しているといわれます。それによって生じた異文化との衝突を前に、普遍的な人権保障を前提に構築された国家体制は大きな挑戦を受けています。いわゆる戦争や移民、外国人労働者の問題だけにとどまらず、異なる文化をもつすべての人々同士がどのように相互共存を行うのか、その条件を根本的に問い直す必要が生まれているのです。この演習では、「ありがち」な解決策であるコスモポリタニズムの法理論を読解し、その可能性と限界を参加者の皆さんと一緒になって探ります。
 そのために、さしあたり、カント『永遠平和のために』(原著1795年)とセイラ・ベンハビブ『他者の権利――外国人・居留民・市民――』(原著2004年)の2冊を読む予定です。前者は、非常に有名な古典ですが、『永遠平和』のタイトルから連想されるような単純な平和主義の本ではなく、国家間の共存の条件を問う国際法の原理だけでなく、私たちが地球に生きる一人の人類として他の全ての人に対してもつ権利と義務についても論じている本です。後者は、カントのコスモポリタニズムを現代に適合するよう発展させていったものです。これらを毎回、範囲を区切って報告担当者を決めながら少しずつ読んでいきます。担当者による報告が済んだ後は、参加者に分からない箇所や矛盾点、自分と報告者との意見の食い違いなどを自由に議論してもらいます。議論の方法は「授業の進め方」を見てください。
 毎回の授業は以上のようなものですが、それに加えて本演習では、自分自身でテーマを選んでもらいレポート(2000字程度)を作成してもらうつもりです。テキスト読解が完了した後でレポートの書き方(アカデミックライティング)について詳しく説明します。

〈授業の計画〉
 授業の計画は以下のとおりです。(あくまで予定ですので、参加者の方の理解度や要望に応じて柔軟に変更していきます)。
第1回 オリエンテーション レジュメ作成や文献読解の方法の説明
第2回〜第5回『永遠平和のために』を読む
第6回〜第13回『他者の権利』を読む
第14回 レポートのテーマ設定とアカデミックライティングの説明
第15回 まとめ
なお、授業外では、毎回の授業前に参加者全員がテキストの指定範囲(1回20〜30頁ほど)を読んでくることを予習として求めます。
授業の進め方
 初回授業時に参加者の皆さんと相談してテキストの報告箇所の割り振りを行います。参加者の人数によりますが、各自、必ず一回以上は報告するものと考えていてください。また、このとき全員にコメントカードを配布しますので、予習としてテキストを読む際に疑問点や意見などをそれに書き込んでもらい、次回に持参してもらいます。
 2回目以降のゼミでは報告者にレジュメ(要約)を作成してもらい、20〜30分ほど報告してもらいます。なお、後に質疑応答に移るので報告者には分からない用語などを調べておく必要があります。報告終了後、議論に移りますが、参加者全員にコメントを出してもらい、報告者に答えてもらいます。このとき、報告者以外も傍観者にならないようにコメントカードにもとづいて意見を提示することを求めます。(参加者は一度は必ず意見を述べてもらいます。)
 議論が尽くされた後、報告者に担当箇所での著者の主張をもう一度まとめてもらって、次回以降の議論につなげていきます。また、次回予習用にコメントカードを配布します。
教科書・参考書等
・使用するテキスト
カント『永遠平和のために』宇都宮芳明訳、岩波文庫、2009年、540円+税。
セイラ・ベンハビブ『他者の権利――外国人・居留民・市民――』向山恭一訳、法政大学出版局、2014年(新装版、なお表紙が違うだけの旧版の2006年版でもよい)、2600円+税。

・参考図書
ジョン・ロールズ『万民の法』中山竜一訳、岩波書店、2006年。
井上達夫『世界正義論』筑摩選書、2012年。
他にも参考図書は演習中に適宜紹介します。
成績評価の方法・基準
 成績評価は、報告内容、議論への参加度とその内容、コメントカードの内容およびレポートを総合的に判断します。
 なお、テキスト読解能力および意見の応答能力の養成を目的としていますので、議論への参加と発言内容を特に重視します。
その他(質問・相談方法等)
その他、質問や相談は随時受け付けます。演習の前後および研究室(法学部第7研究室)に来ていただければ可能な限り応対します。

【科目コード:LAW-LAW1911J】
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