履修条件 |
民事訴訟法を履修済みであることが望ましい。
【学務委員会より】 本科目は、2009年度以前入学者の内、民事紛争処理入門を修得していない者については「民事紛争処理入門(入門科目)」として単位認定を行う。履修済みの者が本科目を受講した場合には、「民事訴訟法特殊講義」として単位認定を行う。いずれの科目で単位認定を希望するのか良く確認の上、履修登録を行うこと。本件に係る質問は「学生第三係」まで
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授業の目的 |
本講義は、倒産処理手続、とりわけそのなかで最も重要な手続である破産手続を規律するルールや原則を中心に概説することを目的とする。 |
授業の概要・計画 |
たとえば、債権者G1が債務者Sに対して貸金債権を有しているにもかかわらず、SはG1に当該貸金債務を任意に履行しないとしよう。この場合、通常、G1は訴えを提起して、給付判決を求め、その認容判決に基づいてSの財産につき強制執行をするであろう。 しかし、債務者Sの財産状況が悪化した(すなわち倒産状態になった)場合、Sから弁済を受けることのできない債権者はG1に限らず、その他の多数の債権者(G2、G3、G4…)が存在するのが通常であろう。この場合、債務者や多数の債権者などの利害関係人はどのような行動をとるであろうか。 まず、債権者は他の債権者に先んじて自己の債権を回収することに奔走するであろう。すなわち、多くの債権者は先を争って、通常の判決手続や強制執行手続を利用して自己の債権を回収しようとするだろう。それのみならず、力の強い債権者が、そのような手続を利用せず、債務者に圧力をかけて自己の債権を債務者から任意に弁済させることもあろう。そうすると、力の強い債権者のみが自己の権利を実現できることになり、債権者間に不平等が生じることになる。 次に、債務者Sは、多数の債権者から個別に先を争って取立てや強制執行がなされると、その対応に追われるだろう。したがって彼は、精神的にも経済的にも追いつめられ、再起更生の機会を失うことになる。 さらに、債務者Sが、その財産状況が悪化したまま無理に経済活動を継続すると、債務がますます増大し、債権者がさらに増えるだろう。そうすると、たとえば、債権者G1がSから債務弁済を受けることを当てにしてAなどの債権者から債務を負っている場合、Sの債権者であったはずのG1も、たちまち多重債務者に転落してしまうことになる。つまり、債務者Sの破滅は、社会的に連鎖反応を起こすのである。 以上のように、債務者Sが経済的に破綻すると、弱肉強食の容赦ない状況が生じる。倒産処理制度は、このような状況を是正するために存在するのである。 本講義では、債権者間の公平、債務者の再起更生、および、債務者の破綻による連鎖反応を防止するために存在する倒産処理手続、とりわけその最も重要な手続である破産手続を規律するルールや原則を中心に概説することを目的とする。
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授業の進め方 |
倒産処理法制全体や再建型の倒産処理法の基本法である民事再生法と比較しながら、破産法の概要を理解し、さらに破産法の解釈論の基本を理解することを通じて、破産法上の具体的な基本問題を解決することができるようになることを目標に、次の順序で講義を行う予定である。
1 破産法とは何か?他の倒産処理手続との関係 2 破産手続の開始 3 破産者 4 破産債権@ 5 破産債権A 6 相殺権 7 別除権 8 破産者をめぐる法律関係の処理@ 9 破産者をめぐる法律関係の処理A 10 破産財団の形成 11 否認権@ 12 否認権A 13 破産財産の管理処分 14 破産手続の終了 15 免責・復権
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教科書・参考書等 |
教科書 とくに指定しない。 ただし、次の入門書を事前に読んでくることが望ましい。 徳田和幸『プレップ破産法(第6版)』(2015年、弘文堂)
参考書 伊藤眞『破産法・民事再生法(第3版)』(有斐閣・2014年) 松下純一『民事再生法入門(第2版)』(有斐閣・2014年) 山本克己編著『破産法・民事再生法概論』(2012年、商事法務) 青山善充=伊藤眞=松下淳一編『倒産判例百選〔第5版〕』(有斐閣・2013年) 伊藤眞・岡正晶・田原睦夫・林道晴・松下淳一・森宏司著『条解破産法(第2版』(弘文堂、2014年)
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成績評価の方法・基準 |
成績は基本的に定期試験のみで判断する。ただし、講義の中で、理解度を確認するために、質問カードを配る予定である。この場合、これらの提出状況等をも考慮して成績を評価する。 |
その他(質問・相談方法等) |
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過去の授業評価アンケート |
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